女の子同士で気持ちよくなっちゃった私達…

SenY

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本編

第一章:傷の舐め合い、あるいは蜜の味

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 窓の外、シトシトと降り続く五月雨の音が、カーテン越しに湿ったリズムを刻んでいる。
 薄手のカーテンの隙間から差し込む朝の光は、雨雲に遮られて乳白色に濁っていた。その頼りない光が、乱れたシーツと、私の隣で安らかな寝息を立てている彼女――リナの横顔を淡く照らし出している。
 エアコンの送風音が微かに響く6畳の洋室。私の部屋だ。でも、ダブルベッドの半分は、本来ここにいるはずのない同居人によって占領されている。

「ん……みお、おはよぉ……」

 毛布から這い出した栗色の髪が、私の肩口にふわりとかかる。
 シャンプーの甘い香りと、人肌の温もり。そして、昨晩の名残である微かなアルコールの匂いと、もっと生々しい、熟れた果実のようなムスクの香りが鼻腔をくすぐった。

「……おはよ、リナ」

 私は彼女の頬にかかった髪を指先で梳く。
 その感触のあまりの柔らかさに、心臓がトクン♥ と小さく跳ねた。
 
 私たちは、ただのルームシェアをしている女子大生だ。
 いや、正確には「だった」と言うべきなのだろうか。
 昨日の夜、私たちは一線を越えてしまった。
 男の人とするよりもずっと深く、ずっと甘く、そして恐ろしいほどに気持ちよく――私たちは、女の子同士でトロトロになってしまったのだから。

 ***

 事の発端は、ほんの数時間前。金曜日の夜のことだった。

 私、佐伯美緒(さえき みオ)と、同居人の高坂リナ(こうさか りな)は、大学二年の春からこの2LDKのマンションで一緒に暮らしている。
 お互いに地方出身で、一人暮らしの寂しさと家賃の高さに音を上げていたところで意気投合したのがきっかけだった。
 リナは明るくて華やかで、文学部の地味な私とは正反対の経営学部生。性格も好みも違うけれど、不思議と波長が合った。何より、お互いに「恋愛に疲弊している」という共通点があったのが大きい。

 その夜、私たちはリビングのローテーブルに安い缶チューハイとコンビニのホットスナックを広げ、恒例の「愚痴飲み会」を開催していた。

「マジでありえないんだけど。あいつ、先週『好きだ』って言ってきたくせに、昨日になって『やっぱ元カノとヨリ戻すわ』とかLINE越してきやがってさぁ!」

 リナが「氷結」のロング缶をあおりながら、テーブルをバンと叩く。
 彼女の整った顔立ちは、アルコールと怒りでほんのり朱に染まっていた。
 彼女はモテる。誰が見ても可愛いし、ノリも良い。だから男が寄ってくる。でも、寄ってくる男はどいつもこいつもロクデナシばかりだった。

「最低だね、それ。身体目当てだったんじゃないの?」
「そう! 絶対そう! 先週ホテル断った途端にこれだよ? 分かりやすすぎて萎えるわー……」

 リナが深いため息をつき、私の肩に頭を預けてくる。
 ずしりとした重みと、彼女の体温。
 私もまた、苦い記憶を反芻しながらカシスオレンジを口に含んだ。

「私もさ……こないだ別れた人、結局最後まで自分のことしか考えてなかったな」
「あー、あの商社マン志望の?」
「うん。私の話なんて聞いてないの。会えばすぐにホテル行きたがって、終わったらスマホいじって。『疲れてるから』ってすぐ寝ちゃうし。私、ただのダッチワイフなのかなって思っちゃった」

 思い出すだけで、胸の奥が冷たくなる。
 セックスは嫌いじゃなかった。好きな人と肌を重ねるのは、本来幸せなことのはずだ。
 でも、彼らの指は乱暴で、キスは唾液をなすりつけるだけの儀式で、私の「痛い」とか「そこじゃない」というサインは、いつも快楽の喘ぎ声だと都合よく解釈された。
 愛されている実感のない行為は、ただ粘膜が擦れ合うだけの摩擦運動でしかない。終わった後に残るのは、虚無感と、少しの痛みと、シャワーで洗い流さなきゃいけない他人の匂いだけ。

