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199. わたしの護衛騎士ブレンダ

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 テオは、どこかなあ~?

「おかえりパール。 モナルダにお礼をいってくれた?」

「うん、おめでとうって!」

 テオがいた! シーナに抱っこされている。

「テオーーっ! かわいいね」

「うふふ よかったわねテオ。 かわいいって」

 しばらく見ていたら、また眠ってしまった……

 マークたちは、新しい従業員を決める面接をして、食堂の方で 会議だそうだ。
 いろいろ決めることがあるみたい。
  
 あとはシーナにモナルダから預かった母乳がよくでて、疲れが軽減するポーションを渡してライのところに帰ることにする。

 シーナはモナルダのポーションをすぐに飲んでいた。
 疲れているんだね……

 また明日来ると告げ、ライのところへ向かう。
 

  ♢♢♢


 あれっ?
 書斎に入ると見慣れた顔がある!

 ブレンダだ!

「パール、おかえり。 ブレンダが待っていたよ」

「ただいま、ライ! ブレンダ、久しぶり!」

 ブレンダが、軽く微笑んで 一度うなずく。

「パール、おかえり! おれたちのことを忘れてないか?」

「えっ、忘れるって? ただいまガント、ソード」

「パールおかえりなさい。わたしたちもパールが帰ってくるのを待っていたのですよ」

「そうなんだ。 ありがとうソード、教えてくれて。 みんなも待っててくれていてありがとう」

 あーっ まずは、あいさつだった。
 あいさつは基本なのに……

 順番にも気をつけないと。
 みんなが王太子様やお貴族様だと、忘れていたかも……
 これは、危険だ……
 ふーっ。


「ブレンダ、久しぶり! もう用事は済んだの?」

「パール、おかえり。ああ、済んだよ」

「パール? ブレンダから聞いたんだけど、マークがブレンダにパールの護衛を頼んだらしいね」

「うん。 自分がわたしのそばに長くいてあげられないから心配で、わたしが結婚するぐらいまでの 百年か 二百年ぐらいまで 一緒にいて、世間のことをもっと教えてくれるように頼んだみたいなんだよ」

「そうか、百年か二百年……結婚……」

「パール。 そのことなのですが、少し事情が変わってしまったんですよ。 王妃様とパールはお会いしましたよね? ブレンダを助けたり迷い人だともお知りになられましたし、わたしたちを当たり人にもしてくれました。 王妃様がパールのことを気に入ったみたいでね、パールの護衛の話を知ってマークの依頼でブレンダが護衛するのでは、いろいろとね。 まあ、権力的にも弱いとおっしゃってね」

「権力的にもですか?」

「そう、いまブレンダが来ている服は騎士の服ですよね。 これだと、後ろに王国があるとすぐわかりますから、どこの貴族でもそう簡単に下手なことはしません。 でも、これが私服でパールが平民だとわかるとバカな貴族や力のある商会は強くでてくるのですよ」
 
「あっ、それセージが言ってた……」

 ライがうなずいている。

「パール、母上がブレンダを助けてくれてお礼がしたいと言ってただろ? わが国の迷い人だとも知ったしな。 それでな、ブレンダを王妃様からの依頼で、パールの護衛騎士にすることにしたんだよ。それだと、ブレンダは騎士としての正規の報酬を受けとりながら安全に護衛ができる、二人にとって損はないだろ?」

「えっ、でもそれって…… なんだかわたし、この国に縛られてしまうの? いろいろこれから冒険もしたいし、自由に過ごしたいんだけど…… あと、ひとつの国セルバ王国にも行くつもりだから……」

「パール、セルバに行くのか!?」

「そうだよ。 いまは、テオが生まれたところでそばにいたいからあまり遠くには行ってないけど、いつか必ず行くよ」

「もし、わたしの自由がなくなるなら、護衛はいらない。 申し訳ないけどそう王妃様にお伝えしてくれる」

「パール。 ブレンダはね、この話をしたらきっとパールは王妃様の申し出を断るだろうと言ってはじめは自分も騎士になる気はないと断ったみたいなんですよ。でもね王妃様が、パールは自由だと宣言してくださったそうで、それでこの話をお受けしたと教えてくれたんです」

「そうなの? ブレンダ?」

「ああ、そうだよ。 王妃様がパールは自由だと宣言してくださってね。 だから好きなところに行ったらいいんだよ。 わたしがどこでも付いていくからね。 それに、これで、パールが結婚したあともわたしが騎士を辞めるというまで 一緒だよ。 わたしはパールの専属だとそのとき 一緒に宣言してくださったからね!」

「うそ?! そうなの? ブレンダとずっと 一緒にいれて、わたしは自由なの?」

「パール。 これなら、断る理由がありませんね」

「うん、ソード! そうだよね! 王妃様にありがとうってお礼を言っておいてくれる?」

「ふ、ふ、ふ それは、後ほどですね」

「そうと決まれば、ブレンダはわたしたちと同じ同僚になりますからね。 これから長い付き合いになりますが、よろしくお願いしますよ」

 ソードがそう言うと、ブレンダは サッと 椅子から立ち上がって敬礼して……

「パール様を誠心誠意お守りさせていただきます。 二年のブランクがありますが、どうぞよろしくお願いします」

「ブレンダ……」

 ライがうなずき、ガントが。

「ブレンダ、また 一緒だな! よろしく頼むぞ!」

「わたしとは、はじめてですが長い付き合いになりそうですね。よろしくお願いしますよ」

「さあ、これで決まったな。 母上も安心してよろこばれるだろう。 でも、パール…… ホントにセルバに行くのか?」

「行くよ」

「ライ、今日はこの辺で……」

「ああ……」


 それから、わたしの部屋をブレンダに案内して少し話しをする時間を作ってもらった。

 二人きりにしてもらい、お茶を飲みながら話を聞く。

 ロゼットイチリンを倒してブレンダの無事を知らせる相手はやはり王妃様だったみたいだ。

「王妃様の信頼を得ていた騎士なのに、わたしの護衛なんかでいいのかな? マークが無理やり頼んだんじゃないの?」

「そんなことないよ。 わたしの意思さ」

「そう、ならうれしいけど……」

「そんなわたしのことよりパール、セルバ王国にはいつ頃行く気でいるんだい?」

「んーっ、いまはテオと、もっと遊びたいからね。 数年後かな?」

「そうなのかい? いまなら、赤ん坊はそんなに動けないだろう? そのあいだに行ってしまった方が、いいようにも思うけどね……」

「えっ? そうなの?」

「ああ、しゃべれるようになった子どもはかわいいからね。その頃にセルバに行くのは辛くないかい?」

「あーーっ! そうかも?!」

「ふっ ゆっくり考えたらいいよ」

 よく考えたら、そうだよね……
 プールもでき上がるのは、早くて 一年後だし。

「ブレンダ、もう少しわたしに魔法の使い方を教えてくれる? モナルダにもポーションの応用編を教えてもらいたいし、それから考えるよ」

「ゆっくりでいいよ」

「うん」

 ブレンダ…… 

 なんだかわたしの、家族ができたみたい……

 すごく うれしいな。
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