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13話・渋谷奪還成功。そして池袋へ
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全ての戦いが終わり、俺と舞花は瓦礫の山のような地面に座っていた。魔力も体力も尽きていてフラフラで立てない状況だ。隣で体育座りをする舞花もゼロノスのプレッシャーで意識を保っていたのが評価出来る。俺でもギリギリだったのに、失禁だけで済んだのは大したもんだ。
「よく耐えていてくれたな舞花。ゼロノスが映像でも自分の殺意をよく抑えてくれた」
「私も映像相手に攻撃しても仕方ないからね。それに、ゼロノスが情報を提供してくれるチャンスと思った。これで信者の人間達のゼロノス聖協会のヤバさがわかった」
「ま、表面的な所はな。実際に出会って何をしているかを確認しないとわからない事もあるだろ。少なくとも悪魔王の根城にいる連中が人間的感覚があるとは思えないからな」
「それは自分の事を言ってるのかな?」
「……言ってくれるな舞花。あえて否定はしないさ」
すると、耳障りな悪魔妖精ミミの声が聞こえた。紫の髪の全裸の妖精が空を飛んでいるのに、舞花も気付いた。
「あ! あの女まだ生きてたんだ。ムカつく!」
全裸のミミはいつも通り舞花に怒っている。でもミミにはもう魔力が無いので何も出来ない。でも、元気だけは有り余っているのか嫌いな舞花を攻撃している。
(完全に、ハロウィン戦で俺を苦しめた事を忘れているな。悪魔らしいといえば悪魔らしいが、舞花との仲の悪さは悪魔らしいのか?)
何故か舞花の周囲を飛び回って見つめるミミは一つの変化を見つけていた。
「まさか……魔法を身につけた? 魔力が身体の表面に感じるわ」
「ミミのクセに勘がいいのね。魔力を肉体的強さに変換出来るのよ私は。だから私のデコピンは痛いわよ?」
「何ぃ! そもそもこの女は魔法を信じてないから魔法は使えないと思う。それが変な風になって魔力が肉体におかしな作用をしたのね。全身凶器の筋肉女だから!」
鋭い舞花のデコピンをギリギリで回避したミミは、もう一つの何かに気付いてしまっていた。
「何か変な匂いがする……あ! この女、オシッコ漏らしてるんじゃない? 何か凄く濡れてるし臭う! 最悪だよ星矢! 脱がせてみなよ! 悪魔神罰してあげなきゃ! アハハッ!」
「……あのなミミ。俺は漏らしてるのを知ってて黙ってたんだよ。ミミは余計な事を言うな。俺達は疲れてるんだ」
「おい、星矢! 私が漏らしてたのを知ってたのか!? それをあえて黙ってるとは卑怯だわ!」
「アハハッ! お漏らし女の話を広めてやろーっと。ミミはまた星矢の魔レンズとして活動してくからヨロシクね!」
『ウルサイボケ!』
イライラした俺と舞花にデコピンをくらってしまい、ミミは実体化が解けて俺の左目に戻った。魔力が回復するまでは大人しくしてるだろう。
「どーすんの星矢。ウルサイ妖精ミミちゃんの服も作らないとダメじゃない? 一応、仲間でしょ?」
「そうだな。ミミは最も近い悪魔として俺の敵であり味方だ。ゼロノスを殺す日までは仲良くするさ。だからミミの制服は舞花に任せる」
「は? 何であんなクソ悪魔の服を私が作るのよ。私もミミ嫌いだし。絶対に友達になりたく無いタイプね。人間だったら彼氏命! みたいな面倒な女王様タイプね。あり得ないわ」
「女の感覚がわかるのはルーンメイズでも舞花が一番だろ。それに舞花は今回の戦いでスピードに関しては俺より上だ。そのスピードで何とか頼むぜ」
そう言うと、自分の新しい力を評価された事を嬉しく思ったのか、舞花は明後日の方向を見つめながら呟いていた。
「……そこまで言うならいいわよ。私も、魔法は使えないけど魔力を体術に応用する事が出来るようになったからね。ミミには私の下着の素材で作ろうかしら」
下着の素材で作るのはどうなんだ? と思いつつも、舞花の回復力にも驚いている。スクランブル交差点でかなりの重症を負っていたはずなのに、もう傷が癒えていた。
この渋谷エリア奪還作戦により、生き残っているルーンメイズの面々も強くなっていた。そのルーンメイズの連中も俺達のいる場所に集まって来た。
そうして、悪魔に反抗する人間達は甚大な被害があったものの渋谷エリアを取り戻す事に成功した。悪魔王ゼロノスのいる東京には遠いが、大いなる一歩といえる出来事だった。
※
渋谷エリアボス・ハロウィンのハロウィンパーティーから三日が経った。
渋谷エリアを奪還したルーンメイズの面々は、生きている人間達の手当てと渋谷地区の使える建物への移住を進めていた。ライフラインが通っているアパートやマンションに渋谷区役所から移住して、悪魔との戦闘の傷を癒している。ゼロノスデイまでの期限はあるが、初の戦争的戦いでみんな疲弊してるのも事実だ。
それでも活発な動きをするメンバーもいた。主に悪魔東京内部をバイクで偵察している宮田達は、数人の白バイ警官が死亡したので部隊編成は変わっているが問題無く各地の偵察に向けて動いていた。俺は舞花が作ったミミの新しいセーラー服を渡しており、ミミは喜びのあまりどこかに飛び去って行った。
(流石に舞花が作ったとは言えないな。さて、俺は今後の作戦を――? 微かな悪魔反応!? ここに悪魔が!?)
