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4話・世間に広がり出す失敗少女
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絵空が「失敗少女」になった花火大会の翌日――。
失敗少女の活躍が快晴花火大会のニュースになっていた。花火大会の終盤で親からはぐれた子供が川に流され、その子供を助けた事で失敗少女の名がネットで拡散したのである。
その姿こそ写真にはなっていないが、魔法少女のような白い服装でステッキを持っていたのもあり、噂と人の想像力が「失敗少女」の人気に火を付けだしていたのである。
その失敗少女である時外絵空は、残り一ヶ月の夏休み期間を失敗少女として過ごしていた。
夏の建築現場での事故、車の信号無視、タバコが原因の小火から生まれた「悪魔コモン」を倒して人命救助をしていた。そこから生まれた失敗魔力である「エラーマジック」をゲットして失敗少女として日々成長している。
現在はそんな事を絵空の実家の一軒家の二階で話していた。勿論、絵空の相手は絵本から出てきた赤髪の王子である。王子は自分で入れた紅茶を絵空にも振舞っていた。
「今日も素晴らしい活躍だよ君は。この暑い夏を爽快な気分にさせてくれる最高の失敗少女だね」
「何か失敗少女になると、夏の暑さもキツく無いから活動しやすいのもあるよ。今更言うけど、何故か私の家に居着いてしまったわね王子君。私の両親に魔法を使って、自分の存在を認めさせたのは流石だよ」
「……何かその目は傷つくよ? 確かに洗脳でもあるけど、僕は君の側にいる必要もあるし。因みに、家賃や食費は払っているから問題無し!」
「別にそこは自慢する所じゃないから。もうすぐ夏休み終わるし、二学期になったら王子もやる事探した方がいいよ。私は学校に行かないとならないから」
「その辺の手配は済んでるからオッケーだ。僕に抜かりは無いのさ」
この夏休みの間に王子と毎日過ごしていたので、かなり王子との仲も良くなっている。一つ屋根の下で暮らしている以上、何かあってもおかしくないと思う絵空は見栄えのいい赤髪の少年を不思議そうに見つめていた。
(まさか絵本の中の王子様が現実に現れて、自殺しようとした私を失敗少女という魔法使いにするなんてね。この人は私の王子様かも……)
「どうしたんだい絵空? 僕の顔に何か付いているかい?」
「まさか、絵本の王子が現実に現れるとは思わないから不思議に思ってたの。それだけ!」
慌てて否定する絵空は一気に紅茶を飲み干す。そして、パソコンで「失敗少女」について検索する。七月の終わりの花火大会から発生したネット上での失敗少女の盛り上がりは、相変わらず凄かった。
失敗少女と検索すれば、正体、魔法、チート、美少女、噂、人助けなどのキーワードが羅列されている。
しかし、失敗少女を絵空と特定してる人間は今の所一人も存在しない。
「変身しても特に仮面もしてないから、すぐに顔バレするかと思いきや魔法効果のおかげで私とは判別されないのが助かるわ。撮影されてもボヤけてるのも助かる。私が失敗少女ってバレたらマズイし。ネットで拡散して快晴中学校に人が集まってしまうからね」
「その辺の対応はしているよ。現代の失敗少女はネットがあるから、プライバシー保護は万全さ。その変身アイテムでもある王冠髪留めを無くさない限りはね」
「この王冠型の髪留めはお風呂に入る時に外して遠くに置いておくと、いつの間にか髪に戻っているからちょっとホラーだよ。コワコワだよ」
「それも失敗少女の義務だ。慣れるしかないよ」
「でも、失敗少女という名前はどうなの? このサイトみたいにサクセスガールとかのカタカナも良いと思うけどね」
五芒星が描かれたサイト・サクセスガール。
主に女子中学生から大学生までの学生の中で人気のあるサイトで、自分のダイエットや彼氏が出来る方法などの成功体験を投稿するサイトだ。短時間動画とグラビア、ブログなどで人気を集めてポイントを得て、ランキングになる成功者を生み出すサイトだ。ここは芸能界の登竜門ともされていて、グラビアタレントやバラエティ番組に出ている人間も出始めているサイトだった。
運営期間はまだ短いが、こらから時代を変えるサイトと言われている。しかし、絵本の王子には何の事だかよくわからない。
「サクセスガール? ん~……このサイトは魔女が好みそうな五芒星がバックにあって嫌だね。現代人のする事はよくわからないな」
「説明すると、自分の動画やグラビアをアップして人気ランキングが出るサクセスガールで一番人気なのは、快晴中学校でも人気のある黒宮聖子さんなの。私はその黒宮さんみたいになりたい。小学生時代は普通だったのに、中学生になってから「成功少女」になっている黒宮さんみたいにね」
「その黒宮という少女……見た目の印象はどんな感じなんだい? 何か特別なアクセサリーをしていたりする?」
