1 / 1
プロポーズ
しおりを挟む
「ごめん、待った?」
「うんうん、全然待ってないよ」
本当は一時間も待っていた。約束の時間よりも早く着いたわけではない。時間通りに到着した。つまり拓司が一時間も遅刻したのだ。七時に中華料理屋で会う約束をしていたが、現在時刻は八時を過ぎている。外は真っ暗だった。
「もうお腹ぺこぺこだよ。何か注文しようよ。すみません!」
私は近くを歩いていた店員を呼び止めた。
「激辛ラーメンを一つ」
「俺もそれで」
「激辛ラーメン二つですね。かしこまりました」
店員はペコリと頭を下げると去っていった。
「約束の時間に遅れて本当にごめん。ゲームで遊んでたら時間が過ぎていたんだ」
「そうなんだ。よっぽど面白いゲームだったんだね」
「ああ、面白いよ」
拓司は目を輝かせた。少しイラっとした。私との約束よりもゲームの方がいいのだろうか? 食事をするよりもゲームの方が楽しいかもしれないが、私との時間も大切にしてほしい。
「お待たせしました。激辛ラーメンです」
私と拓司の前に激辛ラーメンが置かれた。店員はペコリと頭を下げ、去っていく。
麺をスープに絡ませ、口に運んだ。思っていたよりも辛かったが、麺にコシがあっておいしい。このくらいの辛さがちょうど良い。拓司は麺に手を付けていなかった。どことなく険しい表情をしている。
「どうしたの? 食べないの?」
「辛いのが苦手でね」
「そ、そうなんだ。知らなかったよ」
辛いのが苦手なら何で『俺もそれで』と言ったんだ。拓司はバカなのか。それともメニューを決めるのが面倒くさくてつい言ってしまったのだろうか? 仮にそうだとしてもバカということに変わりはないだろう。そんなバカを好きになった私もバカと言えるかもしれない。
拓司は水を飲みながら激辛ラーメンを食べている。苦しそうな表情だ。私が激辛ラーメンを頼まなければ拓司は苦しまずに済んだ。しかし、食べたかったのだから仕方がない。拓司も食べたいものを頼んでいれば苦しまずに済んだのに。
「美沙にプレゼントがあるんだ」
食事を終えて帰り支度をしていたら、拓司が神妙な面持ちでそう言った。
拓司はポケットから小さな箱を取り出すと、蓋を開けた。中には指輪が入っていた。
「俺と結婚してください」
中華料理屋ですることか? こういうサプライズは高級レストランでするものじゃないのか? こんなところでサプライズされても、リアクションに困る。
「はい!」
そう思いながらも私は力強く返事をした。中華料理屋でするのはどうかと思うものの、結婚したい気持ちはあったし、とても嬉しい。
拓司は嬉しそうな表情を浮かべながら、指輪をはめてくれた。なぜか髑髏が付いた指輪だった。これは婚約指輪ではなく、ファッションリングじゃないのか。見た目がかっこいいから別にいいけど。
「ねえ、拓司の家に泊まっていい?」
「もちろんだよ」
私は先に外に出て拓司が勘定を済ませるのを待った。
「お待たせ、行こうか」
「うん」
私は拓司と手を繋ぎ、歩き出した。
――こういうサプライズもありだな。
「うんうん、全然待ってないよ」
本当は一時間も待っていた。約束の時間よりも早く着いたわけではない。時間通りに到着した。つまり拓司が一時間も遅刻したのだ。七時に中華料理屋で会う約束をしていたが、現在時刻は八時を過ぎている。外は真っ暗だった。
「もうお腹ぺこぺこだよ。何か注文しようよ。すみません!」
私は近くを歩いていた店員を呼び止めた。
「激辛ラーメンを一つ」
「俺もそれで」
「激辛ラーメン二つですね。かしこまりました」
店員はペコリと頭を下げると去っていった。
「約束の時間に遅れて本当にごめん。ゲームで遊んでたら時間が過ぎていたんだ」
「そうなんだ。よっぽど面白いゲームだったんだね」
「ああ、面白いよ」
拓司は目を輝かせた。少しイラっとした。私との約束よりもゲームの方がいいのだろうか? 食事をするよりもゲームの方が楽しいかもしれないが、私との時間も大切にしてほしい。
「お待たせしました。激辛ラーメンです」
私と拓司の前に激辛ラーメンが置かれた。店員はペコリと頭を下げ、去っていく。
麺をスープに絡ませ、口に運んだ。思っていたよりも辛かったが、麺にコシがあっておいしい。このくらいの辛さがちょうど良い。拓司は麺に手を付けていなかった。どことなく険しい表情をしている。
「どうしたの? 食べないの?」
「辛いのが苦手でね」
「そ、そうなんだ。知らなかったよ」
辛いのが苦手なら何で『俺もそれで』と言ったんだ。拓司はバカなのか。それともメニューを決めるのが面倒くさくてつい言ってしまったのだろうか? 仮にそうだとしてもバカということに変わりはないだろう。そんなバカを好きになった私もバカと言えるかもしれない。
拓司は水を飲みながら激辛ラーメンを食べている。苦しそうな表情だ。私が激辛ラーメンを頼まなければ拓司は苦しまずに済んだ。しかし、食べたかったのだから仕方がない。拓司も食べたいものを頼んでいれば苦しまずに済んだのに。
「美沙にプレゼントがあるんだ」
食事を終えて帰り支度をしていたら、拓司が神妙な面持ちでそう言った。
拓司はポケットから小さな箱を取り出すと、蓋を開けた。中には指輪が入っていた。
「俺と結婚してください」
中華料理屋ですることか? こういうサプライズは高級レストランでするものじゃないのか? こんなところでサプライズされても、リアクションに困る。
「はい!」
そう思いながらも私は力強く返事をした。中華料理屋でするのはどうかと思うものの、結婚したい気持ちはあったし、とても嬉しい。
拓司は嬉しそうな表情を浮かべながら、指輪をはめてくれた。なぜか髑髏が付いた指輪だった。これは婚約指輪ではなく、ファッションリングじゃないのか。見た目がかっこいいから別にいいけど。
「ねえ、拓司の家に泊まっていい?」
「もちろんだよ」
私は先に外に出て拓司が勘定を済ませるのを待った。
「お待たせ、行こうか」
「うん」
私は拓司と手を繋ぎ、歩き出した。
――こういうサプライズもありだな。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
この作品の感想を投稿する
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる