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二、家族の形
第11話『彼の懺悔②』
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わたし、妹か弟が欲しかったの。
『お兄ちゃん』は欲しくなかったのに。
父と母が揃って出かけてしまい、家に私と妹の二人だけになった初めての日に彼女は私にそう言いました。
あまりに堂々とはっきりと言う彼女に私は返す言葉が見つかりませんでした。
謝れば良かったのか、怒れば良かったのか。
今となってはわかりません。もし此処で彼女を叱りつければ、もっと違った今があったのかもしれません。
だけど今となっては、もう、どうにもならないことです。
私は数日前に出来た妹の顔を見ながら、何も答えることができずただ呆然としました。
何と返すべきなのかわからずただ硬直したのです。
昔からそうでした。
私は焦ったり混乱すると、すぐに行動に移すことができず動けなくなるのです。
その瞬間もまさにそれでした。
何も言えずにいた私に、妹は笑いました。
それはもう驚く程美しく、可愛らしく。
彼女には私がひどく滑稽に見えたことでしょう。
自分でもそう思います。
賢い彼女は、何も答えずにいる私の心を見抜いたに違いありません。
もしかして、わたしの『お兄ちゃん』になりたかったの?
でも、駄目よ。
わたし、『お兄ちゃん』なんて欲しくないのだから。
貴方は要らない。
まるでそう言われたように思えましたし、彼女もそういう意味で言っていたのかもしれません。
彼女の言葉を聞いた途端、私は目の前が暗くなるような気分でした。
私はお世辞にも明るい性格ではありませんでしたし、友達と呼べる人間もいませんでした。
内面の暗い人間です。
母も私が成長するにつれ、母の好む可愛らしい服が似合わなくなっていく私への関心がなくなっていきました。
とても寂しい人生を歩んでいたと言っても大げさではなかったのです。
そんな私の前に、妹と呼べる存在が現れたことは天からの贈り物を受け取ったような喜びがありました。
私に妹が……。
何にも変えることもできない確かな繋がりを得られたように思えました。
だけどその奇跡と言える存在である彼女は、私を要らない、と言うのです。
本当にどうしたら良いのかわからなかったのです。
あまりの事の深刻さに、思わず涙がこみ上げてきました。
彼女はそんな私を見てくすくすと笑います。
やはりとても美しく、そして可愛らしく、私を笑うのです。
彼女よりも幾つも歳上の男がみっともなく泣く光景は自分でも無様だと言えました。
『お兄ちゃん』は欲しくないと言ったのがそんなにショックなの?
しょうがないじゃない、だって本心なの。
でも、そうね。
じゃあ、『弟』にしてあげるわ。
今この瞬間、私の『弟』になって。
わたしのことは『姉さん』と呼ぶの。
だってわたし、姉になりたかったのだから。
パパやママがいるときは、わたしの名前に『さん』を付けて呼ぶのよ。
そして二人のときは、わたしのことをちゃんと『姉さん』と呼んで。
わかった?
唐突に放たれる彼女の言葉に、私はやはりすぐに反応することができませんでした。
ただ唖然と彼女を見つめるばかりで、開いた口が塞がらないとはまさにこの状態でした。
だけど彼女はそんな私に近づくと、その小さな手で私の頬を打ちました。
痛みが頬に響いても、私は何が起こったのか理解するのに時間を要しました。
彼女はまるで不出来な『弟』を叱るように口を開きました。
返事もできないの?
駄目な子。
弟というものは、姉の言葉にすぐ返事をするものよ?
わかったら、『はい、姉さん』と言って。
そう命じられ、私は彼女の言う通りに、はい、姉さん、とオウム返しのように答えました。
あまりに上擦った声に、彼女はまた私を叱りつけるのではと不安になりました。
だけど、姉さんは溜息をつきながらも笑ってくれました。
今日はそれで我慢してあげる。
でも次はちゃんとやって、わかった?
