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「ついに……、来ましたわね。ギルバート?」
「はぁ……。お嬢?本当にやれるんですか?その口調無理ありまくりですよ?」
王立学園までの向かう馬車の中、ルーナはごくりと喉を鳴らし気合を入れた。
そんな何時もよりも挙動不審なルーナに、無駄とは思いつつもやや呆れながらギルバートは最終確認をする。
「ほほほほ!可笑しいことをおっしゃられるのね。私は何時もこの口調ですわよ?」
ルーナはそんなことは気付かない。
扇を口元ではためかせながら、毎日鏡の前で1時間練習した「大人しめ令嬢っぽい微笑み」をギルバートへ向けた。
ルーナこだわりポイントは、口角を上げすぎないで少し伏し目がちにはにかむことらしい。
「………、そういう事にしておきましょう」
ルーナ渾身の微笑みを向けられたギルバートは口元を押さえプイっと顔を逸らし、窓の景色を眺め始めた。
心なしか耳朶が赤くなっている。
突然、不機嫌になったギルバートにルーナ首を傾げた。
しかし、従者の状態よりも自身の猫かぶり脳内シミュレーションに時間を割きたいのだ。
車窓を流れる街の景色をしばらく見られない寂しさを感じながら、猫かぶりセリフを脳内で繰り返した。
ギルバートの気持ちの様にユラユラ揺れる馬車は真っ直ぐに学園へと向かう。
「お嬢様?お手をどうぞ」
「ふふっ。ありがとう。ギルバート」
馬車から先に降り、専属従者としてギルバートは手を差し伸べながらルーナをエスコートする。
しかし、それが出来るのも今日が最後。
本日、ギルバートも『騎士科』の生徒として通うことになるためルーナとは同じ『学生』。
これから2人は出会ってから初めて別々に生活する事になる。
ルーナは『魔法科』の生徒として通うため、寮、校舎も違い会うことができるのは『騎士科』『魔法科』の合同授業である『魔物討伐実習』くらいだ。
隣でエスコートされながら校門まで伯爵令嬢として恥ずかしく無い所作で悠然と歩くルーナ。
真新しい『魔法科』の制服に身を包む彼女をギルバートは眩しげに見つめ目を細めた。
ルーナは真っ直ぐ前を見つめ歩みを進めるため、ギルバートの視線の意味に気付かない。
ルーナは桃色のふんわりした癖のある髪を春風に靡かせる。
澄み渡る空のような瞳を新生活への期待に煌めかせた。
ルーナ曰くヒロイン配色らしいのだがギルバートにはその「ヒロイン」が何かはわからない。
綿あめみたいなルーナの髪を整えるのは今日の朝で終わり、名残り惜しいギルバートは――
「お嬢様?御髪に花びらが付いております……。お取りしてもよろしいですか?」
「ええ、よろしく。ギルバート」
恭しく頭を垂れながら、最後に白々しい偽りの言葉と共に触れた。
ありもしない花びらを取ったギルバートはルーナに心の内を悟られないようにそっと微笑み、掌に力を入れ握る。
「では、ギルバート?また、会うときは私が婚約者を隣に連れていることを祈っておいてね。お互いに目的の為に頑張りましょう?」
「はい。俺も目的を果たすために全身全霊をかけて臨むところです。
ですので……、これからは同じ学生としてルーナとお呼びしてもよろしいですか?」
「良いわよ。懐かしいわね!じゃあ、ギル!元気でねっ!」
「はい。ルーナ。また、会うときまで……」
2人は校門までゆっくりと時間をかけ辿り着く。
『魔法科』と『騎士科』の校舎へ別れる前に挨拶を交わす。
ルーナは幼い時より変わらない顔中をくしゃりとさせ花が咲き綻んだように笑みを浮かべた。
ギルバートは決意を湛えた瞳でルーナの笑顔を映す。
ギルバートの目的は騎士となり爵位を得ることと、もう一つ。
ルーナの目的は婚活し、玉の輿。
交わるようで交わらない2人の目的。
2人はそれぞれの校舎に向かう為、正反対の方向につま先を向けて足を踏み出した。
刹那、桃色の花びら舞い踊る春風が強く吹き、ギルバートは歩みを止め花びらと同色が揺れる背中を切なげに見続けていた。
