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第二夜
年代記『五公国記 盆地の王と獅子の歌姫』
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ヴォルガンの前にだらしなく派手な柄の羽織を着た男が五人立っている。どの顔もまだ若さが残っていた。どの男も腹回りが立派にせり出している。一歩前に進みでている紺色の羽織と髭を整えた黒髪の大男が声を出した。
「あんたがノア一家のエルヴィさん?」
軽薄な語り口調で自信がみなぎっている。どの男も鍛えているような雰囲気はない。背も高いが腹も出て腕っぷしは良さそうであった。常に威嚇したような立ち振る舞いを全員がしているが、声をかけてきた男だけは少し落ち着きがある。いかつい風貌ではあったがこざっぱりして、愛嬌のある笑顔をみせていた。
「あんたがタナか?」
取り巻きたちが揃って小馬鹿にしたような笑みを浮かべている。タナは作ったような笑顔のまま頷いた。
「イルノの兄貴に仕事は聞いてるな?」
「あぁでも具体的に何をすればいいかまでは聞いてないっすね。やくざ者と喧嘩するのは知ってますが」
ヴォルガンは机の上に麻袋を二つ置く。中は麻脂と例の赤い結晶であった。麻袋を広げたタナが楽し気に口笛を吹いた。
「こりゃまた上物ですね」
「それを売りさばくのが大きな目的だ。上りはそっちが一割」
「悪くないね。この赤いのはなんで?」
「精力剤らしい。こいつはパリスの遊女たちを中心に頼む。こっちは貴重だがある程度広まったら旦那衆にも売るように仕向ける」
「精力剤ねぇ。効くんですか?」
「ジロンやローハンではよく使われてるらしいな。動悸がはやくなるらしいがな」
タナは比較的大きめの精力剤を摘まみ、まじまじと眺めている。微かな薬草の匂いが広がりタナは顔をしかめた。あまり好みの匂いではなかったようだ。
タナは精力剤を麻袋に戻す。二つの袋を後ろに控えた男が抱え上げた。
「こっちはわかりやした。ほんで本題のほうはどうなんで?」
「相手はオニタ一家とローハンから来てるダルダ一家だ。下調べは?」
「どちらも一通りは、ローハンから来たやつら相当ですね」
「どっちも遠慮はいらないからな。ケツはノア一家が持つ。存分にやってくれ」
タナの取り巻きたちが色めき立った。喧嘩をこれほど大っぴらに依頼してくるのも珍しい、おまけに麻脂の取り分も随分と良かった。気前のいい客は大歓迎であった。
「殺してもかまわないんで?」
「ああ、かまわない。ただパリスの市民には手を出すなよ」
「面倒になるってことですか?」
「流石にな。薬に手を出してくるようなのがいれば売っちまってかまわないが、喧嘩を吹っ掛けるようなことはするなよ。パリスの通行書を取り上げられちまったら元も子もないからな」
ヴォルガンはそういうと人数分の手形を渡す。タナはそれを受け取ると懐にしまった。手形だけでは入ることはできても商売は出来ない。そこはタナたちの腕次第である。
「パリスの中にゃお前らの寝泊まりする場所はないからな。そこだけは気を付けろ」
「門締まる前に出ろってことですね。ノア一家で面倒はみちゃくれないんで?」
ヴォルガンはわざと疲れたような顔を作る。
「親父は乗り気じゃねーのさ。イルノの兄貴はパリスのために裏切りもんのオニタや他所者を追い出したいんだが、親父が芋引きそうでな。これだけ言えば、お前らでも察しが付くだろ?」
「引けないようにお膳立てするんですね?」
タナは屈託なく笑う。取り巻きたちに比べるといやらしいところがない。ヴォルガンは不機嫌そうに頷いた。ノア一家にすれば、タナ達はいくらでも変えの利く使い捨ての道具にしか見ていないであろう。ヴォルガンは自分自身がそうであるだけに冷静に見れている。自意識過剰で怖いものがないこの愚かな若者たちがどうなるかまで、ヴォルガンは気にかけている余裕はなかった。明日は自分が使い捨てにされるのである。
「しっかり稼ぐこったな。今パリスは宗主様の具合がよくなくて市民の目が下層まで届かない。商売するにはいい頃合いだ。何かあればパリスの中でこっちの小間使いにつなげ。あとはおたくらの器量次第だ」
タナはそう告げると廃墟から出ていく。残された男たちは麻袋を担ぎパリスのほうへと歩み出した。
タナ達ノア一家が雇った愚連隊たちは、パリスの下層で派手にやらかすことになり半月もせぬうちに下層民からしっかりと嫌われた。片端から揉め事を起こしオニタ一家、ダルダ一家だけでなく娼館や一部の市民にまで手を出したのである。やるなと言われてもそれを聞くほど自制など出来るような男たちではなかったのである。
結果としてダルダ一家の喧嘩自慢共との間に剣呑なものが生まれることとなったのである。
夏の終わりのウル・アリーシャ高地は空気が驚くほど澄んでいる。星々は零れ落ちそうなほどきらめき。赤や橙のガス状の星の川が夜空を彩っている。
宗主テリデスが倒れ、市民の目が下層に向けられなくなったことが理由なのか下層では急激に治安が悪くなっているようであった。ノア一家とダルダ一家の抗争は目に見えて激しくなり。本来ノア一家の身内でもないようなどこの馬ともわからない余所者がノア一家の看板で堅気からアコギな取り立てをし始めている。ダルダ一家からも同じようにみかじめを求められる堅気たちは、やくざ者たちの意地の突っ張り合いに辟易していた。
パリスの治安が戻らなかった理由はもう一つあった。宗主テリデス・セリウィスが倒れたのを見計らったかのようにジロン国境が騒がしくなったのであった。鉱山都市モサ周辺でジロンの正規軍ではなかったが、その息がかかった傭兵崩れの野盗が活動を激しくしていたのである。モサ周辺の師団は身動きが取れなくなり。北の新兵の一部まで実戦に投入される始末になっていた。
モッサリアに配備されていたトーメスの部隊も帰還することが出来なくなり、北の新兵を訓練していたダルダン・メルシゴナもまたモサ方面へと動いたため。二人の重要人物が半年もパリスに戻ることがかなわなかったのである。