「……男なんて、みんなオオカミだよね」
「ほんとそれ。もう恋愛とかメンドくさい。一生ミオとこうやって暮らしてた方が幸せかも」

 リナが冗談めかして言って、私の太ももにすりすりと頬を擦り付けてきた。
 彼女の肌はきめ細かくて、すべすべしている。男の人の、あのジョリジョリした髭の感触とは大違いだ。

「あはは、そうだね。リナとなら気を使わなくていいし」

 私も笑って返した。
 でも、その時ふと、リナのパジャマの襟元が大きくはだけて、白い鎖骨と豊かな胸の谷間が目に飛び込んできた。
 風呂上がりの、無防備な肌。
 ドキッ♥
 心臓が予期せぬ音を立てた。
 同性の、見慣れたはずの身体。一緒にお風呂に入ったことだってあるのに。
 なぜだか今日は、その白さが目に焼き付いて離れない。

「……ねえ、ミオ」

 不意に、リナが顔を上げた。
 潤んだ瞳が、至近距離で私を見つめている。
 いつもは強気な彼女の瞳が、今は捨てられた子犬のように寂しげに揺れていた。

「私って、魅力ないのかな」
「そんなことないよ。リナは可愛いし、スタイルもいいし……」
「じゃあ、なんで大事にされないんだろ」

 彼女の手が、私の太ももの上で迷うように動く。
 スウェット越しに伝わる熱が、じんわりと私の肌に浸透していく。

「それは……男が見る目ないだけだよ」
「……ミオは? ミオも、私のこと、ただの同居人としか思ってない?」

 問いかけの意味がわからなくて、私は言葉に詰まる。
 その隙を埋めるように、リナがさらに身体を寄せてきた。彼女の吐息が、甘いお酒の匂いと共に私の首筋にかかる。

「私ね、ミオのことは大好きだよ。一緒にいると安心するし、いい匂いするし……」
「ちょ、リナ、酔っ払いすぎ……」

 私が窘めようとした瞬間、リナの腕が私の腰に回された。
 ギュッ♥
 柔らかい感触が、全身に押し付けられる。
 胸と胸が潰れ合う感触。女性特有の、脂肪と筋肉の柔らかな弾力。
 それは、男の人に抱きしめられた時の、骨張った硬さや威圧感とは全く違うものだった。
 まるで羽毛布団に包まれているような、圧倒的な「肯定感」。

「あったかい……」

 リナが私の胸元に顔を埋めて呟く。
 その声が、鼓膜ではなく骨に響くように甘く震えていて、私は思わず息を飲んだ。
 拒絶しなきゃいけない。友達だから。女の子同士だから。
 頭では分かっているのに、身体は正直だった。
 下腹部の奥が、ツン♥ と疼く。
 男の人相手にはとっくに枯れていたはずの泉が、この柔らかさに反応して、じわりと熱を帯び始めていた。

「ミオの心臓、すごいドキドキしてる」
「っ……! それは、リナが急に……」
「私のこと、意識してくれてるの?」

 リナが顔を上げ、悪戯っぽく、でもどこか必死な目つきで私を見上げる。
 その唇は、缶チューハイで濡れて艶めいていた。
 ピンク色の、ふっくらとした唇。
 キスしたら、どんな味がするんだろう。
 そんな思考が脳裏をよぎった瞬間、私の理性の堤防に、小さな亀裂が入った。

