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7話・探り合い
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ある土曜日。
俺はグレイ仲間の勇の寺で境内の掃き掃除のバイトをしてから、寺から近いアパートの一室に住む勇の部屋にいた。この半月あまりの誠高校での出来事を話している。茶菓子の饅頭をこれでもか! と食っては、お茶を飲む俺を見ている勇は長めの茶髪の髪を耳にかけ、
「だいぶお疲れのようだね総司。最近、女子達も西村さんに押され気味で、総司に話しかけられて無いと聞いたよ。余裕は無いかい?」
「当然だ。あの女は俺の元カノだぞ? しかも、俺の昔の喧嘩番長キャラを知ってる。人をからかうのが好きなだけの女なんだよアイツは」
「僕は西村さんはいいと思うけど? 少しトゲがあるけど、そこが魅力的でもある」
「お前は俺の中学時代を知らないから……」
「西村唯は傍若無人のオテンバ娘。そして、総司と因縁のある元カノ。総司が僕と同じグレイというキャラ選択をした原因。今は、何故か落ち着いていてそこまで傍若無人ではない女」
「勇、ふざけてると寺の掃除は辞めるぞ?」
ワオ! と両手を上げて勇は口元を笑わせた。
勇の言う通り、唯は中学時代のように傍若無人では無かった。でも、落ち着いたかと言えば別の話だ。あの女の狡猾さは俺も身をもって知っているからな。
今は標的にかぶりつくまでの、準備期間としか思えない。いつか、確実に俺や誰かに噛み付くのは過去の経験からすると目に見えている。
色々と考え込んでいる俺に窓から外の景色を見る勇は言う。
「今後は修学旅行に文化祭もある。確実にクラスの人間との関わり合いは増えるよ。間違い無く、西村さんと関わる事になる。この調子で行くと、いつか壊れるよ?」
「あぁ、わかってるさ。そのうち全て掃除してやる……過去の全てをな」
イライラを消す為に境内をまた掃除する事にした。そして、勇はこう呟いていた。
「その時、いつまでグレイを保てるかな?」
※
もうすぐ、二泊三日の修学旅行がある。
その後は文化祭に向けての準備が始まる。
勇の言った通り、今後はクラスメイトや学年、学校全体での行事が増える。
十月と十一月はイベントの目白押しだ。
今の俺にとって西村唯は核弾頭だ。
一度、唯と二人で話そうとも思っている。
けど、唯が何をしようとしてるのかは不明だ。無闇に関わるのも、自ら地雷に踏み込むだけとも思ってしまう。なら、今はそのままでいようと思いつつ、俺はマコトプールでバイトをしていた。
(ここで監視する集中力も切れるな。とりあえず、俺を慕って来てる人もいるから、シャキッとしなきゃ!)
愛想良く振る舞い、あくまでグレイの自分を演じている。ここは学校ではないし、ある程度の自由がある。この無を感じる水の前ではリラックスして望まないとダメだ。
「あの~、このプールってタトゥー有りですか?」
「いや、タトゥーは禁止になりますね。女性の方なら上手く水着で隠れていれば……!」
そのタトゥーの件を訪ねて来た女は、西村唯だった。流石の俺も、一度ここで出会ってるけどそれから来なかったから油断していた。唯は赤のビキニ姿でアイドルのような見た目だし、明らかに目立っている。下着姿でベッドに入って、ブラのホックを外そうとした嫌な思い出を思い出して反応してしまう。
「……何だよ唯? 俺はバイト中だから長話は出来ないぞ?」
「ねぇ、私の水着姿どう? あの時出来なかったのを後悔してる?」
「知らん。俺は仕事中だ。遊びに来たなら一人で遊べ」
「つれないね。じゃあ、私のタトゥー見てよ? 総司の名前を刻んだんだよ?」
「はぁ!?」
胸元の水着を少しズラしている。
この女はどこまでマジなんだ?
(コイツ、本当に俺の名前のタトゥーを入れたのか?)