オニタ一家もダルダ一家もかなりの被害が出始めている。娼館や市場に出る若い者が殆どであったが、やはり目の敵のように襲われているのであった。
チョルノが疲れたようにガレもとに荷車を運んできた。荷車からは足が見えている。
「頭、これで五人目です」
「堅気ばっかり狙いやがって…いけすかねぇな」
荷車に乗せられた死体それはダルダ一家にみかじめを払っている屋台の若い店主であった。やくざ者ではなく商売をしていくうえでオニタ一家やダルダ一家とつながった小さな商売人を襲っているのである。みかじめを納めても商売どころか命まで取られてしまっては元も子もない。汚いやり方ではあったが確実にダルダ一家の信用は落ちてきていた。
「チョルノ、相手は見当ついてんだろ?」
「はい。ディンの野郎を片付けた後から入ってきたノア一家のチンピラどもです」
屋台の店主にチョルノは随分と世話を焼いたし世話を焼かれた。当初は余所者をあまり歓迎してはいなかったが、時間をかけて心を通わせた間柄だったのである。チョルノの顔にはありありと怒りが浮き出ている。
「居場所はつかんでんのか?」
「それが昼間はパリスにいるみたいなんですが、夜になると外にでてるようで」
ガレはチョルノの話に少し苛立った。流石に白昼堂々ことを起こすわけにもいかない。いくらパリス市民の目が緩んでいるとはいえ昼間の市場で乱闘騒ぎなど起こせば当然パリスからの制裁がある。相手はそのことも読んだうえでの動きであった。
慎重に相手を選び複数人で襲っているところも小賢しさを表している。
「目立ってんのはタナって野郎の手下ですが、肝心のタナはどこにいるのか見当もつきません」
報告するチョルノにガレは小さく頷いた。ノア一家の手助けが入ったあたりから麻脂の動きが活発になっている。これほど巧妙にかつ迅速な動きをしていると、タナだけではなく他に絵を描いている者がいるとガレは踏んでいた。
「ノアのやつらの動きは?調べは付いてんのか?」
チョルノはこういう働きはあまり得意ではない。むしろズダのほうが情報はもってそうだが、最近ズダは顔をだしてこいなかった。
「何人かチンピラの小僧を締め上げたんですが、タナの仲間ははっぱりエルヴィの命令で動いてるらしいです」
「ディンの代わりってことか?」
チョルノは申し訳なさそうな顔をしている。ノア一家のチンピラを仕切っているのが同じチンピラのエルヴィであるということはどこから聞いても入ってきている話であった。
ガレはどうにも引っかかるところがあったが、やはりエルヴィを探すしか手がないようであった。
「エルヴィの居場所は見当ついてんのか?」
「…それがカシラ。どうやらパリスから外には出てなさそうなんで」
「どういこった?」
「あいつの実家はザウストラって氏族の下手間やってる染物職人の家なんです。その家ってのがパリス市民の商店街にあるんでさぁ」
「そりゃ…おいそれと入りこめねぇってことか」
「へぇ…ただ実家にいるかどうかもわかんねぇんですけど、ノア一家の何て言ったっけな汚ねぇ顔した小男あれ…」
「イルノか?」
「そう。イルノですあの野郎にどうやらヤキ入れられてから姿を見なくなってるそうなんですよ。いやどぶ板通りの飲み屋の女は最近姿みたっていってたんで、どっかに隠れてるのは間違いないんですけ」
チョルノの報告にガレは腕を組み考え込む。チョルノにしては良く調べてきているほうであった。何かを見落としているそうガレは感じているが、それが何かはっきりせず頭の中で靄を膨らませている。
奥歯にチシャの葉が挟まったような顔をしてガレはないかを考え込んでいる。
「チョルノ。エルヴィの身の回りは調べれるか?」
「あいつの身辺ですか?確か親と双子の弟がいるはずですが、堅気も堅気で半分パリス市民みたいなもんですよ。手を出したりしたらどうなるか分かったもんじゃないでっせ」
「いや。そっちじゃねぇな。女…そうだ女とかいないのか?」
チョルノは少しいやそうな顔をする。強面で喧嘩と強請をシノギにしているような不器用なチョルノが一番苦手な分野であろう。そのことがどうにも得心がいかなかった。
「調べはできますが、俺なんかがやってうまくいきますかね」
「いるかいないかくらいは何とかなるだろ。その辺のやつらを締め上げればいい」
「簡単に言いってくれますねカシラ…」
「やって損はねぇよ。下手打ってもケツ持ってやるから」
「へぇ。何とかやってみまさぁ。どうなっても知りませんよ」
チョルノの言い訳がましい話にガレは手をヒラヒラと返して遮った。チョルノは深いため息を吐くと部屋を後にする。タナの一味やエルヴィの所在よりも不幸な死に方をした屋台の店主を弔ってやらねばならなかったのである。
やり口が派手で汚くなってきたことに対してガレは苛立ってはいない。むしろこちらの土俵に向こうから上がってくるとは思っていなかったのである。
暴力に関してパリスのチンピラ共はあまりにもダルダ一家のことを知らな過ぎであった。ダルダ一家のやくざ者たちをそう易々と相手にできると考えていることが、そもそもの間違いなのである。どう追い詰めるかを試案しはじめたガレは、独り言をつぶやきながら土間の上を歩き始めた。
宗主テリデスの容態が安定したこともあり、パリスの街にいつもの落ち着きが戻ってきていた。治安はパリス市民の監視でようやく落ち着いてきている。タナの一味の狼藉も表立っては減ってきていたが、それ以上に麻脂の密売が盛んになってきていた。
噂の段階をとうに過ぎて麻脂の問題は下層全域に広がってきている。流石にここまで広まるとパリスが動かざる得ないまでになっていた。そんな中でもタナ一味は巧妙に麻脂を売りさばいている。
ジラはようやく麻脂の出所を突き止め、買い手としてノア一家を探ろうと売人に繋ぎをつけたのであった。薄暗いどぶ板通りの路地裏で待っていると、小汚い身なの若い小男が声をかけてくる。
「あんたかい?」
いきなり声を掛けられたがジラは一呼吸おいて後ろを振り返る。
「すまんな。いくらか用立ててくれるか?」
