黒き死神が笑う日

神通百力

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抱こティーン

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 私はまだ一歳の姪っ子を抱いて姉に写真を撮ってもらった。姪っ子を姉に渡すと、私はすぐに写真をネットにあげた。もちろん姪っ子の顔にモザイクをしたうえで写真をあげている。
 ここ最近、若者の間で『抱こティーン』が流行っていた。『抱こティーン』とは十代の若者が赤ちゃんを抱いた自分の写真をネットにあげ、『私って十代なのに赤ちゃんを抱っこしてあげるなんて良い子でしょ?』とアピールする行為のことである。『抱こティーン』は抱っことティーンエイジャーを合わせた造語だ。
 若者の間では人気だが、世間一般的には批判を浴びている行為だった。赤ちゃんをダシに使って自分をアピールするのは良くないというのが主な理由だったが、私はまったく気にしていなかった。これまでに何度か『抱こティーン』を行い、批判的なコメントも多く寄せられた。
 どんな写真をネットにあげようが、私の自由だし、流行に乗っかっているに過ぎないのだ。それに姉も私が『抱こティーン』を行うことに反対していない。姉が良いって言ってるんだから、批判されるいわれはない。
 先ほどアップした写真に寄せられたコメントを見ていると、不意に肩を叩かれた。
「私も『抱こティーン』をやってみたいから、写真撮ってくれる? まあ、私の場合は『抱こトゥエ』と言った方がいいかもしれないけど」
 姉はそう言って微笑んだ。確かに姉は二十歳を超えているし、アラトゥエといってもいいだろう。抱っこと二十歳前後の若者を意味するアラトゥエを合わせた『抱こトゥエ』の方が相応しいように思う。
「それじゃ、撮るね」
 私は自分の娘を抱いた姉を撮った。同じようにモザイクをして姉の写真をあげた。すると早速コメントが寄せられた。その内容は『ブラが透けてる! エロすぎ!』だった。あらためて姉を確認すると、確かにブラが透けていた。
 その後も『ブラが見えてる!』やら『なんかエロい』やら比較的好意的と言えなくもないコメントが多く寄せられた。もちろん批判的なコメントもあるが、私に比べたら少なかった。何か悔しい。
 私もブラが透けるような服を着て『抱こティーン』をやってみようかなと割と本気でそう思った。

 その後、姉の写真がきっかけで、ちょっとエロい『抱こティーン』がネット上にアップされるようになった。
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