【完結】翠くんは、可愛いがられたい

日月ゆの

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3.ピアスがきれいなお兄さんです

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 男らしいけど驚くほど整ったお顔でした。
 長いまつげに囲まれる切れ長の漆黒の瞳は大きく見開かれ、左目下には小さなほくろが縦に2つ並ぶ。
 通った鼻筋、少し厚めの唇。

 どこをとっても『かっこいい』という感想しか浮かばない、気だるげな雰囲気を漂わせるイケメンさんです。

 ⸺キラキラ風鈴みたいなピアスがきれい。

 お兄さんの美貌よりも耳元に揺れる細長いピアスがとてもきれいで目を奪われ、一瞬言おうとした言葉を失います。

「えっと。動けなくて困っていた僕をさっそうと助けてくれてかっこいいですし、僕に『ありがとう』を教えてくれて優しいですっ! あとは風鈴みたいにきらきらしているピアスがキレイっ」

 ハッとすぐに我に返り、昂る感情のまま、つっかえながら必死に言葉を紡ぎます。

 未だに喉からか細い音が漏れ、声がかすれ、途中で咳き込んでしまいました。

 治まらない咳をお兄さんにかけたらいけないので、咄嗟にお兄さんの肩に顔を埋めて回避です。

「うん。ありがとな。」

 すっきりとした穏やかな声。

「風鈴って、お前っ。ふは」

 柔らかな笑い声が背中越しに届く。

 同時に頭を撫でる大きな手が、ワシワシ少し雑だけれど、その粗雑さがお兄さんが本当に喜んでいることを伝える。

 僕でもお兄さんを助けることができた達成感で、胸がそわそわしてくすぐったいです。

 お兄さんになにかしてあげたいっていう気持ちがまっすぐ届いた。

 そう思えたとっても嬉しい瞬間です。

 初めて誰かになにかしてあげたいと思ったんです。

 それに誰かに手を差し伸べるのは勇気がいるって初めて知った。

 相手の負担になったらとかお節介だったのかもと、行動を起こしたあとで気づいたり、意外と不安になってしまう。

 僕はいつも差し伸べられる側だったから、声をかけてくれた人がそういう不安があるにもかかわらず勇気を出してくれていたなんて知らなかったんです。

 せっかく勇気をだして差し出してもらった優しい気持ちに対し、謝ってしまうなんて、蔑ろにしていましたね。

 だから僕がすみません、と謝罪を重ねるたびに、気持ちが伝わらない悔しさや悲しさで、悲しいお顔をするのかもしれないです。

 違う理由もあるかもしれないけれど、優しい気持ちを差し出されたのなら、僕も少しでもお返ししていきたいんです。

 この間違いに気づけたのはお兄さんのおかげです。

 僕にもお兄さんにまだ優しさを返せるでしょうか。

 こんな心臓に悪いことを『当たり前』と言ってのける、優しくて強いお兄さんに。


 お兄さんは数回ワシワシ頭を撫でると、今度は僕の背中を優しくぽんぽん規則的に叩きだします。

 そして、歩き出します。

 なんだかさっきよりも歩調がゆっくりで、僕を抱きこむみたいにぎゅうと腕に力を入れる。さらにお兄さんの身体に密着する体勢になりました。

 きっとこれは「寝ていいよ」というお兄さんからの無言のサインでしょうか。

 ぎゅうと抱っこしたのも、落ちないようにしたのかも。やっぱりお兄さんは優しいひとです。

 だからこそ、怖がっていないと証明するために寝よう。

 そう意気込まなくても僕はすでにまどろみに沈みそうです。

 歩くたびに伝わる振動で一定のリズムで身体を揺すり心地よい。

 苦しかった胸はお兄さんの身体から伝わるぬくもりに包まれ、ぽかぽか温かい。

 ダメ押しとばかりに、あやすように背中を叩かれたら、まぶたが自然に重くなってきます。

 うっとりしながらぼんやり閉じかけた視界に、銀色のピアスが揺蕩うようにゆったり揺れ、きらきら輝く。

 閉じた視界にはお兄さんからする甘くやわらかな香りがふんわり満ちる。

 しばらくして、お兄さんのすべてに導かれ僕はことりと夢の中へ旅立ちました。

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