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体器万製
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私は三十センチほどの幅の小さなベッドから脳を起こした。
ベッドの側に置いていた器――中が空洞の人体だ――の頭の部分をパカリと開けた。その空洞に脳をセットする。
「もうすぐ新学期。みんなと会えるのが楽しみだな」
私はウキウキした気分で独り言を呟いた。
そして立ち上がり、台所へ行った。昨夜の夕飯で余ったおかずを電子レンジで温めて食べた。
部屋に戻って、隅に置いている姿見を見る。
「どうしようかな」
姿見に映っているのはカールを巻いた黒髪の女の子。スタイル抜群で血色の良い白い肌をしている。童顔で幼く見える。
この製品の名前は零野一時だ。名前と容姿に惹かれて買った。
「この際だし買い換えようかな。それでみんなを驚かせちゃおう」
私は思わず笑う。
鞄を持って、家を出た。
☆☆
私は近所の商店街にある目的の店まで直行した。
八百屋と肉屋の間に位置する人体屋『体器万製』に辿りつき、店内に入った。
この『体器万製』は、この辺りでは一番大きな店だ。老若男女様々な製品が取り揃えられており、値段もお手頃で、お年玉を握り締め買いに来る子供もよく見かける。
さてと、まずは男性をちょっと見おうかな。男性が並んでいるコーナーに向かった。
乃来湖鶴。腰までの長さで金髪の男の子。眼つきが鋭くほっそりしている。服装はダブルパーカーにだぼだぼのジーンズ。歩く度にずり落ちてきそうだな。まぁ、着替えれば良いだけの話だけど。
そして隣の製品を見る。伏藻悠。きれいに整えられた髪の男性。ピシッとしたスーツを着ている。何というか地味だな。
女性も見ようかな。今度は女性が並んでいるコーナーへと向かった。
呼時宮真香。さらさらしている黒髪のストレートヘアな女の子。すらりと伸びた手足。ふっくらとした胸。ワンピースを着ている。現在進行形で使用している製品は、スタイル抜群のくせになぜか胸だけはぺったんこだ。候補に入れておこう。
隣に目をやる。不粋泉。ウェーブがかかっている金髪碧眼の女性。背が高くスタイルも抜群だ。色気もありそうだし、その上すらりと伸びたきれいな手足。Tシャツを胸の少し下辺りでくくっている。へそ丸出しでショートパンツを穿いている。これならみんな驚くかもしれない。
私はその女性を持って、レジに向かった。精算してもらい、家に帰った。
☆☆
――――数日後。
私はこの間買った製品、不粋泉に脳をセットした。
それから学校へと行く。
学校に着くと、私は校舎に入って廊下を歩き、教室を目指す。みんなはどんな反応をするかな。楽しみだ。
私は教室の扉を開けて、入室する。
「さあ、みんな席に着いて。HR始めるから」
私はにこやかに教室を見回す。私が今まで座っていた席はもちろん今日から空席だ。ただ、その内すぐに埋ることになるだろう。そういえば教頭がそろそろ器を買い換えようと言っていたから、教頭が座ることになるのかもしれない。
女子は羨ましそうな視線で、男子は獣のような射抜く視線で私を見つめた。……二パターンの反応しかなく私はがっかりした。
ベッドの側に置いていた器――中が空洞の人体だ――の頭の部分をパカリと開けた。その空洞に脳をセットする。
「もうすぐ新学期。みんなと会えるのが楽しみだな」
私はウキウキした気分で独り言を呟いた。
そして立ち上がり、台所へ行った。昨夜の夕飯で余ったおかずを電子レンジで温めて食べた。
部屋に戻って、隅に置いている姿見を見る。
「どうしようかな」
姿見に映っているのはカールを巻いた黒髪の女の子。スタイル抜群で血色の良い白い肌をしている。童顔で幼く見える。
この製品の名前は零野一時だ。名前と容姿に惹かれて買った。
「この際だし買い換えようかな。それでみんなを驚かせちゃおう」
私は思わず笑う。
鞄を持って、家を出た。
☆☆
私は近所の商店街にある目的の店まで直行した。
八百屋と肉屋の間に位置する人体屋『体器万製』に辿りつき、店内に入った。
この『体器万製』は、この辺りでは一番大きな店だ。老若男女様々な製品が取り揃えられており、値段もお手頃で、お年玉を握り締め買いに来る子供もよく見かける。
さてと、まずは男性をちょっと見おうかな。男性が並んでいるコーナーに向かった。
乃来湖鶴。腰までの長さで金髪の男の子。眼つきが鋭くほっそりしている。服装はダブルパーカーにだぼだぼのジーンズ。歩く度にずり落ちてきそうだな。まぁ、着替えれば良いだけの話だけど。
そして隣の製品を見る。伏藻悠。きれいに整えられた髪の男性。ピシッとしたスーツを着ている。何というか地味だな。
女性も見ようかな。今度は女性が並んでいるコーナーへと向かった。
呼時宮真香。さらさらしている黒髪のストレートヘアな女の子。すらりと伸びた手足。ふっくらとした胸。ワンピースを着ている。現在進行形で使用している製品は、スタイル抜群のくせになぜか胸だけはぺったんこだ。候補に入れておこう。
隣に目をやる。不粋泉。ウェーブがかかっている金髪碧眼の女性。背が高くスタイルも抜群だ。色気もありそうだし、その上すらりと伸びたきれいな手足。Tシャツを胸の少し下辺りでくくっている。へそ丸出しでショートパンツを穿いている。これならみんな驚くかもしれない。
私はその女性を持って、レジに向かった。精算してもらい、家に帰った。
☆☆
――――数日後。
私はこの間買った製品、不粋泉に脳をセットした。
それから学校へと行く。
学校に着くと、私は校舎に入って廊下を歩き、教室を目指す。みんなはどんな反応をするかな。楽しみだ。
私は教室の扉を開けて、入室する。
「さあ、みんな席に着いて。HR始めるから」
私はにこやかに教室を見回す。私が今まで座っていた席はもちろん今日から空席だ。ただ、その内すぐに埋ることになるだろう。そういえば教頭がそろそろ器を買い換えようと言っていたから、教頭が座ることになるのかもしれない。
女子は羨ましそうな視線で、男子は獣のような射抜く視線で私を見つめた。……二パターンの反応しかなく私はがっかりした。
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