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202. もう、これは運命?

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 ひとけのない路地裏にボードで降りる。

 ひとりでこれはちょっと怖いけど、ブレンダがいるから安心して降りていける。
 路地を抜けて……


 ドアには、『薬師メリッサ』と書いた木の看板。

 ドアを開けると、いつもの懐かしい音色……

 キラン キラン

 中に 一歩入ると、フワッと 薬草とハーブのやさしい香りが漂ってくる。


 あっ、店の奥からメリッサがでてきた!

「いらしゃい…… パール!?」

「メリッサ!!」

「パール、おめでとう! 聞いたわよ! 男の子だって、伯父さんよろこんでいるんじゃない?」

「うん、ありがとう! マークもだけど、シーナのお父さんがすごいんだよ」

「ふ、ふ、ふっ 孫はかわいいのよ! ちょっと待ってね!」

 そう話しながら店の看板を休憩中にかえて、カギをかけ窓は布でおおって、椅子に座るよう勧めてくれる。
 奥からハーブティー を持ってきて出してくれた。

「メリッサ、わたし専属の護衛騎士を紹介しに来たんだよ! ブレンダって言うんだ。 これからずっと 一緒だから、よろしくね」

「お久しぶりです。 ブレンダさん」

「ああ、久しぶりだね。 メリッサ。 すっかり薬師様だね」

「えっ?! 二人は知り合いなの?」

「わたしがモナルダお祖母さんのところで修行していたときに、来てくれたお客様なのよ」

「なるほど……」

「でも、どうして護衛騎士なの?」

 また、一から説明するとメリッサがおどろいていた。
 ハーブティー を少し飲んでから、話しだす。

「じゃあ、なに? 親方たちがパールを預けた馬車の持ち主がラメール王国の王太子だったってこと? そしてパールは、そのことを知らずに王太子たちを当たり人にしちゃたのね…… それ、親方たちは知っているの?」

「あれっ? 話してないかな? そうだ、忘れてたっ! あはっ いろいろ注文したりしてたから……  そうか…… そうだよ……まあでも、もともとガントとは、宿屋で知り合いだったし……」

「そう…… もう、これは運命ね……」

「あははっ 運命?? でもまあ、悪い人たちじゃなかったからよかったよ」

「エッ!? 待って、じゃあ王太子は……もしかして……」

 言葉を濁して、メリッサがブレンダを チラッと みる。
 ブレンダが、軽くうなずいていた。

「ハァー だから、王妃様が…… パールあなた大変ね…… でも、モナルダお祖母さんもこのことを知っているんでしょ? んー じゃあ、ひとまず安心?」

「うん、ライたちはいい人たちだし安心だよ!」

「そう…… パールはまだ 十歳だし、いろいろこれからよね……」

「えっ! これからって? わたしがセルバ王国に行こうとしていたこと、もう話してたかな?」

「なんて、パール? あなたセルバ王国に行くの?」

 さっき、親方たちに話したことと同じ話をしておいた。

「うふ、ふっ まあ どっちでもいいなら、わたしもブレンダさんと同じで先に行くかしら? 話し出したり、歩き出したりする頃ってホントかわいいからね」

「メリッサ、わたしのことはブレンダと呼んでくれるかい? これから長い付き合いになるからね」

「ありがとうブレンダ!」

「そうなのか…… もっとかわいくなるのか」 

「パール、この話だけど親方たちにもしていいかしら?」

「うん、話しておいてくれたら助かるよ。 もう話したつもりでいたからね」

「パールらしい……     親方たちおどろくわよ……    
フッフ」

 メリッサにブレンダを紹介できたし、これで 一安心だな。


 じゃあ、ピアンタの町をブレンダと森に向かって歩いて、人が少なくなったところで帰ろうか?

 ひとりでいたときには、まだ小さくてあまり店も覗けなかったけど、今日はブレンダがいるからどこでもみれてうれしい!

 そうブレンダに教えると。

「ふ、ふっ わたしがいるから…… 好きなところに入ったらいいよ。 あの骨董品のお店なんていいんじゃないかい? 楽しそうだよ」

「みたい! いいの? 前から気にはなっていたけど一人じゃ入れなかったから……行ってもいい?」

「ああ」


 そこは独特な雰囲気……
 色がくすんだ鏡やランプに銀の食器、アクセサリー も独特なセンスで置いてあった。

 うわー!
 家具も使い込んだ焦げ茶色で、いい木の色……
 
「へーぇ、いろいろあるね。 パール、気に入ったものは、あったかい?」

「うーん なんだか分からないモノや、何かの 一部みたいなモノも多いね。 留め具なのか? なんなのか……」

「いらしゃいませ! 何か気に入ったモノがありましたらおっしゃってください。 お勉強させてもらいますよ」

 いかにも儲けようとしている感じの、小太りの男の人がブレンダに声をかける。
 まあ、そうなるよね……

「ああ、少し見せてもらうよ」

 愛想のない言い方でブレンダが返事をしても、ニコニコしていて、気持ちが悪い。

 別にほしいモノもないし、椅子なんかはいいツヤのある濃いハチミツ色をしていてステキだけど、わたしは親方に作ってもらうからいらないし……  アクセサリー もいらない。

 もう帰ろうかと、思ったそのとき目に入ってきた 一枚の板……

 それは壺の下に引いてあった。

 ブレンダに頼んで壺を退けてもらう。
 じっと板を見る。

 真っ黒だ…… これは……

「なんだい? 気になるのかい?」

「お嬢ちゃん、それが気に入ったのかな? その板は真っ黒でキレイだろ? これは、丈夫な板だよ! いまなら壺もついてくるよ!」

「壺はいらないけど、この真っ黒が気に入ったかな? 他にもある?」

「そうか、真っ黒なのが気に入ったのか…… それなら、これなんかどうです」

 店の端のほこりを被っているようなところから、あと 三枚真っ黒な板と、真っ黒な四角のかたまりに短い棒を 二本持ってきた。
 なにに使うかは分からないけど、真っ黒で変わっていて目にはつくから飾るには最適だと言って勧めてきた。

「板が 四枚と 四角いかたまり。 あと短い棒が 二本…… これ 全部でいくらになるの?」

「全部ですか?! そうですね…… 板と 四角のかたまりがひとつ銀貨 二枚 。棒が 一本 銀貨 一枚。 全部で大銀貨 一枚と 銀貨 二枚ですが、全部買ってくださるならおまけして 大銀貨 一枚でどうです?」

「わかった、大銀貨 一枚だね。 じゃあ全部買います」

 すぐに腰のマジックバッグから 大銀貨 一枚をだして店の男の人に渡す。

 ブレンダが板を 四枚持ってくれた。

 わたしは、四角のかたまりと棒を 二本いつもの肩掛けカバンに入れておく。

「すごく濃い黒で気に入ったから、またあったら教えてくださいね」

「ええ、ええ お客様の好みがわかりましたから、また店の中からでてきたら、取っておきますよ」

「ありがとう」

「これからもご贔屓にお願いします!」

 売れそうにないモノが売れて、店の人がうれしそう……

 黒好きな女の子として、店をあとにする。


 さあ、ひと気のないところまで サッサと 行こう!

 ブレンダも黙ってついてきている。

 いっぱい聞きたいはずなのにな……

 さすが、護衛のプロだよね!

 


 
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