左目の魔レンズに反応した方向を見ると、パーマがかった茶髪の男が飄々と歩いて来ていた。悪魔では無いと安堵した俺は大きく息を吐いた。池袋エリアから帰還したと言う宮田は俺に話しかけて来た。
「おう、夜野。この前の渋谷の悪魔の死体を使って悪魔ドラッグを作って見たぜ。どうやらこれは痛みを消して幻覚を見せる効果があるようだ」
渡された袋の中を見ると赤いサプリメントのような物が見えた。これが悪魔の血と麻薬を混ぜ合わせ、サプリのカプセルに入れた物のようだ。
「悪魔の血と麻薬を合成させたのがもう出来たのか。その悪魔ドラッグは実際使えそうか?」
「人間にも悪魔にも効果アリだろ。死にそうな人間に使って、最後に苦しませない効果があるから使えるぜ。この前ドクターが瀕死の人間に試したようだ」
「そうか……痛み止めとしてそれも使えるから量産は必要だな。怪我をしてる連中にやらせるといい。宮田は外の偵察で忙しいだろうからな」
「そこも注意点がある。悪魔の血と麻薬を煮過ぎると毒ガスが発生する。その毒ガスは悪魔を殺せるレベルだ。製造してたビルの一棟を閉鎖したからな……あれには参ったぜ」
「悪魔すら死ぬ毒ガスか……」
渋谷区役所地下にいるドクターにも伝えてデビルドラッグ製造時の毒ガスには注意するように伝えておくとした。そして、悪巧みが好きな宮田をけしかける。
「その悪魔ドラッグは品川方面のゼロノス聖協会の連中なら高く売れるかもよ? 奴等は悪魔従い、悪魔になりたい連中らしいからな」
「品川の人間にか。確かに売るならそこしかない。悪くない案かもな……」
どうやら、宮田にも品川で儲ける方法が浮かんだようだ。すると、コツコツという足音が聞こえた。
「アンタ達、ドラッグなんて作ってるの?」
そこに茶色の髪をポニーテールにまとめた舞花が現れた。今の舞花はルーンメイズでも最強とも言え、集中すれば弾丸さえ見切る女だ。だから宮田も舞花には余計な事は言わないようだ。
「痛み止め用のドラッグだ。せめて痛みだけは消せるようにの処置だから必要悪だぜ」
「お兄ちゃんが良いって言うならいいけど。宮田もそれを悪用しないでよ」
「わかってるよ。リーダーにはバイク部隊にしてもらった借りもある。ルーンメイズが強くあるよう今日もバイクを走らせるぜ」
バイクをブンブン乗り回すマネをしながら宮田は笑いをとった。微笑む舞花は俺に一言言って去る。
「後で会議あるからヨロシクね」
そして、俺も外を偵察する宮田に忠告した。
「悪魔達は人間の知恵も利用している。悪魔達に協力している人間もいるんだ。それはゼロノスにもいると言っていたからな。甘い言葉で取り込まれないよう気をつけろよ。特に女の悪魔には注意だ。悪魔と手を組んだ人間はもう悪魔だからな」
「確かに女の悪魔はヤベー。ヤリテーと思うぜ! でも池袋とかの悪魔は女の悪魔の中でもノリノリなんだよな。あそこの美女ボスは音楽好きで、建物を爆破させまくってるからな。面白いボスだぜ」
「池袋のボスは美女で爆弾使いなのか。よくそこまで調べたな宮田」
「なぁに。俺にかかればドラッグでも調査でも余裕、余裕。池袋方面は悪魔も話がわかる奴もいて、しかも池袋にはドラッグが結構あって、回収も大変だったぜ。俺はルーンメイズが勝つ為に頑張るぜ。んじゃな!」