小男はあたりを見渡す。太陽が沈んではいたが闇に包まれているわけではない。大通りには通行人がひっきりなしに歩いている。
「最近商売がしにくくなっちまっててな。ここじゃ物は渡せねぇけどかまわないか?」
「どうすりゃいい?」
小男は右手をさしだした。
ジラは懐からパリス銀貨を一枚手渡す。汚い笑顔を作り小男は銀貨を受け取る。
「双角馬の刻だ。パリスの北にある廃墟そこに来な」
「おいおい。城門しまっちまうじゃねぇか」
「その辺は知らねぇな。俺らだってパリスのやつらに捕まったら首に縄がかけられちまう。お客人だって持ってるのがバレたら背中の皮どうなるかわかってるだろ?」
売るほうが罪は重く縛り首、買って使う側は棒打ち刑がパリスの法であった。ジラは黙って頷いた。
「10バレットでパリス銀貨1枚だ」
「かぁ!アコギだなぁ」
「そういうなよ。上物だからな。あとこれはどうだ?安くしとくぞ」
小男は赤い結晶を見せる。ジラはその艶のある塊をまじまじと見た。
「なんだこれ?」
「あっちのほうを強くする薬だ。体に悪いもんじゃねーよ」
「へーこんなもんも売ってんだな」
「一袋でパリス銀貨3枚だけどな」
「結構するんじゃねーか」
「ローハンに持ってきゃ一袋でローハン金貨で取引されてるよ。今需要が半端ないからな。こんな田舎で売ってるのが本当はおかしいのさ」
小男はそういうと赤い結晶を麻袋へしまってしまう。ジラの見た目が若くそれほど金を持っていなさそうだったので、精力剤など必要がなさそうと判断したのであった。
「じゃあな。双角馬の刻だぞ」
小男はジラから離れ路地をでていった、ジラは表情を消して小男の背中を見ていた。
パリスの明かりも喧騒もそこには届いていない。ジラは約束の時間に間に合うよう城門が閉じる前にパリスから出て、廃墟まで来ていた。いったん外に出てしまえばこの日はどこかで野宿ということになるであろう。元々荷運び徒歩であったダルダ一家のジラは野宿には慣れている。
待ち合わせた廃墟に近づくとすでに明かりがともっているのが見えていた。焚火を炊いているのである。こういった都市に住まない無法者たちはパリスだけでなくどこにでもいるものである。
ジラは一人焚火に近づく。人数は5人、3人はまだ少年でありもう二人は若いが随分と貫禄があった。近づく陰に男たちが一斉にジラのほうを向く。
一番体格がよく人懐こそうで爽やかな笑顔を焚火に照らした男が前にでてくる。
「あんたかい?」
「麻脂を売ってもらえるって聞いてね」
ジラが麻袋を掲げて見せる。体格の良い男タナはそれを見ると笑顔のまま頷いた。一番前にいる少年がジラから麻袋を取り上げると中身を確認した。
「タナさん確かにパリス金貨10枚ありやすね」
ジラ急に緊張を覚えた。まさかタナ本人がここにいるとは思いもよらなかったのである。ジラは自分の迂闊さを確認させられることをタナが言った。
「ダルダ一家のジラさんだね?わざわざ物を買いに来るとはどういう要件だい?」
ジラは自分が下手を打ったことを悟る。男たちは全員立ち上がり小刀を構える。しかしジラは幾つも修羅場を超えてきた男であった。
「お前がタナかい?」
「さぁねぇ。そいつを聞いてどうする?」
「麻脂なって売り捌いてる下衆をほっとくわけにはいかないからな」
あざけるような若い男たちの雰囲気が広がる。やくざ者が綺麗ごとを並べ立てることの滑稽さを小悪党にもなれず、その日暮らしで汚らしい仕事に手を染めているタナ達は心の底から笑っていた。
タナ達とダルダ一家には何も違いがないとタナ達は本気で考えている。金と女、誰かのためにと言いつつ他者を踏みつけ思い通りし、ならなければ暴力でかしずかせる。やっていることに変わりはないくせに耳が腐るような綺麗ごとを吐くジラにタナは心底気持ちの悪さを覚えていた。
タナの表情が消える。ジラは臆することなく睨んでいた。
「まぁ俺たちには関係ないな。好きなようにさせてもらうよ。ダルダ一家だろうと誰だろうと…」
タナの言葉が終わらないうちにジラの後頭部に凄まじい衝撃が走る。吐き気がするほどの激痛が後頭部から右側頭部にかけて通り抜けた。ジラの頭に生温い感触がしたたり落ちる。一瞬記憶と視界が飛び、目の前が赤くなっていた。眼球に流血が流れ込んでいるのを自覚するのに一瞬の間があった。
ジラは脳震盪を起こし自分が倒れるのを自覚した。その前にさらに二発、今度はジラも何が起きたのか理解し腕を頭の前に出す。拳にあたりジラの小指と薬指が折れる。ジラの頭に振り下ろされたのは、荷馬車の車輪に通す頑丈で目方のあるシャフトであった。
それえていない無精髭の男が目を血走らせてジラを殴りつける。腕が軋み首や背中を打ち据えられさらに数発頭を打たれるとジラは自分の頭蓋が砕ける音を聞いた。力なく倒れ込むと辺り一面に血があふれてくる。耳や口からも血が流れているのを確認すると、タナの子分が荒い息を整えながらジラの頭を蹴り上げる。
「ご苦労さん」
「案外簡単ですね。普段威張り散らしててもこんなもんですよ」
少年の一人がジラに近づく、死体を処理するために運ぼうと動いたのであった。血まみれのジラの身体がわずかに上下している。
「タナさんまだこいつ生きてますよ」
タナはそちらを見向きもしない。ジラの持ってきた麻袋を開けて中を確認している。シャフトを振り回していた男が答えた
「とどめさしとけ」
少年は心底いやそうに血まみれのジラを仰向けにした。頭が割れて少し変形していると気持ち悪そうにジラの首に手をかける。
「目が合いそうでいやだなぁ」
「目をつぶってやればいいだろう。どうせもう動きゃしねぇよ。耳と鼻から血が出てるだろ頭かち割れて脳ミソ潰れてんだ」
少年は言われた通り目を閉じ両手に力を籠めジラのの息の根を止めようとした。
ジラの目がカッと見開くと少年の首に手をかける。瞬間少年の脛骨があらぬほうに折れ曲がり、目と鼻から血を流す。ジラは首の折れた少年の顔を殴りつけて勢いよく起き上がった。
「このクソが!」
頭や耳、鼻からも血が止まらず、上半身を真っ赤に染めてジラはタナ達のほうに仁王立ちになりゆっくりとしかしふらつきながら進んでくる。
