上 下
101 / 221

101. 迷い人 六代目

しおりを挟む
 キラン キラン

 フワッと 薬草とさわやかなハーブの香りがして……

 あーっ 落ち着くよ~!

 かぶってきた認識されにくくする帽子をとると同時に、メリッサお姉さんが現れた。

「いらっしゃ…… パールちゃん!! あなた、いままで どうしてたの? みんな 心配して……」

 泣きだしたお姉さんに、おどろいていると……

 抱きしめられて、どうしたらいいのか わからない。

 しばらくそのまま固まっていたけど、メリッサお姉さんが急に復活して……

「パールちゃん、このマントは なに? どうしたの?」

「実は、わたし……」

 話しだそうとしたら、ちょっと待ってと、止められてしまう。

 サッと 歩いていって店を閉め、カギをかけてしまった。
 窓にも布を掛けて、椅子に座るよう勧められる。
 ハーブティー を奥から持ってきてだしてくれた。


「おいしい…… 」

「よかったわ。 疲れがとれて落ち着くお茶なのよ」

 一口 飲むと、さぁ、教えてとせかされる。

 親方に言われたとおり、迷い人になったこと。
 向こうには 一日いただけで、帰ってきたら 七日も経っていたことを話した。

「すごいわっ! ホントに、迷い人なの? じゃあ わたしは 当たり人?」

「んーっ そう なりますね! 細工師の親方の、つぎですね!」

「すごい……  お祖母さん おどろくわ~っ」

「お祖母さん ですか?」 

 なんで、お祖母さんなんだろう?

「ふ、ふ、ふ、 わたしには、ドワーフの血が流れていると話したの覚えてる? それは、お祖父さん。 お祖母さんには、迷い人の血が流れているのよ。 わたしで 六代目なの」

「えーっ! うわーっ すごい!」

 なんとメリッサお姉さんは、迷い人 六代目 だった……

 今回のことでメリッサお姉さんも、わたしが最近 話していた細工師の親方のところまで行ってくれたようで……

 そこではじめて会った親方が、曽祖母にそっくりな メリッサお姉さんをみて、知り合いだった 迷い人の親族だと気づいたそうだ。

「お祖母さんからはピアンタ王国にいくとき、少し話しを聞いていたけど、お祖母さんも会ったことがないし、まだ生きているのかも分からなかったから、忘れていたのよ」

 だれも知り合いがいないと思っていた国で、お祖父さんみたいな人ができたとよろこんでいた。

 なんだか……  すごい…… つながっている……
 そうか…… それで、親方…… 伝えろって……


 宿屋のオヤジさんたちも心配していて、オヤジさんはわたしがどんなポーションを持って冒険にいったのか、ここへ聞きにきたという……

 四本の新しいポーションを持っていったというと、ホッとした顔をして、帰っていったと話してくれた。

 オヤジさ~ん!!
 心配かけて、ごめんなさい!

「あーっ! すぐ 宿屋に帰って、謝らなきゃっ!」

「それはダメよ。 会わずに手紙とお礼だけ少し置いて、旅立ったほうがいいわ」

 もし、王家が宿屋に迷い人のことを聞きにきたら、王族にウソをつくことは 罪 になるの。

 仕事柄、お客のわたしのことも守りたいだろし、板挟みになってしまう。

 ホントに知らないっと胸を張って言えるよう、薄情そうに思うけど、そうしてあげるべきだという……

 部屋をでること、無事なことだけ手紙に書いて、荷物をまとめて出るよう忠告してくれた。

 そうなのか? 
 それがいいのか……  ん~っ……

 あとはメリッサお姉さんに、いつもの薬草を数種とポーションを四本。 
 虫刺されの軟膏に新商品の軟膏 大と 普通サイズも 欲しいと注文する。

 向こうの国で渡した、メリッサお姉さんの薬を飲んで、怪我が治って泣いていた人がいたと伝えると、すごく感動してお姉さんもよろこんでくれていた。

「パールちゃん、持っていった モノ は全部おいてきたのでしょう? ならお金は、どうしたの?」

 親方とバンブの木で交換してもらったと伝えると、   ホッと していた。

 やっぱりギルドには、王家と繋がっている人がいるようだ……

 メリッサお姉さんも、お金は残してバンブの木と交換でいいというから、キノコの女王を 十本だしてこれでもいいか聞いてみた。

「パールちゃん! これ、どうしたの?」

 朝に採ってきたというと、おどろいていた。

 全部買うというので、いま注文した分のポーションと薬草であとは、お土産だと伝えたけど……

 せめてギルドに売るぐらいは、冒険者なら受け取りなさいといって、キノコの女王を店の奥に持っていき 金貨 七枚と 大銀貨  六枚、銀貨も 十一枚持ってきて渡してくれた。
 
「こんなに……  ありがとうございます」

「わたしのほうこそ、安く手に入って うれしいわ」

 ポーションを受け取るときにマジックバックから、 砂金を 三つと用意しておいた 金の塊も ひとつ渡した。

「パールちゃん、これは なに?」

「向こうの国の お土産です! 受け取ってくださいね」

「すごい お土産ね……     ふ、ふっ ありがとう。 でも、腰のマジックバックより大きな モノ の出し入れは、慎重にね」

 手持ちの部分が長めの肩からさげれる大きな布袋に、ひざ掛けを 一枚入れて渡してくれる。

 少し膨らんでいるから、なにが入っているのかわからないし、ここから出した振りをするとよい感じだと 教えてもらう。

 あと、ラメール王国にいくなら、メリッサお姉さんのお祖母さんに会いにいくよう、家を教えてもらった。

 届けて欲しい物もあるので、準備するから宿屋のあと、もう 一度よって欲しいそうだ。


 メリッサお姉さんの お祖母さん……

 迷い人 四代目。

 会うのが、楽しみ……    

 どんな 人 かな?

  

 
 
 
 

 
 
 
 
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:28,081pt お気に入り:11,874

貴方達から離れたら思った以上に幸せです!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:173,463pt お気に入り:12,406

貴方のために涙は流しません

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:35,962pt お気に入り:2,370

愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,485pt お気に入り:6,131

限界集落で暮らす専業主婦のお仕事は『今も』あやかし退治なのです

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:1,249pt お気に入り:1

本当はあなたを愛してました

m
恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,279pt お気に入り:218

【完結】婚約破棄の代償は

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,061pt お気に入り:385

優秀な妹と婚約したら全て上手くいくのではなかったのですか?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:48,061pt お気に入り:2,861

天使志望の麻衣ちゃん

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:127pt お気に入り:1

処理中です...