「五芒星のペンダントをしている黒髪ロングのスタイルのいい子だよ。それがどうしたの?」
「敵の魔女が五芒星を好むからさ。王子と魔女の絵本にも五芒星が描かれていただろう?」
「ちょっと待って。失敗少女には敵とかいるの? 悪魔コモンからエラーマジックを得てればいいだけじゃないんだ?」
現在の絵空の目標は失敗少女として完全体になる事である。それには、他人の失敗魔力であるエラーマジックをゲットする必要がある。だが、失敗少女にも普通の魔法少女モノのように「敵」が存在していた。
「敵は魔女さ。君の好きな絵本に出てくる魔女。完全体になる目的は魔女を倒す為にある。それが失敗少女の最大の敵だよ」
「じゃあ……王子の恋人の魔女を私が倒すの?」
「そうさ。君が魔女を倒す。倒さないと、この世界は魔法などの異能力者が増えてしまうよ。君が失敗少女として覚醒した以上、魔女も遠くない内に攻撃を仕掛けて来るだろう」
「そっか……。でも、倒すか倒さないかは、その時に決める」
そう言った絵空は、その敵の居場所に興味を持った。敵のアジトさえわかれば、こちらから仕掛けてしまえ! という無謀な考えもあったのである。
「そもそも魔女はどこにいるの?」
「魔女はネットの中にいる。昔は絵本の中に存在して、そこから具現化していた。でも今はネット社会だ。ネットならパソコンとスマホがあれば、そこから具現化出来る。絵本の量よりも圧倒的にパソコンやスマホの方が多い。だからネットの中に魔女は逃げ込んでいるのさ」
「そっか。なら会った時に考えるよ。自分の目で確かめてみる」
魔女という敵を知ったが、まだ会った事も無いので無意味に怖がるのを辞めた。見えない敵に恐怖しても無駄という覚悟が絵空にはあった。そして、目の前のイケメンと一緒にいるけどデートはしてないと思ったのである。
(いい事思いついた! エラーマジックを集めながらデートすればいいのよ! そうすれば人助けも出来て私は王子とデートも出来る。これは完璧な作戦……残りの夏休みはこの作戦で頑張るわ! これは絵空事じゃない)
パソコンのキーボードを叩く絵空は行きたいデートスポットを検索する。紅茶のグラスを手に取り飲む王子は呟く。
「あの絵本が消え去らないと、この世は平和にならないよ」
その呟きは絵空には聞こえていなかった。
そして、王子とのデートとエラーマジックを同時にこなして行き、絵空の楽しい夏休みが終わった。目的は悪魔コモン探しなので完全にデートとは言えないが、絵空はそれでも満足していた。
そうして、失敗少女の話題で持ちきりの快晴中学校での二学期が始まった。
失敗少女の活躍が快晴花火大会のニュースになっていた。花火大会の終盤で親からはぐれた子供が川に流され、その子供を助けた事で失敗少女の名がネットで拡散したのである。
その姿こそ写真にはなっていないが、魔法少女のような白い服装でステッキを持っていたのもあり、噂と人の想像力が「失敗少女」の人気に火を付けだしていたのである。
その失敗少女である時外絵空は、残り一ヶ月の夏休み期間を失敗少女として過ごしていた。
夏の建築現場での事故、車の信号無視、タバコが原因の小火から生まれた「悪魔コモン」を倒して人命救助をしていた。そこから生まれた失敗魔力である「エラーマジック」をゲットして失敗少女として日々成長している。
現在はそんな事を絵空の実家の一軒家の二階で話していた。勿論、絵空の相手は絵本から出てきた赤髪の王子である。王子は自分で入れた紅茶を絵空にも振舞っていた。
「今日も素晴らしい活躍だよ君は。この暑い夏を爽快な気分にさせてくれる最高の失敗少女だね」
「何か失敗少女になると、夏の暑さもキツく無いから活動しやすいのもあるよ。今更言うけど、何故か私の家に居着いてしまったわね王子君。私の両親に魔法を使って、自分の存在を認めさせたのは流石だよ」
「……何かその目は傷つくよ? 確かに洗脳でもあるけど、僕は君の側にいる必要もあるし。因みに、家賃や食費は払っているから問題無し!」
「別にそこは自慢する所じゃないから。もうすぐ夏休み終わるし、二学期になったら王子もやる事探した方がいいよ。私は学校に行かないとならないから」
「その辺の手配は済んでるからオッケーだ。僕に抜かりは無いのさ」
この夏休みの間に王子と毎日過ごしていたので、かなり王子との仲も良くなっている。一つ屋根の下で暮らしている以上、何かあってもおかしくないと思う絵空は見栄えのいい赤髪の少年を不思議そうに見つめていた。
(まさか絵本の中の王子様が現実に現れて、自殺しようとした私を失敗少女という魔法使いにするなんてね。この人は私の王子様かも……)
「どうしたんだい絵空? 僕の顔に何か付いているかい?」
「まさか、絵本の王子が現実に現れるとは思わないから不思議に思ってたの。それだけ!」
慌てて否定する絵空は一気に紅茶を飲み干す。そして、パソコンで「失敗少女」について検索する。七月の終わりの花火大会から発生したネット上での失敗少女の盛り上がりは、相変わらず凄かった。