勢いに皆が飲まれる。一番近くにいた少年は身動きが取れずにいた。進行方向に立っていた少年をジラは殴りつけ怯んだところを捕まえると首に腕を回しあっさりと首をへし折る。息を荒くしながらもタナに向かっていく。
一瞬気圧されたタナであったが、少年たちが殺されたのを見て頭に血が上り、恐怖をぬぐいながらジラに向かう。
「てめぇ! 死んどけや!」
ふらつくジラのコメカミにタナの拳が降り抜かれる。元々割れていたであろうジラの頭蓋は耐えれなかったのであろう喜色の悪い音を立てた。腰を落とし膝をつくジラにタナはもう一発殴りつけた。それでも立ち上がろうとするジラを数人がかりで殴り始める。
反撃も何もできないままジラはゆっくりと前のめりに倒れ込んだ。すでにその目は光を失っている。
「死にかけてんのに二人も道連れにしやがった…」
動かなくなったジラを恐ろし気に見下ろしタナの子分が呟く。全員が冷たい汗を全身にかいていた。タナは血なまぐさい空気の中深く息を吐き出した。
「ローハンの阿呆どもにこの汚いのを届けとけ」
そう吐き捨てると、ジラと取り巻きはさっさとその場所から離れていった。残された小間使いの少年たちはジラの死体を荷車にのせパリスの方角に向かっていった。
ジラの死体をシーラとロマが見下ろしている。チョルノはいかつい顔に涙を浮かべ固まった頭部の血のりを丁寧に拭きガレはしゃがんで指を組んで弔いの言葉をつぶやいている。話を聞きつけたオルバ・フナミが神妙な顔も持ちでロマたちの隣に立った。
命のやり取りは日常茶飯事である。ローハンでは何人も身内を殺されてきていたが喪失感はいつも変わらない。ましてやジラはシーラやロマにとっても分家とは言え兄貴分と慕っていたこともあった。二人の顔は冷え切っていたが、それだけに内側にある憤怒のほどが伝わってくる。
「ジラさんが…まさか」
オルバの言葉をロマとシーラは黙っていた。ナガ一家の柱で若い衆の頭でもあったジラを失ったことは、ナガ一家の復讐心に火をつけていることであろう。しかしジラ以下の者たちはまだまだ歳が若く渡世のこともおぼつかない。戦力としては期待できなくなっている。
オルバは黙って語らないロマとシーラではなくガレに声をかける。
「どうしてジラさん一人で外になんかでちまったんだ」
「麻脂調べてたらしい。ナガのボンクラどもには黙って一人でやってたみたいです」
「叔父貴は?」
「ダルダのおやっさんから伝えてもらってます。ナガ一家はもうやる気になっちまってますが…」
「情報がねぇのか」
「はい。ただジラさんの動きからパリスの外で売り買いしてるみてぇです。あとうちのズダが調べてんのが揃えば絵を描いてるやつらのこともわかりそうですが」
オルバの表情が恐ろしいほどに冷たくなった。目元がスッと細くなる。
「タナって小僧のことは?」
「最近はパリスに入ってねぇらしいです」
「ガレ、ちょっと付き合え。ロマさんもシーラさんも来てもらえますか?」
ようやくシーラが言葉を発した。
「いまさら何を俺らにしらせるんだ?ええ?」
「わかりました。ではガレ借りてきますよ」
二人の怒りの矛先がオルバに向く前退散したほうがよいと判断し、ガレを連れ立っていく。こういう時にも無理に冷静さを保たなければならないところがガレやオルバの気苦労になっている。二人の怒りと変わらぬほどオルバもタナ達のやりようには我慢ならなかった。
「阿呆を何人か捕まえてある。女のいる店で派手に飲んでやがってな」
タナの一味は基本的に表に出ていない。繁華街の喧騒に紛れて集団で襲っているのであろう。しかし若さからが我慢が出来なくなった一部のやつらが武勇伝を騙っていたようである。
「それは…叔父貴」
「ナガの親父にはまだ伝えてないがな。今あそこの若いやつらだとやりすぎちまう」
「そうですね…わかりました」
「女に麻脂と赤い薬を売ってやがったからな間違いなくタナってチンピラと繋がってるはずだ。うちのやつらがちょっと可愛がってやったらベラベラ話してくれてる。ロマやシーラの兄貴を動かすのはその後でもいいだろ。ズダのおっさんは?」
「はい、今おやっさんのとこにいるはずです。別件を調べてたみたいですが…」
オルバが恐ろしい笑みを浮かべた。
「もうすぐ終わるだろ。頭の回りがよくねぇみたいだからなノア一家のチンピラ共は」
「ただ裏で絵をかいてるはずのエルヴィの居所がまだ…」
「そっちはもう手を回してある」
オルバはタナのパリス入りあとからすでに探索をさせていた。エルヴィの名前は最初からわかっていたことで、目くらましにもなっていない。しかしエルヴィがパリス市民と直接やり取りしている半市民だったことが、手を出せずにいた理由である。
下層のパリス市民とのつながりが深い住人が多い地域や市場、どぶ板通りのような公の場所では無理だがそうではない貧困街や城壁の外であればいかようにもできる。
「女だ。エルヴィには懇意にしてた女がいてな。今はもう切れてるらしいが、そいつを出汁に釣り出してみる」
ガレは膝を平手で叩く。ガレが考えつきチョルノに調べさせていたことなど、とうにこの切れ者は調べがついていた。
「まずは麻脂売ってるジャリどもからだ。今エルヴィは実家からも追い出されちまっていろんなところ転々としてるって話だからな。こっちはもうちょっと時間がかかる」
「わかりやした」
「兄さん方にはもう少し辛抱してもらえ。パリスに目を付けられると面倒だ」
ガレにとっては憤懣の行き場がなくなった獣を抑えるほうが骨が折れそうで、少し疲れの色が見えていた。
「あとなエルヴィを使ってるノア一家だが、もう統制は全く取れてないな。親の目が届かねぇとこで好き勝手やってやがるから今みたいなジャリどもがのさばってるみたいだ」
「そりゃ半分うちの責任ですね」
「そうだ。ダルダ一家の責任だな。だから仕切ってるお前が一番責任が重いぞ。わかってんな」
「なんとしてでもあの下衆どもを始末しますよ」
オルバはガレの肩を激しく叩いた。
