黒き死神が笑う日

神通百力

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排水溝

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「あれ? おかしいな?」
 私はキッチンに立って皿洗いをしていたが、水が一向に排水溝から流れていかなかった。シンクの排水溝はこの前掃除したばかりだし、野菜のクズや料理の残りカスは詰まっていないはずだ。一つ残らず徹底的に掃除したはずなのに、どうして水が流れないのだろうか?
 私は水道の蛇口を止めると、排水溝の蓋を取って中を見てみた。やはり排水溝には野菜のクズも料理の残りカスも詰まっていなかった。掃除したばかりだし、それも当然だった。
 だったらなぜ水は一向に流れないのだろうか? 疑問に思っていると、排水溝の奥に何か影のようなものが見えた。何だろうと思った瞬間、排水溝の奥から手《・》が伸びてきた。
「え?」
 逃げる間もなく、真っ白な手は私の頭を掴んできた。直感的に引きずり込まれると思い、私はシンクの縁を両手で掴んだ。必死で抵抗するも、真っ白な手の力は凄まじく、下半身は浮いてしまっていた。
 そしてシンクの縁から両手が外れてしまい、私は排水溝の中に引きずり込まれ、意識を失った。

 ☆☆

 真っ白な手は女を排水溝から排水管に引きずり込んだ瞬間、煙のように消え失せた。排水管に引きずり込まれた女は徐々に全身が真っ白に染まっていった。それは徐々に縮んでいき、やがて真っ白な手になった。
 ほんの数分前までは女だった真っ白な手は獲物を探し求めるかのように、排水管の中を突き進んでいった。
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