「……リナこそ、なに考えてるの」
「わかんない。でも、男の人とするより、ミオとこうしたほうが気持ちいい気がする」

 リナの手が、私のスウェットの裾から忍び込んでくる。
 ヒヤリとした指先が、脇腹の素肌に触れた。
 ビクッ♥
 背筋に電流が走る。

「あっ、ちょ、だめ……」
「やだ? 気持ち悪い?」
「そうじゃ、ないけど……」

 嫌じゃない。全然、嫌じゃない。
 むしろ、もっと触れてほしいとすら思っている自分がいる。
 男の人のゴツゴツした手とは違う、細くて華奢な指。爪先が優しく肌をなぞる感覚が、こんなにもゾクゾクするなんて知らなかった。

「試してみようよ。私たち、もう恋愛なんて懲り懲りでしょ? だったら、お互いで慰め合うのが一番平和じゃない?」

 リナの論理は破綻していた。でも、その時の私には、それが妙に説得力のある提案に聞こえてしまったのだ。
 傷つきたくない。利用されたくない。ただ、優しくされたい。気持ちよくなりたい。
 その欲求を満たせるのは、同じ痛みを知る私たちだけなのかもしれない。

「……うん、そうかもね」

 私の肯定の言葉が落ちるのと同時に、リナの顔が近づいてきた。
 長い睫毛が伏せられ、唇が触れ合う。
 チュッ♥
 最初は、小鳥がついばむような軽いキス。
 レモンサワーの味。
 でも、すぐにリナの舌先が、遠慮がちに私の唇を割り入ってくる。

「ん……っ、ふぁ……♥」

 口内をくすぐる滑らかな感触。
 男の人のような強引さはなく、どこまでも丁寧に、私の舌を絡め取っていく。
 唾液が混ざり合う音が、静かな部屋にいやらしく響いた。
 チュプ、レロ……♥
 頭がぼうっとしてくる。脳みそがシロップ漬けにされたみたいに甘く溶けていく。

「はぁ……っ、ミオ、口の中、やわらかい……♥」
「リナも……すっごく、上手……」

 息継ぎのために唇を離すと、二人の間に銀色の糸が引いた。
 お互いの顔を見合わせ、私たちはどちらからともなく、とろんとした目で微笑み合う。
 もう、後戻りはできない。
 その共犯関係の意識が、さらに興奮を煽った。

「ベッド、行こ?」

 リナの甘えた声に、私はこくりと頷いた。
 私たちは手を繋ぎ、ふらつく足取りで私の部屋へと向かった。

 ***

 ベッドの上、パジャマを脱ぎ捨てて下着姿になった私たちは、まるで磁石が引き合うように重なり合った。
 ピンクのフリルがついた私のブラと、水色のレースがあしらわれたリナのブラ。
 並ぶと姉妹のように可愛いけれど、その下にあるのは、熱く火照った大人の身体だ。

「見て、ミオの胸、すっごい綺麗……」

 リナがうっとりとした目で私を見下ろし、指先でバストトップを円を描くように撫でる。
 ゾワワッ♥
 皮膚の下の神経が全部そこへ集中したかのような鋭敏な感覚。

「んっ♥ ぁ、リナ、そこ……っ」
「ここ、弱いの? 男の人には、こんなふうにされたことない?」

 ない。
 彼らはただ、揉むだけだった。痛いくらいに鷲掴みにして、自分の興奮のためだけに扱っていた。
 こんなふうに、宝物を扱うみたいに優しく愛撫されたことなんて、一度もない。