復讐心に燃え上ったダルダ一家の男たちは、ジラの弔いをすますと静かにタナ一味を追いかけるためパリスの夕闇に向かっていく。感傷に浸るのは復讐を果たし、ローハンのやくざ者たちの意地と恐ろしさを分からせてやってからのことであった。
「あんたがノア一家のエルヴィさん?」
軽薄な語り口調で自信がみなぎっている。どの男も鍛えているような雰囲気はない。背も高いが腹も出て腕っぷしは良さそうであった。常に威嚇したような立ち振る舞いを全員がしているが、声をかけてきた男だけは少し落ち着きがある。いかつい風貌ではあったがこざっぱりして、愛嬌のある笑顔をみせていた。
「あんたがタナか?」
取り巻きたちが揃って小馬鹿にしたような笑みを浮かべている。タナは作ったような笑顔のまま頷いた。
「イルノの兄貴に仕事は聞いてるな?」
「あぁでも具体的に何をすればいいかまでは聞いてないっすね。やくざ者と喧嘩するのは知ってますが」
ヴォルガンは机の上に麻袋を二つ置く。中は麻脂と例の赤い結晶であった。麻袋を広げたタナが楽し気に口笛を吹いた。
「こりゃまた上物ですね」
「それを売りさばくのが大きな目的だ。上りはそっちが一割」
「悪くないね。この赤いのはなんで?」
「精力剤らしい。こいつはパリスの遊女たちを中心に頼む。こっちは貴重だがある程度広まったら旦那衆にも売るように仕向ける」
「精力剤ねぇ。効くんですか?」
「ジロンやローハンではよく使われてるらしいな。動悸がはやくなるらしいがな」
タナは比較的大きめの精力剤を摘まみ、まじまじと眺めている。微かな薬草の匂いが広がりタナは顔をしかめた。あまり好みの匂いではなかったようだ。
タナは精力剤を麻袋に戻す。二つの袋を後ろに控えた男が抱え上げた。
「こっちはわかりやした。ほんで本題のほうはどうなんで?」
「相手はオニタ一家とローハンから来てるダルダ一家だ。下調べは?」
「どちらも一通りは、ローハンから来たやつら相当ですね」
「どっちも遠慮はいらないからな。ケツはノア一家が持つ。存分にやってくれ」
タナの取り巻きたちが色めき立った。喧嘩をこれほど大っぴらに依頼してくるのも珍しい、おまけに麻脂の取り分も随分と良かった。気前のいい客は大歓迎であった。
「殺してもかまわないんで?」
「ああ、かまわない。ただパリスの市民には手を出すなよ」
「面倒になるってことですか?」
「流石にな。薬に手を出してくるようなのがいれば売っちまってかまわないが、喧嘩を吹っ掛けるようなことはするなよ。パリスの通行書を取り上げられちまったら元も子もないからな」
ヴォルガンはそういうと人数分の手形を渡す。タナはそれを受け取ると懐にしまった。手形だけでは入ることはできても商売は出来ない。そこはタナたちの腕次第である。
「パリスの中にゃお前らの寝泊まりする場所はないからな。そこだけは気を付けろ」
「門締まる前に出ろってことですね。ノア一家で面倒はみちゃくれないんで?」
ヴォルガンはわざと疲れたような顔を作る。
「親父は乗り気じゃねーのさ。イルノの兄貴はパリスのために裏切りもんのオニタや他所者を追い出したいんだが、親父が芋引きそうでな。これだけ言えば、お前らでも察しが付くだろ?」
「引けないようにお膳立てするんですね?」
タナは屈託なく笑う。取り巻きたちに比べるといやらしいところがない。ヴォルガンは不機嫌そうに頷いた。ノア一家にすれば、タナ達はいくらでも変えの利く使い捨ての道具にしか見ていないであろう。ヴォルガンは自分自身がそうであるだけに冷静に見れている。自意識過剰で怖いものがないこの愚かな若者たちがどうなるかまで、ヴォルガンは気にかけている余裕はなかった。明日は自分が使い捨てにされるのである。
「しっかり稼ぐこったな。今パリスは宗主様の具合がよくなくて市民の目が下層まで届かない。商売するにはいい頃合いだ。何かあればパリスの中でこっちの小間使いにつなげ。あとはおたくらの器量次第だ」
タナはそう告げると廃墟から出ていく。残された男たちは麻袋を担ぎパリスのほうへと歩み出した。
タナ達ノア一家が雇った愚連隊たちは、パリスの下層で派手にやらかすことになり半月もせぬうちに下層民からしっかりと嫌われた。片端から揉め事を起こしオニタ一家、ダルダ一家だけでなく娼館や一部の市民にまで手を出したのである。やるなと言われてもそれを聞くほど自制など出来るような男たちではなかったのである。
結果としてダルダ一家の喧嘩自慢共との間に剣呑なものが生まれることとなったのである。
夏の終わりのウル・アリーシャ高地は空気が驚くほど澄んでいる。星々は零れ落ちそうなほどきらめき。赤や橙のガス状の星の川が夜空を彩っている。
宗主テリデスが倒れ、市民の目が下層に向けられなくなったことが理由なのか下層では急激に治安が悪くなっているようであった。ノア一家とダルダ一家の抗争は目に見えて激しくなり。本来ノア一家の身内でもないようなどこの馬ともわからない余所者がノア一家の看板で堅気からアコギな取り立てをし始めている。ダルダ一家からも同じようにみかじめを求められる堅気たちは、やくざ者たちの意地の突っ張り合いに辟易していた。
パリスの治安が戻らなかった理由はもう一つあった。宗主テリデス・セリウィスが倒れたのを見計らったかのようにジロン国境が騒がしくなったのであった。鉱山都市モサ周辺でジロンの正規軍ではなかったが、その息がかかった傭兵崩れの野盗が活動を激しくしていたのである。モサ周辺の師団は身動きが取れなくなり。北の新兵の一部まで実戦に投入される始末になっていた。
モッサリアに配備されていたトーメスの部隊も帰還することが出来なくなり、北の新兵を訓練していたダルダン・メルシゴナもまたモサ方面へと動いたため。二人の重要人物が半年もパリスに戻ることがかなわなかったのである。
オニタ一家もダルダ一家もかなりの被害が出始めている。娼館や市場に出る若い者が殆どであったが、やはり目の敵のように襲われているのであった。
チョルノが疲れたようにガレもとに荷車を運んできた。荷車からは足が見えている。
「頭、これで五人目です」