「はぁ……。お嬢?本当にやれるんですか?その口調無理ありまくりですよ?」
王立学園までの向かう馬車の中、ルーナはごくりと喉を鳴らし気合を入れた。
そんな何時もよりも挙動不審なルーナに、無駄とは思いつつもやや呆れながらギルバートは最終確認をする。
「ほほほほ!可笑しいことをおっしゃられるのね。私は何時もこの口調ですわよ?」
ルーナはそんなことは気付かない。
扇を口元ではためかせながら、毎日鏡の前で1時間練習した「大人しめ令嬢っぽい微笑み」をギルバートへ向けた。
ルーナこだわりポイントは、口角を上げすぎないで少し伏し目がちにはにかむことらしい。
「………、そういう事にしておきましょう」
ルーナ渾身の微笑みを向けられたギルバートは口元を押さえプイっと顔を逸らし、窓の景色を眺め始めた。
心なしか耳朶が赤くなっている。
突然、不機嫌になったギルバートにルーナ首を傾げた。
しかし、従者の状態よりも自身の猫かぶり脳内シミュレーションに時間を割きたいのだ。
車窓を流れる街の景色をしばらく見られない寂しさを感じながら、猫かぶりセリフを脳内で繰り返した。
ギルバートの気持ちの様にユラユラ揺れる馬車は真っ直ぐに学園へと向かう。
「お嬢様?お手をどうぞ」
「ふふっ。ありがとう。ギルバート」
馬車から先に降り、専属従者としてギルバートは手を差し伸べながらルーナをエスコートする。
しかし、それが出来るのも今日が最後。
本日、ギルバートも『騎士科』の生徒として通うことになるためルーナとは同じ『学生』。
これから2人は出会ってから初めて別々に生活する事になる。
ルーナは『魔法科』の生徒として通うため、寮、校舎も違い会うことができるのは『騎士科』『魔法科』の合同授業である『魔物討伐実習』くらいだ。
隣でエスコートされながら校門まで伯爵令嬢として恥ずかしく無い所作で悠然と歩くルーナ。
真新しい『魔法科』の制服に身を包む彼女をギルバートは眩しげに見つめ目を細めた。
ルーナは真っ直ぐ前を見つめ歩みを進めるため、ギルバートの視線の意味に気付かない。
ルーナは桃色のふんわりした癖のある髪を春風に靡かせる。
澄み渡る空のような瞳を新生活への期待に煌めかせた。
ルーナ曰くヒロイン配色らしいのだがギルバートにはその「ヒロイン」が何かはわからない。
綿あめみたいなルーナの髪を整えるのは今日の朝で終わり、名残り惜しいギルバートは――
「お嬢様?御髪に花びらが付いております……。お取りしてもよろしいですか?」
「ええ、よろしく。ギルバート」
恭しく頭を垂れながら、最後に白々しい偽りの言葉と共に触れた。
ありもしない花びらを取ったギルバートはルーナに心の内を悟られないようにそっと微笑み、掌に力を入れ握る。
「では、ギルバート?また、会うときは私が婚約者を隣に連れていることを祈っておいてね。お互いに目的の為に頑張りましょう?」
「はい。俺も目的を果たすために全身全霊をかけて臨むところです。
ですので……、これからは同じ学生としてルーナとお呼びしてもよろしいですか?」
「良いわよ。懐かしいわね!じゃあ、ギル!元気でねっ!」
「はい。ルーナ。また、会うときまで……」
2人は校門までゆっくりと時間をかけ辿り着く。
『魔法科』と『騎士科』の校舎へ別れる前に挨拶を交わす。
ルーナは幼い時より変わらない顔中をくしゃりとさせ花が咲き綻んだように笑みを浮かべた。
ギルバートは決意を湛えた瞳でルーナの笑顔を映す。
ギルバートの目的は騎士となり爵位を得ることと、もう一つ。
ルーナの目的は婚活し、玉の輿。
交わるようで交わらない2人の目的。
2人はそれぞれの校舎に向かう為、正反対の方向につま先を向けて足を踏み出した。
刹那、桃色の花びら舞い踊る春風が強く吹き、ギルバートは歩みを止め花びらと同色が揺れる背中を切なげに見続けていた。
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