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122. 木箱の中身

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 いい笑顔のコウジュのお父さんとお母さんに、朝の挨拶もそこそこで木箱の中身を見せてもらう。

「うわーっ! すごい量!? これ全部シッソー水?  だけじゃないよね?」

「これはわたしたちからの、ささやかな感謝の気持ちです。 パールさん昨日はエントだけじゃなく、わたしまで…… ホントにありがとうございました」

「こんなに、たくさん……」

「パール、受け取ってね! わたしも頑張ってシッソー水作ったんだよ! あと、いろいろ入っているから楽しんでね!」

 ガントも、ありがたくもらっておけという。
 お礼をいって馬車に積んでもらう。
 もうみんなわたしが、魔法袋を持っているのがあたり前みたいになっていておどろいていると、その様子にあきれたようにガントが話しだす。

「パール。 みんなは迷い人になったら、なにが 一番ほしいと思っていると思うんだよ? 魔法袋さっ!」

 なるほどね!
 ラメール王国は金(キン)ではなくて、魔法袋が迷い人とセットなんだ……

 さすが魔道具の国だね!

 では、遠慮なく!
 馬車に自分も入って、腰のカバンから用意していた魔法袋を取りだし、ササッとしまっていく。
 コウジュが目を キラキラ させて見ていた。

 そんなコウジュに、これはご家族のみなさんで 一本ずつどうぞといって、細いバンブの木を 四本渡しておいた。

「これはなに? バンブの木?」

 あまり知らないのかな? 
 ありがとうっといって受け取ってくれる。

 お父さんたちも、それを見てお礼をいってくれた。
 娘のコウジュにも バンブは珍しいし、よかったなっと話している。

 ガントは、なんとも言えない顔をしていた。
 中身を知っているからね。
 
 そんなことをしていると、ライたちがきて早いけど出発してしまうことになった。

 急にあわただしくなり、また遊びにくるとコウジュに約束し次の宿屋に出発する。

 コウジュが、耳元で……

「次は、ブドウがおいしいよ! ありがとう」

 ギュっと抱きしめて、エントお兄さんのところへ走っていく……

 かわいいなぁ~

「ありがとうー! またねー!」


 馬車のなかでは、もうみんなすぐリビングに入っていくようだ。
 なにをもらったのか、ソードが 一度自分の部屋で調べておいでといってくれる。

 うなずいてありがたく、確認させてもらうことにした。
 もう、ここでは隠す必要がないから、すぐにテントをだせるのがいいよね。

 テントの中に入って、気がつく。
 ホッとする……
 この中は、安全だとすごく思ってしまった。

 なぜだかアロさんの奥さん、アクロさんの顔が頭に浮かんで……
 ありがとう……みんな。

「チェリー 。何をもらったのか、確認しようか?」

「はい、確認は大切です」

 うん、うん。
 うなずいておく。

 魔法袋から 四箱だして。
 まずは、シッソー水が 一箱だね!
 うわっ すごい量?

 二箱目には、えーっ!

「これ貴重なハチミツじゃなかった~?」

 ヤハッシのハチミツが、いっぱいだよ!
 他のハチミツも、なんだかいろいろある……
 百個以上あるんじゃない?
 当分 甘味には困らないな……

 三箱目は、ジャム?
  これも、いっぱいあるな……
 ベリー にリンゴにオレンジ? 
 まだある、この絵は…… マロン?
 他にも数種類いろいろな瓶詰めがあった。
 それから、これはお茶? 
 なんのお茶だろう?

 四箱目は、あれっ 果物だ?
 うわっ! 
 オレンジにブドウにリンゴにマロン他にも……
 数種類のベリー だ!
 季節が、ぐちゃぐちゃになってない?
 全部…… 生だよね?
 どういう ことだろう。

「チェリー 、これはどうしてだと思う? 季節がぐちゃぐちゃだよね? だれか、時間停止の魔道具を持っているとか?」

「はい、これはあの樹海によるものだと思います。あの樹海は神秘的です」

「えーっ!そうなの? たしかに人を寄せつけない、そんな感じではあるけど……」

 もし、これが樹海で最近採れた モノ ならマーキングしておけば、また探しだすことができるそうだ。
 もらった果物にマーキングするようチェリー に勧められ素直にすべてマーキングした。

 リビングのみんなにおすそ分けしようとして、入れ物がないので不便だと気がつく。

 お鍋にフライパンもいっぱいほしい。
 あの、濃厚シチュー を鍋ごと買いたいよ!
 いまは適当に集めリビングに持っていく。

 ソードはこんなにもらっていいのか聞いてきたけど、ぜんぜん大丈夫だから足りなかったら教えてといっておいた。

 馬を休ます休憩になり、ガントもリビングに入ってくる。

「これは…… すごい果物だな……」

「ホントに。もうあの人たちは、隠す気がありませんね……」

「パールだから、しょうがないだろう」

 なんだか、ライのお許しがでたぞ?
 なにか教えてもらえるのかな?

「パールは、もう気づいてますか? あの樹海のことです」
 
 ソードが意味ありげに聞いてきた。

 「やっぱり! あの樹海はなにか、普通と違うのですか?」

「そう思われますか? わからないのです…… でも普通の森林ではありません。こうやって、季節に関係なく果物や花が咲いていますからね」

「でも、これはラメール王国の秘密。ピアンタは知らないんだ」

 ライが真剣な 顔 でいう。

「えっ、でもそんなことっておかしくない? ラメールの近く、国境にピアンタの人いましたよね?」

「それでも知らないのさ! 地形の問題があるからな」

 ガントが続ける。

「パールと国境近くを 一緒に走っていただろ? 道はそんなに広くないし、最後はまっすぐだったのを覚えているか?」

 たしかに、途中から道はまっすぐ続いていた。

ガントがいうには、あの道はあれからもずっとまっすぐで、国境を超えてもまだしばらくまっすぐ続いているらしい。
 そして宿屋の近くぐらいから樹海側に曲がりだし、そこが樹海の南西の端にあたるみたいだった。

 道は、国境近くの宿屋を越えて次の宿屋ぐらいまで樹海に沿って北に向かいまっすぐ伸びているそうで、そのあとは南西の方角、王都に道は向かうことになり樹海から離れる。

 要するに樹海の角が、ラメール側にあるからピアンタでは、分からないことも見えてくるのかな?
 なるほどね……

「樹海の神秘なのさ」

 ライが、考え深そうにいう。

 なんとなく樹海のことが分かってきた。

 こんどまた、冒険しに樹海にきてもいいかな?

 国境の宿屋はコウジュもいるし…… クフッ……

 あの濃厚シチュー は絶品だからね。 


 ラメール王国に楽しみが ひとつ で~きたっ!


 

 
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