「堅気ばっかり狙いやがって…いけすかねぇな」
荷車に乗せられた死体それはダルダ一家にみかじめを払っている屋台の若い店主であった。やくざ者ではなく商売をしていくうえでオニタ一家やダルダ一家とつながった小さな商売人を襲っているのである。みかじめを納めても商売どころか命まで取られてしまっては元も子もない。汚いやり方ではあったが確実にダルダ一家の信用は落ちてきていた。
「チョルノ、相手は見当ついてんだろ?」
「はい。ディンの野郎を片付けた後から入ってきたノア一家のチンピラどもです」
屋台の店主にチョルノは随分と世話を焼いたし世話を焼かれた。当初は余所者をあまり歓迎してはいなかったが、時間をかけて心を通わせた間柄だったのである。チョルノの顔にはありありと怒りが浮き出ている。
「居場所はつかんでんのか?」
「それが昼間はパリスにいるみたいなんですが、夜になると外にでてるようで」
ガレはチョルノの話に少し苛立った。流石に白昼堂々ことを起こすわけにもいかない。いくらパリス市民の目が緩んでいるとはいえ昼間の市場で乱闘騒ぎなど起こせば当然パリスからの制裁がある。相手はそのことも読んだうえでの動きであった。
慎重に相手を選び複数人で襲っているところも小賢しさを表している。
「目立ってんのはタナって野郎の手下ですが、肝心のタナはどこにいるのか見当もつきません」
報告するチョルノにガレは小さく頷いた。ノア一家の手助けが入ったあたりから麻脂の動きが活発になっている。これほど巧妙にかつ迅速な動きをしていると、タナだけではなく他に絵を描いている者がいるとガレは踏んでいた。
「ノアのやつらの動きは?調べは付いてんのか?」
チョルノはこういう働きはあまり得意ではない。むしろズダのほうが情報はもってそうだが、最近ズダは顔をだしてこいなかった。
「何人かチンピラの小僧を締め上げたんですが、タナの仲間ははっぱりエルヴィの命令で動いてるらしいです」
「ディンの代わりってことか?」
チョルノは申し訳なさそうな顔をしている。ノア一家のチンピラを仕切っているのが同じチンピラのエルヴィであるということはどこから聞いても入ってきている話であった。
ガレはどうにも引っかかるところがあったが、やはりエルヴィを探すしか手がないようであった。
「エルヴィの居場所は見当ついてんのか?」
「…それがカシラ。どうやらパリスから外には出てなさそうなんで」
「どういこった?」
「あいつの実家はザウストラって氏族の下手間やってる染物職人の家なんです。その家ってのがパリス市民の商店街にあるんでさぁ」
「そりゃ…おいそれと入りこめねぇってことか」
「へぇ…ただ実家にいるかどうかもわかんねぇんですけど、ノア一家の何て言ったっけな汚ねぇ顔した小男あれ…」
「イルノか?」
「そう。イルノですあの野郎にどうやらヤキ入れられてから姿を見なくなってるそうなんですよ。いやどぶ板通りの飲み屋の女は最近姿みたっていってたんで、どっかに隠れてるのは間違いないんですけ」
チョルノの報告にガレは腕を組み考え込む。チョルノにしては良く調べてきているほうであった。何かを見落としているそうガレは感じているが、それが何かはっきりせず頭の中で靄を膨らませている。
奥歯にチシャの葉が挟まったような顔をしてガレはないかを考え込んでいる。
「チョルノ。エルヴィの身の回りは調べれるか?」
「あいつの身辺ですか?確か親と双子の弟がいるはずですが、堅気も堅気で半分パリス市民みたいなもんですよ。手を出したりしたらどうなるか分かったもんじゃないでっせ」
「いや。そっちじゃねぇな。女…そうだ女とかいないのか?」
チョルノは少しいやそうな顔をする。強面で喧嘩と強請をシノギにしているような不器用なチョルノが一番苦手な分野であろう。そのことがどうにも得心がいかなかった。
「調べはできますが、俺なんかがやってうまくいきますかね」
「いるかいないかくらいは何とかなるだろ。その辺のやつらを締め上げればいい」
「簡単に言いってくれますねカシラ…」
「やって損はねぇよ。下手打ってもケツ持ってやるから」
「へぇ。何とかやってみまさぁ。どうなっても知りませんよ」
チョルノの言い訳がましい話にガレは手をヒラヒラと返して遮った。チョルノは深いため息を吐くと部屋を後にする。タナの一味やエルヴィの所在よりも不幸な死に方をした屋台の店主を弔ってやらねばならなかったのである。
やり口が派手で汚くなってきたことに対してガレは苛立ってはいない。むしろこちらの土俵に向こうから上がってくるとは思っていなかったのである。
暴力に関してパリスのチンピラ共はあまりにもダルダ一家のことを知らな過ぎであった。ダルダ一家のやくざ者たちをそう易々と相手にできると考えていることが、そもそもの間違いなのである。どう追い詰めるかを試案しはじめたガレは、独り言をつぶやきながら土間の上を歩き始めた。
宗主テリデスの容態が安定したこともあり、パリスの街にいつもの落ち着きが戻ってきていた。治安はパリス市民の監視でようやく落ち着いてきている。タナの一味の狼藉も表立っては減ってきていたが、それ以上に麻脂の密売が盛んになってきていた。
噂の段階をとうに過ぎて麻脂の問題は下層全域に広がってきている。流石にここまで広まるとパリスが動かざる得ないまでになっていた。そんな中でもタナ一味は巧妙に麻脂を売りさばいている。
ジラはようやく麻脂の出所を突き止め、買い手としてノア一家を探ろうと売人に繋ぎをつけたのであった。薄暗いどぶ板通りの路地裏で待っていると、小汚い身なの若い小男が声をかけてくる。
「あんたかい?」
いきなり声を掛けられたがジラは一呼吸おいて後ろを振り返る。
「すまんな。いくらか用立ててくれるか?」
小男はあたりを見渡す。太陽が沈んではいたが闇に包まれているわけではない。大通りには通行人がひっきりなしに歩いている。
「最近商売がしにくくなっちまっててな。ここじゃ物は渡せねぇけどかまわないか?」
「どうすりゃいい?」
小男は右手をさしだした。
ジラは懐からパリス銀貨を一枚手渡す。汚い笑顔を作り小男は銀貨を受け取る。