「ない……っ、そんな優しくされたら、おかしく、なる……っ♥」
「おかしくなっていいよ。私だって、もうおかしくなりそう」

 リナが私の首筋に顔を埋め、甘噛みしながらホックに手をかける。
 パチン、と軽い音がして、胸が開放された。
 同時に、リナの熱い舌が、敏感に尖った先端を捉える。

「ひゃうっ!?♥」

 声にならない悲鳴が漏れた。
 ちゅぅ、じゅる……♥
 吸い付く音と、舌で転がされる感触。
 快楽の波が、脳天を突き抜けて足の先まで駆け巡る。

「すごい……ミオ、すっごい可愛い声出てる♥」
「だって、んぅっ! リナ、すご、い……っ♥ 気持ち、いい……っ♥」

 私は無意識にリナの頭を抱き寄せ、髪の中に指を滑り込ませた。
 もっと。もっとしてほしい。
 今まで知らなかった快楽の扉が、次々と開かれていく。

 リナの手は、やがて下へと伸びていく。
 太ももの内側を這い上がり、秘められた場所へと。
 ショーツ越しに触れられた瞬間、腰が勝手に跳ねた。

「あっ♥ そこっ……!」
「ここ、もうこんなに濡れてる……♥」

 リナが意地悪く囁く。
 恥ずかしさで顔から火が出そうだったけれど、それ以上に快感が勝っていた。
 女の子同士だからわかる。どこをどう触れば気持ちいいのか。どんなリズムが欲しいのか。
 言葉にしなくても、肌と肌が会話するように、最適解を導き出していく。

 リナの指が、花弁を優しく割り開く。
 愛液が糸を引き、ぬちゅ♥ と卑猥な音を立てた。

「入れるね……?」

 その問いかけに、私は無言で頷き、脚をM字に開いて彼女を受け入れた。
 細くしなやかな指が、秘部へと侵入してくる。
 異物感はない。あるのは、ただひたすらな充足感。

「んっ、ぁ……ぁあっ♥」

 クリトリスを親指で刺激されながら、中のGスポットを執拗に擦り上げられる。
 マルチタスクな攻めに、私の思考回路は完全にショートした。
 目の前がチカチカと明滅し、白い光が弾ける。

「ミオ、イク? イッちゃいそう?」
「いくっ! イクっ! リナ、だめっ、壊れるぅ……っ♥」
「いいよ、一緒にイこう。私も……もう……っ♥」

 リナも自分の秘部に手を伸ばし、私の腰に激しく擦り付けてきた。
 肌と肌の摩擦熱。混ざり合う愛液。部屋中に充満する甘いフェロモンの匂い。
 私たちは獣のように絡み合い、お互いの名前を呼び合いながら、絶頂の坂を一気に駆け上がった。

「ああっ、ああっ、いくううぅぅぅぅぅッ!!♥♥」

 キュウゥッ♥ と膣壁が収縮し、リナの指を強く締め付ける。
 これまでの人生で感じたことのない、脳が溶けるような強烈なオーガズムが私を襲った。
 その波は一度では終わらず、寄せては返す余韻となって、私の身体を震わせ続けた。

 ***

 ――そして、現在。

 雨音を聞きながら、私は昨晩の狂乱を思い出して顔を覆った。
 やってしまった。
 友達なのに。ルームメイトなのに。
 でも、後悔は……不思議と、ない。

 隣で眠るリナの顔を見る。
 メイクを落としたすっぴんの顔は、昨日の夜の妖艶さが嘘のように幼く、愛らしい。
 その唇が、微かに動いた。

「ん……ミオ……すきぃ……♥」

 寝言だろうか。それとも、起きているのだろうか。
 リナがモゾモゾと身体を動かし、私の腰に抱きついてくる。
 スウェット越しではない、素肌と素肌の密着。
 その温かさに、胸の奥がじんわりと満たされていくのを感じた。

 私たちは、「彼氏に幻滅した」という傷を舐め合うために身体を重ねた。
 それは逃避かもしれないし、一時的な気の迷いかもしれない。
 けれど、この心地よさは本物だ。
 男の人には決して埋められなかった孤独の穴を、リナは一晩で、いとも簡単に、そして優しく埋めてしまった。

 私はそっと、リナのおでこにキスをした。
 チュッ♥

「私もだよ、リナ」

 これが恋なのか、友情の延長なのかはまだわからない。
 ただ、一つだけ確かなことがある。
 もう私たちは、あの寒々しい「普通の恋愛」には戻れないだろうということだ。

 女の子同士で気持ち良くなっちゃった私達。
 その甘い沼の深さを、私はまだ、入り口でしか知らなかったのだ。

(第一章 完)
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