迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜

青空ばらみ

文字の大きさ
208 / 221

208. ゆりかご

しおりを挟む
 ああ、テオとラトルではやく遊びたい。

 しかし、この息子さん……問題だな?

 何かを勘違いしているのか……
 ちょっと、ズレてる?

「エミール、この絵を見てくれますか? これを作ってもらいたいのですよ」

 ソードがわたしの描いた絵をエミールさんに見せている。

「素晴らしいですね。いろいろ考えられている。ちゃんとストッパーもつけるのですね……なるほど……」

「安全第一です! それを忘れないでください」

「わかりました。丁寧に作らせていただきます」

「あの……この商品の名前なのですが、お嬢様は『ゆりかご』とおしゃっておられたと思うのですが、わたくしたちもそう呼んで良いでしょうか?」

「ああ、名前ぐらい……」

「パールっ! あとは、わたしが引き継ぎますからね。ブレンダ、パールに部屋でパイでも食べさせてあげてください」

 な、なんだ……
 わたしはいま、なにか失敗しかけたのか?

 ラトルはもらって良くて、ゆりかごと呼ばせることぐらい……これは、ダメなの?
 難しい……
 ひっかけ問題みたいだ……
 
 ブレンダと部屋に帰って聞いてみた。

「ねぇ、ブレンダ? ゆりかごと呼ぶのを認めてはいけなかったの?」

「そうだね、あの調子で認めたらいけないね。あのままパールが認めたら、ラトルひとつで許可したことになるだろう? 商品の名前も大切なんだよ。その名前が、この王太子の屋敷から発信されたモノならなおさらだね」

「あのお嫁さんは、そんなことまで考えてたのかな? そうは見えなかったけど……」

「ベルはたぶん、ただ良い名前だから聞いたのだと思うよ。でもね、そんなことどっちでもいいのさ。商売だからね。結果、商品に良い名前が付いた。それで儲けるのが商売人さ! ベルはあの先代が気に入って息子のお嫁さんにしたそうだよ。先代は、みる目があるねぇ。今回もこのお嫁さんのおかげで、息子は助かっているんだから」

「そうだね。息子さんはわたしから見てもちょっとなんだか、考え方が違うよね……」

 ブレンダにも、出来上がったラトルを見せる。

 おいしいパイを食べて、今日のわたしの役目は終わったようだ。

 それからもう少し紙を持ってきてもらって、テオに必要そうなおもちゃを描き出してみた。

 木のラトル以外にも、たしか布のラトルもあったな?
 もっとかわいい、柔らかいおもちゃもほしいし……
 たしか積み木は、五感を刺激していろいろな能力を高めてくれたはず……

 ああ、テオが大きくなってきたら一緒に遊びたい。

 そう考えれば、今のうちにセルバ王国へ行っておいた方がよいのかな?
 わたしを認識してくれたのに、すぐセルバへ行くのでは、ちょっとさびしいかも……

「何を難しく考えているんだい?」

「うん、いつセルバ王国へ行こうかと思って……」

「そんなことかい……それなら、好きなだけ悩みな」

 ブレンダが、急に冷たいぞぉ!?
 真剣に考えているのにーっ!


 夕食のときソードが、ガーベ商会との商談の続きを教えてくれた。
 
 わたしの注文した商品は『ゆりかご』という名で、もう少し単純化したモノがガーベ商会で売り出されるそうだ。
 わたしの『ゆりかご』は特別注文になって、貴族相手に売ることになるみたい。

 もうひとつ『ラトル』も同じように、貴族には『ラトル』で、平民には『ガラガラ』という名で、はじめは売り出すことが決まった。
 そしてまた、わたしに少しお金が入ってくるらしい。

 あとは息子さん……
 少し修行に出すと、父親でもある先代のエミールさんが話していたようだ。
 甘く物事を見過ぎている馬鹿な愚息だと、エミールさんが謝罪してきたと教えてくれた。
 商会はそのあいだ、お嫁さんが頑張って切り盛りしていくのかな?

