黒き死神が笑う日

神通百力

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待機霊

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 天国は待機霊たいきれいで溢れかえっていた。
 死者の数に対して家の数が少ないため、どうしても宿なしの霊が出てきてしまう。そういった霊を待機霊と呼んでいる。
 天国政府は待機霊の問題を解決するべく、次々にアパートやマンションを建設している。しかし、毎日のように死者は増えていくため、問題解決には至っていない。日に日に待機霊の数は増えていく。公園の大半が待機霊に占領されているのが現状だ。
 そんなある日、天国政府上層部の一人がある案を出した。その案に異議を唱える者も多くいたが、問題解決には一番手っ取り早い方法でもあったがゆえに、最終的には全員が賛同した。
 その案とは天国でほんの些細なトラブルを起こした霊を地獄に落とすことであった。例えば少しだけ生活音が聞こえるなどのトラブルとも言えないトラブルだ。
 その案を天国政府は実行し、見事に待機霊問題は解決した。しかし、ほとんどの霊が天国からいなくなってしまった。

 ――結果的に霊口減少れいこうげんしょうという新たな問題が浮上しただけだった。
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