悪魔神罰-共感不要の革命者-

鬼京雅

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15話・池袋ボス・シフォンヌとの交渉

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 ウェーブがかった金髪悪魔美女である池袋エリアのボス・シフォンヌは、男の心臓から大きなストローで吸っていた血を飲み終えると同時に、男の頭部を爆破した。シフォンヌは人間を爆破し慣れているようで、自分の赤いライダースジャケットにはその血はかかっていない。周囲の人型悪魔達も驚かず、隣にいるルーンメイズバイク部隊の宮田だけが驚いた顔をしていた。

「……」

 その返り血が俺の頬にまで飛んだ。それをハンカチで拭い捨て、動揺する宮田を無視して話し出した。

「栄養補給は終わったようだな池袋エリアのボス・シフォンヌ。俺は悪魔神罰の夜野星矢。このルーンメイズの宮田から聞いていると思うが、俺はお前に同盟契約しに来た」

「あは♪ その同盟契約は池袋悪魔が人間を食べない契約ね。そっちのドラッグやら情報を与えてくれるのが本当なら、私も同盟契約は考えるわ。さぁ、渋谷エリアを手に入れたルーンメイズのトップシークレットとやらを話しなさい」

 すでに宮田からの話は通っており、シフォンヌはすぐに同盟契約をする話の内容を聞いて来た。警戒を解いたのを知らせる為か、シフォンヌは仲間の人型悪魔達を部屋から出した。俺はルーンメイズのトップシークレットである、渋谷区役所から「現実世界への通信が可能」なのを伝えた。これを知るのは今はシフォンヌだけだ。
 これがあれば、シフォンヌは絶対に勝てない悪魔王であるゼロノスに対して何かしらのアクションをするかも知れない。

『……』

 何か閃いたのか、シフォンヌは口元を笑わせていた。相変わらず爆破された首無し死体に青ざめる宮田はこの沈黙に堪え兼ねている。この宮田がボマーである池袋ボスのシフォンヌとの繋がりがあったおかげで、東京駅にいるゼロノス攻略への道筋は一つ完成しそうだ。

「……成る程ね。確かに現実世界との繋がりがあれば池袋悪魔もゼロノスを出し抜けるかも知れない。でも、大事なのは楽しいかどうかなの。私達がハッピーになる新しいドラッグやらの情報は無いの?」

「それも問題無い。現実世界のドラッグも渋谷区役所にダウンロード……つまり、転送出来るシステムが完備されている。大きな物でないなら、ドラッグだろうが武器だろうが何でもアリだ。どうだ? ハッピーだろシフォンヌ?」

 アハハハッ! とシフォンヌは楽しそうに嗤う。こうして俺はダウンロード出来るドラッグや銃などの情報を教え、シフォンヌの信用を得た。隣にいる宮田はバイク部隊として知らされて無い情報に驚いている。

「小型の物なら何でもダウンロード出来るのかよ……なら、美空リーダー達は小型のサブマシンガンや、手榴弾などの武器も手に入れられるって事か?」

「そうだ。この池袋にはヤクザ連中も多くいる。なら、そいつらを使ってドラッグの売買をさせればいい。そうすれば、池袋悪魔はゼロノスのいる東京にも勝てる組織になるはずだ」

 この池袋地下街を通って来てわかったが、池袋にはヤクザの群れが多くいた。山手線殺しに巻き込まれたヤクザ各組の寄せ集め連合だ。この連中も利用してドラッグをさばいた資金で勢力を伸ばせばゼロノスにも勝てると俺はシフォンヌにアドバイスした。

「……池袋悪魔は悪魔王ゼロノスにも勝てる。この世界は強い者が生きる世界。そもそも鼻くそほどの価値も無いヤクザなどに人権は無い。使えるだけ使い倒して、池袋悪魔シフォンヌがゼロノスに変わる悪魔王……悪魔女王になればいいさ」

「面白い事を言う人間ね。まるで人間らしく無い台詞。悪魔以上に悪魔かも知れない」

「誰からの共感は不要だ。革命者は革命後に共感されるのが世の常。まぁ、革命後でも共感されなくていいけどな」

 そう言う俺にシフォンヌはハッピーになり、宮田は唖然としつつも納得していた。こうして、池袋ヤクザにも悪魔東京へのドラッグ販売をさせる事にシフォンヌは合意したんだ。

「……なら同盟契約成立。池袋悪魔はゼロノスのデビルスターツリー解放まで人間には手を出さない。現世とこの悪魔東京が融合するまでは、この池袋地下街でドラッグとゲームに酔いしれているわん♪ そして、時期が来れば悪魔王ゼロノスを倒して私が悪魔女王になるの……あぁ……ハッピー!」