完全に視線を唯の胸元に奪われていた。
何もかもを忘れて、その白い胸だけを見ていた。ゆっくりと胸の膨らみが見えて行く……。
「あう?」
チョン、と股間をタッチされた。
「フフッ、後悔してるね」
どうやら、からかわれていたようだ。
タトゥーが無くて少し安心した。
「ここに来る時、併設されてるジムでトレーニングをしている男女見かけたけど、あの男女は筋肉マンにでもなるつもり?」
「風祭は風紀委員だし、鍛えるのが趣味なんだよ。男嫌いを治す効果も狙っているようだ」
「ふーん。つまんない女。やっぱりつまんない。で、総司はこのままプール関係のインストラクターにでもなるの?」
「さぁな。水の中は無になり落ち着けるから、このバイトをしている。先の事はわからないさ」
「確かに、グレイなんて中途半端を演じてる総司じゃそうでしょうね」
この事に反論はしない。
この女にいちいち反論していると、キリがない。こっちから話題を振って、早くいなくなってもらおう。
「お前はプール関係の仕事にでも興味あるのか?」
「プールの経営も、悪くないかもね」
「なら、社長になるのか?」
「私は全ての人間の上にいる存在よ」
腰に手を当てる唯は、俺を見下すように全身の色気を全開にして言った。
「権力、才能、名誉。この三つの神器があれば人などゴミ同然よ。私はこの三つを全て手に入れる。私が私である為に」
「……」
「まぁ、隣のジムで鍛える男女には無い神器ね。誠高校でそれを秘めてるのは……」
「……秘めてるのは?」
すると、唯は遠い方向を見て叫んでいた。
「東堂さーん!」
「東堂さん?」
本当にスクール水着を着た東堂さんが現れた。行きます! と手を上げると泳いでこっちに向かって来てる。
「お前は東堂さんと遊ぶまでの仲なのか? 東堂さんは人は良いが、友人という友人はいないタイプだ」
「あら、詳しいのね。東堂さんは甘い物で釣ったのよ。あの女の奥を知るには、もっと仲良くならないとね」
「あの女の奥? お前一体何を……」
「彼女の青眼って人を観察してその人を言い当てる事でしょ? つまり、ただの監視からの妄想。なら、それを私が彼女に仕掛けたら面白くない?」
「お前……東堂さんに何をしたい?」
「奥を知りたいだけ。ほら、もう到着するわ。焦った顔してると怪しまれるわよ」
東堂さんはマコトプールにはたまに来るから焦りはしない。けど、唯が何か企んでいるなら別だ。
「東堂さんの趣味は食べ歩きと、面白い事探しだよね。じゃあ、みんなで楽しい事しようよ」
「俺は仕事中だぞ?」
「なら、東堂さんと二人で遊ぶからいいよ。到着だね東堂さん」
「うん、無事到着……あ、バイト中ゴメンね赤井君」
頷いてはいるが仕事中なので、これ以上は無駄話は出来ない。東堂さんが来て助かったかも知れない。
「あぁ、そうだ赤井君。私ナイトプールのチケット貰ったんだけど、今度みんなで行かない?」
「ナ、ナイトプール?」
そのチケットは、東堂さんの父親のチケットのようだ。だから、唯が裏で糸を引いてはいない。いちいち、唯が裏で何かしてると勘ぐってしまう自分が嫌になる。
(東堂さんの誘いは、東堂さんからによるもの。チケットも唯が裏で手を回した物じゃない。けど、本当に唯が東堂さんと仲良くなりたいのかは疑問だ。今後の事も考えると、俺も行かざるを得ないか……なら、俺も切り札を使おう。グレイを舐めるなよ)
そうして、隣の区の大型ナイトプールへ行く事になった。
俺はグレイ仲間の勇の寺で境内の掃き掃除のバイトをしてから、寺から近いアパートの一室に住む勇の部屋にいた。この半月あまりの誠高校での出来事を話している。茶菓子の饅頭をこれでもか! と食っては、お茶を飲む俺を見ている勇は長めの茶髪の髪を耳にかけ、
「だいぶお疲れのようだね総司。最近、女子達も西村さんに押され気味で、総司に話しかけられて無いと聞いたよ。余裕は無いかい?」
「当然だ。あの女は俺の元カノだぞ? しかも、俺の昔の喧嘩番長キャラを知ってる。人をからかうのが好きなだけの女なんだよアイツは」
「僕は西村さんはいいと思うけど? 少しトゲがあるけど、そこが魅力的でもある」
「お前は俺の中学時代を知らないから……」
「西村唯は傍若無人のオテンバ娘。そして、総司と因縁のある元カノ。総司が僕と同じグレイというキャラ選択をした原因。今は、何故か落ち着いていてそこまで傍若無人ではない女」
「勇、ふざけてると寺の掃除は辞めるぞ?」
ワオ! と両手を上げて勇は口元を笑わせた。
勇の言う通り、唯は中学時代のように傍若無人では無かった。でも、落ち着いたかと言えば別の話だ。あの女の狡猾さは俺も身をもって知っているからな。
今は標的にかぶりつくまでの、準備期間としか思えない。いつか、確実に俺や誰かに噛み付くのは過去の経験からすると目に見えている。
色々と考え込んでいる俺に窓から外の景色を見る勇は言う。
「今後は修学旅行に文化祭もある。確実にクラスの人間との関わり合いは増えるよ。間違い無く、西村さんと関わる事になる。この調子で行くと、いつか壊れるよ?」
「あぁ、わかってるさ。そのうち全て掃除してやる……過去の全てをな」
イライラを消す為に境内をまた掃除する事にした。そして、勇はこう呟いていた。
「その時、いつまでグレイを保てるかな?」
※
もうすぐ、二泊三日の修学旅行がある。
その後は文化祭に向けての準備が始まる。
勇の言った通り、今後はクラスメイトや学年、学校全体での行事が増える。
十月と十一月はイベントの目白押しだ。
今の俺にとって西村唯は核弾頭だ。
一度、唯と二人で話そうとも思っている。
けど、唯が何をしようとしてるのかは不明だ。無闇に関わるのも、自ら地雷に踏み込むだけとも思ってしまう。なら、今はそのままでいようと思いつつ、俺はマコトプールでバイトをしていた。
(ここで監視する集中力も切れるな。とりあえず、俺を慕って来てる人もいるから、シャキッとしなきゃ!)