「双角馬の刻だ。パリスの北にある廃墟そこに来な」
「おいおい。城門しまっちまうじゃねぇか」
「その辺は知らねぇな。俺らだってパリスのやつらに捕まったら首に縄がかけられちまう。お客人だって持ってるのがバレたら背中の皮どうなるかわかってるだろ?」
売るほうが罪は重く縛り首、買って使う側は棒打ち刑がパリスの法であった。ジラは黙って頷いた。
「10バレットでパリス銀貨1枚だ」
「かぁ!アコギだなぁ」
「そういうなよ。上物だからな。あとこれはどうだ?安くしとくぞ」
小男は赤い結晶を見せる。ジラはその艶のある塊をまじまじと見た。
「なんだこれ?」
「あっちのほうを強くする薬だ。体に悪いもんじゃねーよ」
「へーこんなもんも売ってんだな」
「一袋でパリス銀貨3枚だけどな」
「結構するんじゃねーか」
「ローハンに持ってきゃ一袋でローハン金貨で取引されてるよ。今需要が半端ないからな。こんな田舎で売ってるのが本当はおかしいのさ」
小男はそういうと赤い結晶を麻袋へしまってしまう。ジラの見た目が若くそれほど金を持っていなさそうだったので、精力剤など必要がなさそうと判断したのであった。
「じゃあな。双角馬の刻だぞ」
小男はジラから離れ路地をでていった、ジラは表情を消して小男の背中を見ていた。
パリスの明かりも喧騒もそこには届いていない。ジラは約束の時間に間に合うよう城門が閉じる前にパリスから出て、廃墟まで来ていた。いったん外に出てしまえばこの日はどこかで野宿ということになるであろう。元々荷運び徒歩であったダルダ一家のジラは野宿には慣れている。
待ち合わせた廃墟に近づくとすでに明かりがともっているのが見えていた。焚火を炊いているのである。こういった都市に住まない無法者たちはパリスだけでなくどこにでもいるものである。
ジラは一人焚火に近づく。人数は5人、3人はまだ少年でありもう二人は若いが随分と貫禄があった。近づく陰に男たちが一斉にジラのほうを向く。
一番体格がよく人懐こそうで爽やかな笑顔を焚火に照らした男が前にでてくる。
「あんたかい?」
「麻脂を売ってもらえるって聞いてね」
ジラが麻袋を掲げて見せる。体格の良い男タナはそれを見ると笑顔のまま頷いた。一番前にいる少年がジラから麻袋を取り上げると中身を確認した。
「タナさん確かにパリス金貨10枚ありやすね」
ジラ急に緊張を覚えた。まさかタナ本人がここにいるとは思いもよらなかったのである。ジラは自分の迂闊さを確認させられることをタナが言った。
「ダルダ一家のジラさんだね?わざわざ物を買いに来るとはどういう要件だい?」
ジラは自分が下手を打ったことを悟る。男たちは全員立ち上がり小刀を構える。しかしジラは幾つも修羅場を超えてきた男であった。
「お前がタナかい?」
「さぁねぇ。そいつを聞いてどうする?」
「麻脂なって売り捌いてる下衆をほっとくわけにはいかないからな」
あざけるような若い男たちの雰囲気が広がる。やくざ者が綺麗ごとを並べ立てることの滑稽さを小悪党にもなれず、その日暮らしで汚らしい仕事に手を染めているタナ達は心の底から笑っていた。
タナ達とダルダ一家には何も違いがないとタナ達は本気で考えている。金と女、誰かのためにと言いつつ他者を踏みつけ思い通りし、ならなければ暴力でかしずかせる。やっていることに変わりはないくせに耳が腐るような綺麗ごとを吐くジラにタナは心底気持ちの悪さを覚えていた。
タナの表情が消える。ジラは臆することなく睨んでいた。
「まぁ俺たちには関係ないな。好きなようにさせてもらうよ。ダルダ一家だろうと誰だろうと…」
タナの言葉が終わらないうちにジラの後頭部に凄まじい衝撃が走る。吐き気がするほどの激痛が後頭部から右側頭部にかけて通り抜けた。ジラの頭に生温い感触がしたたり落ちる。一瞬記憶と視界が飛び、目の前が赤くなっていた。眼球に流血が流れ込んでいるのを自覚するのに一瞬の間があった。
ジラは脳震盪を起こし自分が倒れるのを自覚した。その前にさらに二発、今度はジラも何が起きたのか理解し腕を頭の前に出す。拳にあたりジラの小指と薬指が折れる。ジラの頭に振り下ろされたのは、荷馬車の車輪に通す頑丈で目方のあるシャフトであった。
それえていない無精髭の男が目を血走らせてジラを殴りつける。腕が軋み首や背中を打ち据えられさらに数発頭を打たれるとジラは自分の頭蓋が砕ける音を聞いた。力なく倒れ込むと辺り一面に血があふれてくる。耳や口からも血が流れているのを確認すると、タナの子分が荒い息を整えながらジラの頭を蹴り上げる。
「ご苦労さん」
「案外簡単ですね。普段威張り散らしててもこんなもんですよ」
少年の一人がジラに近づく、死体を処理するために運ぼうと動いたのであった。血まみれのジラの身体がわずかに上下している。
「タナさんまだこいつ生きてますよ」
タナはそちらを見向きもしない。ジラの持ってきた麻袋を開けて中を確認している。シャフトを振り回していた男が答えた
「とどめさしとけ」
少年は心底いやそうに血まみれのジラを仰向けにした。頭が割れて少し変形していると気持ち悪そうにジラの首に手をかける。
「目が合いそうでいやだなぁ」
「目をつぶってやればいいだろう。どうせもう動きゃしねぇよ。耳と鼻から血が出てるだろ頭かち割れて脳ミソ潰れてんだ」
少年は言われた通り目を閉じ両手に力を籠めジラのの息の根を止めようとした。
ジラの目がカッと見開くと少年の首に手をかける。瞬間少年の脛骨があらぬほうに折れ曲がり、目と鼻から血を流す。ジラは首の折れた少年の顔を殴りつけて勢いよく起き上がった。
「このクソが!」
頭や耳、鼻からも血が止まらず、上半身を真っ赤に染めてジラはタナ達のほうに仁王立ちになりゆっくりとしかしふらつきながら進んでくる。
勢いに皆が飲まれる。一番近くにいた少年は身動きが取れずにいた。進行方向に立っていた少年をジラは殴りつけ怯んだところを捕まえると首に腕を回しあっさりと首をへし折る。息を荒くしながらもタナに向かっていく。