 まあ、なんとなく納得だけど……
 
「あの息子さんは、赤ちゃんや子どもの商品を扱う商会じゃなくって、他の普通の商会に生まれていればこんな風に考え方で苦労しないで済んだのかな?」

「関係ないね。あんな安直な考え方では、どんな商会でもみんなを引っ張ってはいけないさっ! 遅かれ早かれあの息子はああなっていたよ。パールが優しくてソードがその気持ちをくんだから、商会もなんとか息子を修行にだすぐらいで助かったんじゃないのかい?」

「そうですよ。パールじゃなければ、もっとたいへんなことになっていたでしょう。それをエミールはわかっていたようで、この売り上げをすべてパールに渡すとはじめは言ってきたのです。それを横であの息子がどう捉えたか……これからが楽しみな商会ですね」

「えっ!? ソード、そんな全部の売り上げなんていらないよ!」

「ええ、わかっています。正規の配当と少しプラスぐらいにしていますよ」

「よかった……のか?」

「まあ、なんにせよパールのほしいモノが手に入ることになったんだろ? それで、よかったじゃないか!」

「そうだね、ガント! そう考えたら、よかったよ! ライ、ホントにありがとうねっ」

「ああ、パールの希望通りのモノができてよかったな」

「うん! でも、まだまだテオにあげたいモノがいっぱいあるんだよ」

「パール! それは何ですか? 教えておいてくださいね」

「ソード……うん、また教えるよ」

「パールの欲しがるモノは、特別だからね。みんなも欲しくなるのさ。覚えておきな」

「わかったよ、ブレンダ……」


  ♢♢♢


 それから、もう一周ときが過ぎる……

 わたしはいつものようにモナルダ、マークの宿屋、ライの屋敷と巡っていき、ついに『ゆりかご』が完成したとガーベ商会がやってきた。

 今回は先代のエミールさんとお嫁さんのベルさん、二人だけだった。

 息子のフレーさんは教会の中にある孤児院で、赤ちゃんの世話を住み込みで行っているそうだ。
 最低でも一ヶ月は赤ちゃんの面倒を中心に見ながら、夜はラトルを作って生活させると話してくれた。
 まず、自分が扱っている商品の相手を知る。
 これが大切だと先代エミールさんが真剣に語り出す。
 自分の子どものときには、奥さんのベルさんとお手伝いに任せていて、赤ちゃんの世話をまったくしていなかったそうだ。
 それに気づけなかった自分にも責任があると、父親でもあるエミールさんが恐縮しながら話してくれた。

 でも、ゆりかごはすごくいい!

 わたしが描いた絵に忠実で、赤ちゃんの指が入るような小さな穴もない。
 程よく空気穴も模様のようにあいていて全部キレイに処理してある。
 立っちしても大丈夫な高さの囲いだし、安全面もバッチリだ!

 エミールさんが側面の囲い部分に宝石を入れることもできると言ってきたから、わたしのゆりかごにはいらないと断っておく。

 使うのは平民だからね。

「それなら、宝石より布団を作って!」

 うん? エミールさんの目がキラリっと光った気がする……

 アレっ? 
 わたし余計なことを言ったの?

 ソードをチラッと一瞬見たら……
 顔が少し引きつっている?!

 ガントは、まあいい……

 ブレンダは、困ったような顔?

 ライは、笑ってくれていた……ホッ。




しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。 死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。

ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム 前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した 記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた 村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた 私は捨てられたので村をすてる

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~

紅月シン
ファンタジー
 聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。  いや嘘だ。  本当は不満でいっぱいだった。  食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。  だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。  しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。  そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。  二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。  だが彼女は知らなかった。  三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。  知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。 ※完結しました。 ※小説家になろう様にも投稿しています

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

処理中です...