私は今度はさっきよりも落ち着いたトーンで返事をしました。
すると姉さんはとても嬉しそうに笑ってくれました。
その微笑みがとても美しく、とても可愛らしく、私は思わず見蕩れてしまいました。
私と姉さんの歪んだ関係はこの時から始まってしまったのです。
『お兄ちゃん』は欲しくなかったのに。
父と母が揃って出かけてしまい、家に私と妹の二人だけになった初めての日に彼女は私にそう言いました。
あまりに堂々とはっきりと言う彼女に私は返す言葉が見つかりませんでした。
謝れば良かったのか、怒れば良かったのか。
今となってはわかりません。もし此処で彼女を叱りつければ、もっと違った今があったのかもしれません。
だけど今となっては、もう、どうにもならないことです。
私は数日前に出来た妹の顔を見ながら、何も答えることができずただ呆然としました。
何と返すべきなのかわからずただ硬直したのです。
昔からそうでした。
私は焦ったり混乱すると、すぐに行動に移すことができず動けなくなるのです。
その瞬間もまさにそれでした。
何も言えずにいた私に、妹は笑いました。
それはもう驚く程美しく、可愛らしく。
彼女には私がひどく滑稽に見えたことでしょう。
自分でもそう思います。
賢い彼女は、何も答えずにいる私の心を見抜いたに違いありません。
もしかして、わたしの『お兄ちゃん』になりたかったの?
でも、駄目よ。
わたし、『お兄ちゃん』なんて欲しくないのだから。
貴方は要らない。
まるでそう言われたように思えましたし、彼女もそういう意味で言っていたのかもしれません。
彼女の言葉を聞いた途端、私は目の前が暗くなるような気分でした。
私はお世辞にも明るい性格ではありませんでしたし、友達と呼べる人間もいませんでした。
内面の暗い人間です。
母も私が成長するにつれ、母の好む可愛らしい服が似合わなくなっていく私への関心がなくなっていきました。
とても寂しい人生を歩んでいたと言っても大げさではなかったのです。
そんな私の前に、妹と呼べる存在が現れたことは天からの贈り物を受け取ったような喜びがありました。
私に妹が……。
何にも変えることもできない確かな繋がりを得られたように思えました。
だけどその奇跡と言える存在である彼女は、私を要らない、と言うのです。
本当にどうしたら良いのかわからなかったのです。
あまりの事の深刻さに、思わず涙がこみ上げてきました。
彼女はそんな私を見てくすくすと笑います。
やはりとても美しく、そして可愛らしく、私を笑うのです。
彼女よりも幾つも歳上の男がみっともなく泣く光景は自分でも無様だと言えました。
『お兄ちゃん』は欲しくないと言ったのがそんなにショックなの?
しょうがないじゃない、だって本心なの。
でも、そうね。
じゃあ、『弟』にしてあげるわ。
今この瞬間、私の『弟』になって。
わたしのことは『姉さん』と呼ぶの。
だってわたし、姉になりたかったのだから。
パパやママがいるときは、わたしの名前に『さん』を付けて呼ぶのよ。
そして二人のときは、わたしのことをちゃんと『姉さん』と呼んで。
わかった?
唐突に放たれる彼女の言葉に、私はやはりすぐに反応することができませんでした。
ただ唖然と彼女を見つめるばかりで、開いた口が塞がらないとはまさにこの状態でした。
だけど彼女はそんな私に近づくと、その小さな手で私の頬を打ちました。
痛みが頬に響いても、私は何が起こったのか理解するのに時間を要しました。
彼女はまるで不出来な『弟』を叱るように口を開きました。
返事もできないの?
駄目な子。
弟というものは、姉の言葉にすぐ返事をするものよ?
わかったら、『はい、姉さん』と言って。
そう命じられ、私は彼女の言う通りに、はい、姉さん、とオウム返しのように答えました。
あまりに上擦った声に、彼女はまた私を叱りつけるのではと不安になりました。
だけど、姉さんは溜息をつきながらも笑ってくれました。
今日はそれで我慢してあげる。
でも次はちゃんとやって、わかった?
私は今度はさっきよりも落ち着いたトーンで返事をしました。
すると姉さんはとても嬉しそうに笑ってくれました。
その微笑みがとても美しく、とても可愛らしく、私は思わず見蕩れてしまいました。
私と姉さんの歪んだ関係はこの時から始まってしまったのです。
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