一瞬気圧されたタナであったが、少年たちが殺されたのを見て頭に血が上り、恐怖をぬぐいながらジラに向かう。
「てめぇ! 死んどけや!」
ふらつくジラのコメカミにタナの拳が降り抜かれる。元々割れていたであろうジラの頭蓋は耐えれなかったのであろう喜色の悪い音を立てた。腰を落とし膝をつくジラにタナはもう一発殴りつけた。それでも立ち上がろうとするジラを数人がかりで殴り始める。
反撃も何もできないままジラはゆっくりと前のめりに倒れ込んだ。すでにその目は光を失っている。
「死にかけてんのに二人も道連れにしやがった…」
動かなくなったジラを恐ろし気に見下ろしタナの子分が呟く。全員が冷たい汗を全身にかいていた。タナは血なまぐさい空気の中深く息を吐き出した。
「ローハンの阿呆どもにこの汚いのを届けとけ」
そう吐き捨てると、ジラと取り巻きはさっさとその場所から離れていった。残された小間使いの少年たちはジラの死体を荷車にのせパリスの方角に向かっていった。
ジラの死体をシーラとロマが見下ろしている。チョルノはいかつい顔に涙を浮かべ固まった頭部の血のりを丁寧に拭きガレはしゃがんで指を組んで弔いの言葉をつぶやいている。話を聞きつけたオルバ・フナミが神妙な顔も持ちでロマたちの隣に立った。
命のやり取りは日常茶飯事である。ローハンでは何人も身内を殺されてきていたが喪失感はいつも変わらない。ましてやジラはシーラやロマにとっても分家とは言え兄貴分と慕っていたこともあった。二人の顔は冷え切っていたが、それだけに内側にある憤怒のほどが伝わってくる。
「ジラさんが…まさか」
オルバの言葉をロマとシーラは黙っていた。ナガ一家の柱で若い衆の頭でもあったジラを失ったことは、ナガ一家の復讐心に火をつけていることであろう。しかしジラ以下の者たちはまだまだ歳が若く渡世のこともおぼつかない。戦力としては期待できなくなっている。
オルバは黙って語らないロマとシーラではなくガレに声をかける。
「どうしてジラさん一人で外になんかでちまったんだ」
「麻脂調べてたらしい。ナガのボンクラどもには黙って一人でやってたみたいです」
「叔父貴は?」
「ダルダのおやっさんから伝えてもらってます。ナガ一家はもうやる気になっちまってますが…」
「情報がねぇのか」
「はい。ただジラさんの動きからパリスの外で売り買いしてるみてぇです。あとうちのズダが調べてんのが揃えば絵を描いてるやつらのこともわかりそうですが」
オルバの表情が恐ろしいほどに冷たくなった。目元がスッと細くなる。
「タナって小僧のことは?」
「最近はパリスに入ってねぇらしいです」
「ガレ、ちょっと付き合え。ロマさんもシーラさんも来てもらえますか?」
ようやくシーラが言葉を発した。
「いまさら何を俺らにしらせるんだ?ええ?」
「わかりました。ではガレ借りてきますよ」
二人の怒りの矛先がオルバに向く前退散したほうがよいと判断し、ガレを連れ立っていく。こういう時にも無理に冷静さを保たなければならないところがガレやオルバの気苦労になっている。二人の怒りと変わらぬほどオルバもタナ達のやりようには我慢ならなかった。
「阿呆を何人か捕まえてある。女のいる店で派手に飲んでやがってな」
タナの一味は基本的に表に出ていない。繁華街の喧騒に紛れて集団で襲っているのであろう。しかし若さからが我慢が出来なくなった一部のやつらが武勇伝を騙っていたようである。
「それは…叔父貴」
「ナガの親父にはまだ伝えてないがな。今あそこの若いやつらだとやりすぎちまう」
「そうですね…わかりました」
「女に麻脂と赤い薬を売ってやがったからな間違いなくタナってチンピラと繋がってるはずだ。うちのやつらがちょっと可愛がってやったらベラベラ話してくれてる。ロマやシーラの兄貴を動かすのはその後でもいいだろ。ズダのおっさんは?」
「はい、今おやっさんのとこにいるはずです。別件を調べてたみたいですが…」
オルバが恐ろしい笑みを浮かべた。
「もうすぐ終わるだろ。頭の回りがよくねぇみたいだからなノア一家のチンピラ共は」
「ただ裏で絵をかいてるはずのエルヴィの居所がまだ…」
「そっちはもう手を回してある」
オルバはタナのパリス入りあとからすでに探索をさせていた。エルヴィの名前は最初からわかっていたことで、目くらましにもなっていない。しかしエルヴィがパリス市民と直接やり取りしている半市民だったことが、手を出せずにいた理由である。
下層のパリス市民とのつながりが深い住人が多い地域や市場、どぶ板通りのような公の場所では無理だがそうではない貧困街や城壁の外であればいかようにもできる。
「女だ。エルヴィには懇意にしてた女がいてな。今はもう切れてるらしいが、そいつを出汁に釣り出してみる」
ガレは膝を平手で叩く。ガレが考えつきチョルノに調べさせていたことなど、とうにこの切れ者は調べがついていた。
「まずは麻脂売ってるジャリどもからだ。今エルヴィは実家からも追い出されちまっていろんなところ転々としてるって話だからな。こっちはもうちょっと時間がかかる」
「わかりやした」
「兄さん方にはもう少し辛抱してもらえ。パリスに目を付けられると面倒だ」
ガレにとっては憤懣の行き場がなくなった獣を抑えるほうが骨が折れそうで、少し疲れの色が見えていた。
「あとなエルヴィを使ってるノア一家だが、もう統制は全く取れてないな。親の目が届かねぇとこで好き勝手やってやがるから今みたいなジャリどもがのさばってるみたいだ」
「そりゃ半分うちの責任ですね」
「そうだ。ダルダ一家の責任だな。だから仕切ってるお前が一番責任が重いぞ。わかってんな」
「なんとしてでもあの下衆どもを始末しますよ」
オルバはガレの肩を激しく叩いた。
復讐心に燃え上ったダルダ一家の男たちは、ジラの弔いをすますと静かにタナ一味を追いかけるためパリスの夕闇に向かっていく。感傷に浸るのは復讐を果たし、ローハンのやくざ者たちの意地と恐ろしさを分からせてやってからのことであった。
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