 まるで花火のように、手の平から生み出した魔力を爆発させてシフォンヌは同盟契約を喜んだ。そして、池袋エリアボス・シフォンヌとの同盟交渉は終わった。





 池袋ボス・シフォンヌとの同盟交渉が成立し、池袋エリアの入口に待たせている美空舞花達と合流する為に池袋エリアを歩いていた。その帰路の途中で悪魔の血で精製したデビルドラッグを持つ宮田は言う。

「夜野。本当にこれを東京方面に流すのか?」

「当然だ。東京にいるゼロノスを神と崇める人間達のゼロノス聖協会はもう人間じゃない。それならヤク中になろうが問題無いだろう? 勝つ為には敵の陣営を一人でも減らさないと勝てないぞ?」

「そうだな……確かに東京の人間達はバイクで見た時もどこかおかしい人間達で話が通用しなかった。池袋エリアは悪魔なのに話が通じたからこそ、俺もシフォンヌと協力関係になった。そして、夜野は同盟契約を結んだ。俺もデビルドラッグの売買に勤しむとするかな。シフォンヌもそれを喜んでくれるし」

「そうだ宮田。お前がデビルドラッグを管理してヤクザ達をこき使え。シフォンヌが望むお前になれば、シフォンヌとセックス出来るだろ」

「おい! シフォンヌとセックスって、相手は悪魔だぞ?」

「お前はシフォンヌを抱きたいから協力してたんだろ? 人型悪魔なら抱く事も出来るだろ。まぁ、この件はあくまでも舞花には話すなよ。舞花は潔癖な正義感があるからな」

「美空舞花……」

 と、ぼんやりとした顔で宮田はボヤいていた。何だ? と思ってその宮田の見ている方向を見ると、茶髪のセミロングの婦人警官の服装をした少女が俺達の方面へ駆けて来ていた。

「舞花? 何故、池袋エリア内部に?」

 池袋エリアの入口には舞花とルーンメイズバイク部隊がいるはずだったが、今はこちらに駆けて来る舞花しか見当たらない。しかも、舞花は明らかに誰かと戦闘をした感じのする姿になっていた。そして、さっきから池袋エリア内に人間も悪魔もいない違和感の答えが出ていた。

「まさかシフォンヌの奴……舞花! 現状を教えろ!」

「池袋エリアのヤクザ連中と悪魔が、急に私達に襲いかかって来たのよ! 仲間のバイク部隊のバイクは奪われてすでに殺されてるわ!」

「何だと? シフォンヌの奴――同盟契約をもう破棄したのか?」

「そうよん。悪魔神罰の夜野星矢。いや、悪魔殺しがハッピーな可愛くない子猫ちゃん……」

『……!』

 俺達はシフォンヌの声がする方向を一斉に向いた。すると、池袋の街頭モニターにシフォンヌの顔が映し出されていたんだ。その金髪ウェーブヘアの美女はもうさっきの同盟契約を破棄した事を話している。

「残念だけど必要数のドラッグや食料も揃ったし、池袋悪魔は籠城する事にしたの。正直、ゼロノスデイが来て現世に出るまでは何をしても無意味だしね。それまでは私達は力を蓄えておくの。だから同盟契約は無し」

「シフォンヌ。それでいいのか? ゼロノスはお前達を消すかも知れないんだぞ?」

「ゼロノスは全てを受け入れる悪魔王。反逆心があってもそれを受け入れ、許す。だからこそ悪魔王になれた存在。だから池袋悪魔が何をしていようとも自由なのよ。人間のように上司の顔を伺って働く習性は悪魔には無いの。そして、悪魔を殺すのをハッピーとする人間は敵としてしか見れないという事もね」

「……やはりバレてたか。ま、これもシナリオの一つだ。シナリオは最悪なほど楽しめるのも一興さ」

 どうやら、完全に同盟契約は終わりのようだ。そして、池袋悪魔達はドラッグも食料も集まったから池袋地下街に籠城するらしい。
 それに、シフォンヌは悪魔殺しが楽しい俺の事を見抜いていたようだな。舞花は周囲を警戒し、宮田はシフォンヌとの関係が終わる事を危惧している。そんな池袋エリアで孤立する人間達に池袋ボスは言った。

「悪魔と人間は対等じゃないの。それに、悪魔神罰と名乗った人間を信用するわけないでしょ?」

『……』

「この池袋エリアは封鎖するわ。地下街への扉は全て閉じる。悪魔王ゼロノスが現実世界に侵攻する日が来るまで、この池袋エリアは何もせずにデビルスターツリーが解放されるゼロノスデイを待つわ……それまでせいぜい外の悪魔を殺してハッピーになる事ね……敗北確定の革命者さん♪」

 そのモニターに映るシフォンヌは言うと、街頭モニターの映像は途切れて池袋の地下街に入れる場所は全て閉鎖された。
 こうして、池袋エリアボス・シフォンヌとの同盟契約はあっさりと終わりを告げた。
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