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61. ポーションは三年以内に売る

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 今日も鐘が三つ鳴る 朝の六時までには 下の食堂で朝食を食べる。
 いつも具がたっぷりのシチュー がついていて、それだけでお腹が膨れてしまう。
 宿屋のオヤジさんの作る料理は、リエール領で食べていた トムさんの料理よりは ダイナミックで 味も濃いめだけど、お肉がゴロゴロ入っていて これはこれでおいしい。

 今日は、キャベツとベーコンが どっさり入った シチューだ。
 あと ニンジンとこれは、カブかな?
  昨日の残りのシチュー をうまく使い、ベーコンを炒めて朝用に薄めたあと お野菜も少し焼いてから入れているようで、コクがでて おいしかった。
 それにパンを 一個食べたら、もうお腹いっぱい。
 次の人のために、すぐ席を立つ。
 この宿屋は ホントにあっさりしたもんだ。
 いつものようにおかみさんから、昼食用の 今日は 果物とパンだな。
 ありがたく 受け取って、自分の部屋へ 一度 戻る。

 これも、わたしが 十歳までだから、あと二ヶ月……
 このあとのことも考えないと……
 たぶん、ここは、出ていくだろう。
 
 まずは、昨日の約束を果たすために 薬師メリッサのお店までいこうかな。
 まだ鐘が三つ鳴って そんなに時間が経ってないけど、冒険者のために 朝 はやくから開けてくれているからね。
 
 メリッサお姉さんのお店は、他の薬師のお店が 三件も ギルドの斜め向かいにあるので、そんなに目立って 有名ではないけど 実は 穴場で、地元の冒険者の人たちが ポーションの効き目を 絶賛している。
 自分たちの薬がなくなるのがイヤだから 密かな人気だ。
 そんなに儲けようとしていない お店だからか 薬が無くなったら すぐ 閉めてしまうしね。
 商売っ気のあまりない 自由な 変わったお店。
 お姉さんが 一人で、五年前ぐらいから 始めているそうだ。

 それまでは、ラメール王国で お祖母さんと 一緒に お店をしていたようで、やっと五年前に独立の許可を得て 薬草の多い ピアンタ王国で ひとり立ちできたと言っていた。

 パールちゃんと 一緒ねっと 笑っていたけど、薬師になるのは 大変だったと思う。

 メリッサお姉さんのお祖母さんは、実は ものすごくすごい人らしく、厳しいから 独立するときには 誰の目も気にしないでいい ピアンタ王国を選んだと 冗談みたいに言っていたけど、どうだろう?

 キラン キラン

 ハーブの香りと共に お姉さんが奥から出てきた。

「あっ パールちゃん、いらっしゃい!! 昨日は ありがとう!  おかげで、バンブの木と 葉も 手に入れられたわ! 」

 あれから、走って買いに行ったら 最後の 一本が ギリギリ 買えたと 喜んでいた。
 ついでに、葉も 買っておいたと いっていた。
 そんなに はやく売れて、ビックリだよ!
 ホントにアレを持って帰る人が少ないんだなぁ~

 それから、あのよく眠れるお薬は 一本 銀貨 一枚で売り出すそうだ。
 ばら撒いた虫よけの薬草も 銀貨 一枚。
 燻すタイプの薬草は確か 銀貨 二枚 だったかな?
 おいておく獣よけの薬草は 二つで 銀貨 一枚。

 今回、燻すタイプ 一つに、ばら撒いた虫よけが 一つ。
 それから、おいておく獣よけ 一つ。
 よく眠れるお薬 一本で 金額が……
 銀貨 四枚 と 銅貨 五枚。
 予備で燻すタイプを持っていったから……
 銀貨 六枚 と 銅貨 五枚。
 あっ 、おいておく獣よけは 一つでは 売ってないから。
 銀貨 七枚。
 それから、虫刺されに効く軟膏……
 いくらだろう……

「メリッサお姉さん、あの虫刺されに効く軟膏はいくらかな? 」

「あぁ、あれは 売り物じゃないのよね でも まぁ 小さいタイプだから 銀貨 一枚 かな?  ポーションと違って ニ年しか持たないのよ。 そうだ、パールちゃん。ポーション もう少しで 切れるんじゃない? こっちに来て もうすぐ 三年でしょ?  早めに ギルドで 売っちゃいなさい!  今なら、六割は 戻ってくるから それでまた 新しいポーションを買わないと ダメよ!! 押し売りみたいだけど、上、中、下の 三本は 冒険者なら 絶対 必要よ」

「あぁ ホントだ、そろそろですね。 今から ギルドにいくので  売ってきます。 帰りに また寄るので その 三本と 魔力ポーションも 一本 とっておいてくれますか? 」

「いいわよ! お代は全部で 金貨 二枚と 大銀貨 一枚ね」

「わかりました。ギルドの図書室にいくので、夕方になると思います……   うーん 。 メリッサお姉さんが よければ、明日の朝でも いいですか? 」

「それなら、今日 夜に作るから それを とっておくわね」

「ありがとうございます。それで、よろしくおねがいします」

 明日、買いにくる約束をして ギルドに向かった。

  ♢♢

 まだ はやい時間だけど、そこそこ 人は いる。
 買い取りカウンター までいって ポーションを売りたいと告げると、急に まわりの目が こちらを向く。

 えっ、なに? ちょっと こわい……


 買い取りカウンター に 上、中、下のポーションと魔力ポーション 全部で 四本、テーブルにおく。

 まわりの目が やっぱり すごい!?

 お姉さんの言っていたとおり すぐに 六割 戻ってきた。

 金貨 一枚、大銀貨 二枚、銀貨 六枚 か……
 現金でもらい、ついでにあと 金貨 一枚 おろしておく。

 ギルドは 八割にして怪我をしている人を優先的に、その場で飲むことが条件で 売るみたいだ。

 わたしが売ったのは まだ三年以内の 効果も大丈夫なものだから ギルドが買ってくれる。
 そうでないものは、そこら辺の露店で売るか なんでも屋さんみたいな お店で 売るしかないようだ。

 わーっ すぐ、買い手が 現れた。
 八割で上級ポーションが買えるから 一瞬だった。
 中級も下級、えっ 魔力ポーションまで 一瞬だ!

「これは、当たりだ! 王宮ポーションだ!」

「なにっ!? これもだぞ!」

 なにやら 聞こえるけど、みんなよく 知っているんだなぁ~

 わたしも、もっと勉強しないと……
 三年近くギルドに通っていて、二階に図書室があるなんて 知らなかったしね。
 

 ギルドの 一番奥に、なにかの油が染み込んだ 独特の匂いがする 木の階段を見つけた。
 ちょっと滑りやすいけど、これが木の保護になるのだと知っているから しっかり手すりを持つ。
 少し 緊張しながら、一歩、一歩 登っていく。
 
 ギシッ ギシッ

 ホントだ!  

 図書室と書いた看板が、小さくついた ドアを 見つけた。

 そー っと ドアを 開けて……
 だれか いるかな~

 おーー っ
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