膝を叩きつつ、軽快なノリで宮田は飯を食いに行った。
そして俺は今後の作戦を確定させる為にルーンメイズに協力を仰ぐ。美空リーダーとリーダーの妹の舞花と、次のエリア奪還作戦を練った。机の上の東京の地図を俺は指差した。
「やはりゼロノスのいる東京へ向かうにはゼロノス聖協会の影響がある品川方面は今は厳しそうだ。少し遠回りだが、池袋から攻めよう。それには部隊は少数でいいと思う」
「小部隊でいいのか? リーダーである俺ならもっと人数を増やす事も出来るぞ。遠慮するなよ夜野」
「そうだよ星矢。お兄ちゃんは他の地区からも新しいメンバーを入隊させているわ。バイク部隊が案内した連中が来れば千人は余裕で超える。五日後には渋谷は完全な要塞になるんだから」
その二人の話は確かに嬉しいが、今後の戦力としてその千人を使おうと進言した。池袋エリアへの侵攻は重要な一手だが見据えるのはゼロノスのいる東京だ。
「二人の気持ちには感謝するよ。でも俺は池袋攻略の作戦がある。悪魔は犠牲にしても人間は犠牲にはしない。俺を信じてくれ二人共」
『……わかった』
美空兄妹は俺の意思を尊重してくれた。そうして、今後の作戦の最終確認をする。
「よし、最終確認だ。合図があり次第、ルーンメイズ本隊は迫る悪魔と戦いつつ東京侵攻準備をしていてくれ。人間との交流が有り悪魔の結束意識が低いとも言える池袋エリアへは俺と舞花などの数人いればいい。五日後には池袋は陥落出来る自信がある。リーダー達は現世との連絡を取りつつ、武器や食料のダウンロードと戦力増強を頼んだ。池袋攻略が終わり次第、東京のゼロノスとの決戦だ」
「わかった。妹を頼んだぞ夜野。舞花は強くなっているが強さに溺れないか心配だ」
「舞花は任せておけ。俺の側にいれば死なないだろう。舞花は漏れても折れないからな」
ムッとした舞花は俺を攻撃しようとするが、リーダーに抱き締められて落ち着いていた。ブラコンって奴かな? そうして、東京の地図の池袋エリアを見た俺は決意した。
「池袋を死の国にして、ゼロノスのいる東京まで攻め込む。悪魔神罰の始まりだ」
「よく耐えていてくれたな舞花。ゼロノスが映像でも自分の殺意をよく抑えてくれた」
「私も映像相手に攻撃しても仕方ないからね。それに、ゼロノスが情報を提供してくれるチャンスと思った。これで信者の人間達のゼロノス聖協会のヤバさがわかった」
「ま、表面的な所はな。実際に出会って何をしているかを確認しないとわからない事もあるだろ。少なくとも悪魔王の根城にいる連中が人間的感覚があるとは思えないからな」
「それは自分の事を言ってるのかな?」
「……言ってくれるな舞花。あえて否定はしないさ」
すると、耳障りな悪魔妖精ミミの声が聞こえた。紫の髪の全裸の妖精が空を飛んでいるのに、舞花も気付いた。
「あ! あの女まだ生きてたんだ。ムカつく!」
全裸のミミはいつも通り舞花に怒っている。でもミミにはもう魔力が無いので何も出来ない。でも、元気だけは有り余っているのか嫌いな舞花を攻撃している。
(完全に、ハロウィン戦で俺を苦しめた事を忘れているな。悪魔らしいといえば悪魔らしいが、舞花との仲の悪さは悪魔らしいのか?)