愛想良く振る舞い、あくまでグレイの自分を演じている。ここは学校ではないし、ある程度の自由がある。この無を感じる水の前ではリラックスして望まないとダメだ。
「あの~、このプールってタトゥー有りですか?」
「いや、タトゥーは禁止になりますね。女性の方なら上手く水着で隠れていれば……!」
そのタトゥーの件を訪ねて来た女は、西村唯だった。流石の俺も、一度ここで出会ってるけどそれから来なかったから油断していた。唯は赤のビキニ姿でアイドルのような見た目だし、明らかに目立っている。下着姿でベッドに入って、ブラのホックを外そうとした嫌な思い出を思い出して反応してしまう。
「……何だよ唯? 俺はバイト中だから長話は出来ないぞ?」
「ねぇ、私の水着姿どう? あの時出来なかったのを後悔してる?」
「知らん。俺は仕事中だ。遊びに来たなら一人で遊べ」
「つれないね。じゃあ、私のタトゥー見てよ? 総司の名前を刻んだんだよ?」
「はぁ!?」
胸元の水着を少しズラしている。
この女はどこまでマジなんだ?
(コイツ、本当に俺の名前のタトゥーを入れたのか?)
完全に視線を唯の胸元に奪われていた。
何もかもを忘れて、その白い胸だけを見ていた。ゆっくりと胸の膨らみが見えて行く……。
「あう?」
チョン、と股間をタッチされた。
「フフッ、後悔してるね」
どうやら、からかわれていたようだ。
タトゥーが無くて少し安心した。
「ここに来る時、併設されてるジムでトレーニングをしている男女見かけたけど、あの男女は筋肉マンにでもなるつもり?」
「風祭は風紀委員だし、鍛えるのが趣味なんだよ。男嫌いを治す効果も狙っているようだ」
「ふーん。つまんない女。やっぱりつまんない。で、総司はこのままプール関係のインストラクターにでもなるの?」
「さぁな。水の中は無になり落ち着けるから、このバイトをしている。先の事はわからないさ」
「確かに、グレイなんて中途半端を演じてる総司じゃそうでしょうね」
この事に反論はしない。
この女にいちいち反論していると、キリがない。こっちから話題を振って、早くいなくなってもらおう。
「お前はプール関係の仕事にでも興味あるのか?」
「プールの経営も、悪くないかもね」
「なら、社長になるのか?」
「私は全ての人間の上にいる存在よ」
腰に手を当てる唯は、俺を見下すように全身の色気を全開にして言った。
「権力、才能、名誉。この三つの神器があれば人などゴミ同然よ。私はこの三つを全て手に入れる。私が私である為に」
「……」
「まぁ、隣のジムで鍛える男女には無い神器ね。誠高校でそれを秘めてるのは……」
「……秘めてるのは?」
すると、唯は遠い方向を見て叫んでいた。
「東堂さーん!」
「東堂さん?」
本当にスクール水着を着た東堂さんが現れた。行きます! と手を上げると泳いでこっちに向かって来てる。
「お前は東堂さんと遊ぶまでの仲なのか? 東堂さんは人は良いが、友人という友人はいないタイプだ」
「あら、詳しいのね。東堂さんは甘い物で釣ったのよ。あの女の奥を知るには、もっと仲良くならないとね」
「あの女の奥? お前一体何を……」
「彼女の青眼って人を観察してその人を言い当てる事でしょ? つまり、ただの監視からの妄想。なら、それを私が彼女に仕掛けたら面白くない?」
「お前……東堂さんに何をしたい?」
「奥を知りたいだけ。ほら、もう到着するわ。焦った顔してると怪しまれるわよ」
東堂さんはマコトプールにはたまに来るから焦りはしない。けど、唯が何か企んでいるなら別だ。
「東堂さんの趣味は食べ歩きと、面白い事探しだよね。じゃあ、みんなで楽しい事しようよ」
「俺は仕事中だぞ?」
「なら、東堂さんと二人で遊ぶからいいよ。到着だね東堂さん」
「うん、無事到着……あ、バイト中ゴメンね赤井君」
頷いてはいるが仕事中なので、これ以上は無駄話は出来ない。東堂さんが来て助かったかも知れない。
「あぁ、そうだ赤井君。私ナイトプールのチケット貰ったんだけど、今度みんなで行かない?」
「ナ、ナイトプール?」
そのチケットは、東堂さんの父親のチケットのようだ。だから、唯が裏で糸を引いてはいない。いちいち、唯が裏で何かしてると勘ぐってしまう自分が嫌になる。
(東堂さんの誘いは、東堂さんからによるもの。チケットも唯が裏で手を回した物じゃない。けど、本当に唯が東堂さんと仲良くなりたいのかは疑問だ。今後の事も考えると、俺も行かざるを得ないか……なら、俺も切り札を使おう。グレイを舐めるなよ)
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