失敗少女と検索すれば、正体、魔法、チート、美少女、噂、人助けなどのキーワードが羅列されている。
しかし、失敗少女を絵空と特定してる人間は今の所一人も存在しない。
「変身しても特に仮面もしてないから、すぐに顔バレするかと思いきや魔法効果のおかげで私とは判別されないのが助かるわ。撮影されてもボヤけてるのも助かる。私が失敗少女ってバレたらマズイし。ネットで拡散して快晴中学校に人が集まってしまうからね」
「その辺の対応はしているよ。現代の失敗少女はネットがあるから、プライバシー保護は万全さ。その変身アイテムでもある王冠髪留めを無くさない限りはね」
「この王冠型の髪留めはお風呂に入る時に外して遠くに置いておくと、いつの間にか髪に戻っているからちょっとホラーだよ。コワコワだよ」
「それも失敗少女の義務だ。慣れるしかないよ」
「でも、失敗少女という名前はどうなの? このサイトみたいにサクセスガールとかのカタカナも良いと思うけどね」
五芒星が描かれたサイト・サクセスガール。
主に女子中学生から大学生までの学生の中で人気のあるサイトで、自分のダイエットや彼氏が出来る方法などの成功体験を投稿するサイトだ。短時間動画とグラビア、ブログなどで人気を集めてポイントを得て、ランキングになる成功者を生み出すサイトだ。ここは芸能界の登竜門ともされていて、グラビアタレントやバラエティ番組に出ている人間も出始めているサイトだった。
運営期間はまだ短いが、こらから時代を変えるサイトと言われている。しかし、絵本の王子には何の事だかよくわからない。
「サクセスガール? ん~……このサイトは魔女が好みそうな五芒星がバックにあって嫌だね。現代人のする事はよくわからないな」
「説明すると、自分の動画やグラビアをアップして人気ランキングが出るサクセスガールで一番人気なのは、快晴中学校でも人気のある黒宮聖子さんなの。私はその黒宮さんみたいになりたい。小学生時代は普通だったのに、中学生になってから「成功少女」になっている黒宮さんみたいにね」
「その黒宮という少女……見た目の印象はどんな感じなんだい? 何か特別なアクセサリーをしていたりする?」
「五芒星のペンダントをしている黒髪ロングのスタイルのいい子だよ。それがどうしたの?」
「敵の魔女が五芒星を好むからさ。王子と魔女の絵本にも五芒星が描かれていただろう?」
「ちょっと待って。失敗少女には敵とかいるの? 悪魔コモンからエラーマジックを得てればいいだけじゃないんだ?」
現在の絵空の目標は失敗少女として完全体になる事である。それには、他人の失敗魔力であるエラーマジックをゲットする必要がある。だが、失敗少女にも普通の魔法少女モノのように「敵」が存在していた。
「敵は魔女さ。君の好きな絵本に出てくる魔女。完全体になる目的は魔女を倒す為にある。それが失敗少女の最大の敵だよ」
「じゃあ……王子の恋人の魔女を私が倒すの?」
「そうさ。君が魔女を倒す。倒さないと、この世界は魔法などの異能力者が増えてしまうよ。君が失敗少女として覚醒した以上、魔女も遠くない内に攻撃を仕掛けて来るだろう」
「そっか……。でも、倒すか倒さないかは、その時に決める」
そう言った絵空は、その敵の居場所に興味を持った。敵のアジトさえわかれば、こちらから仕掛けてしまえ! という無謀な考えもあったのである。
「そもそも魔女はどこにいるの?」
「魔女はネットの中にいる。昔は絵本の中に存在して、そこから具現化していた。でも今はネット社会だ。ネットならパソコンとスマホがあれば、そこから具現化出来る。絵本の量よりも圧倒的にパソコンやスマホの方が多い。だからネットの中に魔女は逃げ込んでいるのさ」
「そっか。なら会った時に考えるよ。自分の目で確かめてみる」
魔女という敵を知ったが、まだ会った事も無いので無意味に怖がるのを辞めた。見えない敵に恐怖しても無駄という覚悟が絵空にはあった。そして、目の前のイケメンと一緒にいるけどデートはしてないと思ったのである。
(いい事思いついた! エラーマジックを集めながらデートすればいいのよ! そうすれば人助けも出来て私は王子とデートも出来る。これは完璧な作戦……残りの夏休みはこの作戦で頑張るわ! これは絵空事じゃない)
パソコンのキーボードを叩く絵空は行きたいデートスポットを検索する。紅茶のグラスを手に取り飲む王子は呟く。
「あの絵本が消え去らないと、この世は平和にならないよ」
その呟きは絵空には聞こえていなかった。
そして、王子とのデートとエラーマジックを同時にこなして行き、絵空の楽しい夏休みが終わった。目的は悪魔コモン探しなので完全にデートとは言えないが、絵空はそれでも満足していた。
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