何故か舞花の周囲を飛び回って見つめるミミは一つの変化を見つけていた。
「まさか……魔法を身につけた? 魔力が身体の表面に感じるわ」
「ミミのクセに勘がいいのね。魔力を肉体的強さに変換出来るのよ私は。だから私のデコピンは痛いわよ?」
「何ぃ! そもそもこの女は魔法を信じてないから魔法は使えないと思う。それが変な風になって魔力が肉体におかしな作用をしたのね。全身凶器の筋肉女だから!」
鋭い舞花のデコピンをギリギリで回避したミミは、もう一つの何かに気付いてしまっていた。
「何か変な匂いがする……あ! この女、オシッコ漏らしてるんじゃない? 何か凄く濡れてるし臭う! 最悪だよ星矢! 脱がせてみなよ! 悪魔神罰してあげなきゃ! アハハッ!」
「……あのなミミ。俺は漏らしてるのを知ってて黙ってたんだよ。ミミは余計な事を言うな。俺達は疲れてるんだ」
「おい、星矢! 私が漏らしてたのを知ってたのか!? それをあえて黙ってるとは卑怯だわ!」
「アハハッ! お漏らし女の話を広めてやろーっと。ミミはまた星矢の魔レンズとして活動してくからヨロシクね!」
『ウルサイボケ!』
イライラした俺と舞花にデコピンをくらってしまい、ミミは実体化が解けて俺の左目に戻った。魔力が回復するまでは大人しくしてるだろう。
「どーすんの星矢。ウルサイ妖精ミミちゃんの服も作らないとダメじゃない? 一応、仲間でしょ?」
「そうだな。ミミは最も近い悪魔として俺の敵であり味方だ。ゼロノスを殺す日までは仲良くするさ。だからミミの制服は舞花に任せる」
「は? 何であんなクソ悪魔の服を私が作るのよ。私もミミ嫌いだし。絶対に友達になりたく無いタイプね。人間だったら彼氏命! みたいな面倒な女王様タイプね。あり得ないわ」
「女の感覚がわかるのはルーンメイズでも舞花が一番だろ。それに舞花は今回の戦いでスピードに関しては俺より上だ。そのスピードで何とか頼むぜ」
そう言うと、自分の新しい力を評価された事を嬉しく思ったのか、舞花は明後日の方向を見つめながら呟いていた。
「……そこまで言うならいいわよ。私も、魔法は使えないけど魔力を体術に応用する事が出来るようになったからね。ミミには私の下着の素材で作ろうかしら」
下着の素材で作るのはどうなんだ? と思いつつも、舞花の回復力にも驚いている。スクランブル交差点でかなりの重症を負っていたはずなのに、もう傷が癒えていた。
この渋谷エリア奪還作戦により、生き残っているルーンメイズの面々も強くなっていた。そのルーンメイズの連中も俺達のいる場所に集まって来た。
そうして、悪魔に反抗する人間達は甚大な被害があったものの渋谷エリアを取り戻す事に成功した。悪魔王ゼロノスのいる東京には遠いが、大いなる一歩といえる出来事だった。
※
渋谷エリアボス・ハロウィンのハロウィンパーティーから三日が経った。
渋谷エリアを奪還したルーンメイズの面々は、生きている人間達の手当てと渋谷地区の使える建物への移住を進めていた。ライフラインが通っているアパートやマンションに渋谷区役所から移住して、悪魔との戦闘の傷を癒している。ゼロノスデイまでの期限はあるが、初の戦争的戦いでみんな疲弊してるのも事実だ。
それでも活発な動きをするメンバーもいた。主に悪魔東京内部をバイクで偵察している宮田達は、数人の白バイ警官が死亡したので部隊編成は変わっているが問題無く各地の偵察に向けて動いていた。俺は舞花が作ったミミの新しいセーラー服を渡しており、ミミは喜びのあまりどこかに飛び去って行った。
(流石に舞花が作ったとは言えないな。さて、俺は今後の作戦を――? 微かな悪魔反応!? ここに悪魔が!?)
左目の魔レンズに反応した方向を見ると、パーマがかった茶髪の男が飄々と歩いて来ていた。悪魔では無いと安堵した俺は大きく息を吐いた。池袋エリアから帰還したと言う宮田は俺に話しかけて来た。
「おう、夜野。この前の渋谷の悪魔の死体を使って悪魔ドラッグを作って見たぜ。どうやらこれは痛みを消して幻覚を見せる効果があるようだ」
渡された袋の中を見ると赤いサプリメントのような物が見えた。これが悪魔の血と麻薬を混ぜ合わせ、サプリのカプセルに入れた物のようだ。
「悪魔の血と麻薬を合成させたのがもう出来たのか。その悪魔ドラッグは実際使えそうか?」
「人間にも悪魔にも効果アリだろ。死にそうな人間に使って、最後に苦しませない効果があるから使えるぜ。この前ドクターが瀕死の人間に試したようだ」
「そうか……痛み止めとしてそれも使えるから量産は必要だな。怪我をしてる連中にやらせるといい。宮田は外の偵察で忙しいだろうからな」
「そこも注意点がある。悪魔の血と麻薬を煮過ぎると毒ガスが発生する。その毒ガスは悪魔を殺せるレベルだ。製造してたビルの一棟を閉鎖したからな……あれには参ったぜ」
「悪魔すら死ぬ毒ガスか……」
渋谷区役所地下にいるドクターにも伝えてデビルドラッグ製造時の毒ガスには注意するように伝えておくとした。そして、悪巧みが好きな宮田をけしかける。
「その悪魔ドラッグは品川方面のゼロノス聖協会の連中なら高く売れるかもよ? 奴等は悪魔従い、悪魔になりたい連中らしいからな」
「品川の人間にか。確かに売るならそこしかない。悪くない案かもな……」
どうやら、宮田にも品川で儲ける方法が浮かんだようだ。すると、コツコツという足音が聞こえた。
「アンタ達、ドラッグなんて作ってるの?」
そこに茶色の髪をポニーテールにまとめた舞花が現れた。今の舞花はルーンメイズでも最強とも言え、集中すれば弾丸さえ見切る女だ。だから宮田も舞花には余計な事は言わないようだ。
「痛み止め用のドラッグだ。せめて痛みだけは消せるようにの処置だから必要悪だぜ」
「お兄ちゃんが良いって言うならいいけど。宮田もそれを悪用しないでよ」
「わかってるよ。リーダーにはバイク部隊にしてもらった借りもある。ルーンメイズが強くあるよう今日もバイクを走らせるぜ」
バイクをブンブン乗り回すマネをしながら宮田は笑いをとった。微笑む舞花は俺に一言言って去る。
「後で会議あるからヨロシクね」
そして、俺も外を偵察する宮田に忠告した。
「悪魔達は人間の知恵も利用している。悪魔達に協力している人間もいるんだ。それはゼロノスにもいると言っていたからな。甘い言葉で取り込まれないよう気をつけろよ。特に女の悪魔には注意だ。悪魔と手を組んだ人間はもう悪魔だからな」
「確かに女の悪魔はヤベー。ヤリテーと思うぜ! でも池袋とかの悪魔は女の悪魔の中でもノリノリなんだよな。あそこの美女ボスは音楽好きで、建物を爆破させまくってるからな。面白いボスだぜ」
「池袋のボスは美女で爆弾使いなのか。よくそこまで調べたな宮田」
「なぁに。俺にかかればドラッグでも調査でも余裕、余裕。池袋方面は悪魔も話がわかる奴もいて、しかも池袋にはドラッグが結構あって、回収も大変だったぜ。俺はルーンメイズが勝つ為に頑張るぜ。んじゃな!」
膝を叩きつつ、軽快なノリで宮田は飯を食いに行った。
そして俺は今後の作戦を確定させる為にルーンメイズに協力を仰ぐ。美空リーダーとリーダーの妹の舞花と、次のエリア奪還作戦を練った。机の上の東京の地図を俺は指差した。
「やはりゼロノスのいる東京へ向かうにはゼロノス聖協会の影響がある品川方面は今は厳しそうだ。少し遠回りだが、池袋から攻めよう。それには部隊は少数でいいと思う」
「小部隊でいいのか? リーダーである俺ならもっと人数を増やす事も出来るぞ。遠慮するなよ夜野」
「そうだよ星矢。お兄ちゃんは他の地区からも新しいメンバーを入隊させているわ。バイク部隊が案内した連中が来れば千人は余裕で超える。五日後には渋谷は完全な要塞になるんだから」
その二人の話は確かに嬉しいが、今後の戦力としてその千人を使おうと進言した。池袋エリアへの侵攻は重要な一手だが見据えるのはゼロノスのいる東京だ。
「二人の気持ちには感謝するよ。でも俺は池袋攻略の作戦がある。悪魔は犠牲にしても人間は犠牲にはしない。俺を信じてくれ二人共」
『……わかった』
美空兄妹は俺の意思を尊重してくれた。そうして、今後の作戦の最終確認をする。
「よし、最終確認だ。合図があり次第、ルーンメイズ本隊は迫る悪魔と戦いつつ東京侵攻準備をしていてくれ。人間との交流が有り悪魔の結束意識が低いとも言える池袋エリアへは俺と舞花などの数人いればいい。五日後には池袋は陥落出来る自信がある。リーダー達は現世との連絡を取りつつ、武器や食料のダウンロードと戦力増強を頼んだ。池袋攻略が終わり次第、東京のゼロノスとの決戦だ」
「わかった。妹を頼んだぞ夜野。舞花は強くなっているが強さに溺れないか心配だ」
「舞花は任せておけ。俺の側にいれば死なないだろう。舞花は漏れても折れないからな」
ムッとした舞花は俺を攻撃しようとするが、リーダーに抱き締められて落ち着いていた。ブラコンって奴かな? そうして、東京の地図の池袋エリアを見た俺は決意した。
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