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一章 アンバランスな盗賊爆誕!

四話 ずっと大剣しか使えないことになりました!

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 結局あのあと、ちょうどいい時間になっていたので俺は一旦ログアウトした。俺だって仕事をしているし、四六時中ゲームをしているわけにもいかない。

 俺の仕事は小説家だ。今どき流行らないような古めかしい純文学ばかり書いているものだから、はっきりいってあんまり売れてはいない。

 それでもただ純粋に書くことが好きで、それが今のところは許されているから続けている。

 仕事は執筆して、それをメールに添付して送るのがほとんどだから家を出ることもない。それが一層出不精を加速させていき、今ではほとんどの時間を部屋着で過ごしている。

 ……見栄を張った。部屋着じゃない、パジャマだ。

 それにしてもさっきのゲームの中での出来事は不思議だ。バグと言ってしまえばそれまでなのだが、そんなの聞いたことがない。

 「大剣しか使えない盗賊」なんていかにも小説のネタになりそうなものだけど、俺にそれを書くのは無理だ。なんせ俺は純文学の作家だから。



 それから三時間ほどは集中して執筆に取り組めた。話が面白いかどうかは作者の俺にはよく分からないが、とりあえず編集者に送った。

 よし、またあのゲームをしてやろう。今なら時間が経ったし、バグについても何かしら進展があっただろう。俺はまたゲームにログインした。

 ゲームの個人宛のお知らせ欄に新着があった。見てみると、「職業と装備のバグについて」と題。

 ああよかった。ようやく謎すぎる縛りが終わるのだとそのメールを開いた。

「Lotus様
プライムフロンティアをプレイしていただきありがとうございます。運営が確認したところ、あなたには職業で盗賊を選んだにもかかわらず大剣しか装備不可能になってしまうバグが確認されました。」

そうだろう、そうだろう。ようやく解放されそうだ。

「運営としては直ちにこのバグの修正に取り掛かったのですが、どうやらあなたが既に大剣を装備したうえで戦闘を行なったために、修正不可能になってしまいました。」

「な、なんだと!! 」 
 思わず一人で叫んでしまった。しかしなんなんだこれは。そんなのアリかよ。じゃあそれって……

「よってお気の毒ながら、あなたはこれから大剣しか装備することができません。お詫びとして運営より10,000ゴールドをプレゼントさせていただきます。」

いやいや、大剣縛りは10,000ゴールドどころじゃないだろ! しかしどうしたものか。これから俺はこのゲーム内で大剣しか装備することができなくなってしまった。

 まあそれで戦士ならまだいい。しかし俺は盗賊だ! さっきプレイしていたときもめちゃくちゃ敬遠されてしまったし、それほど致命的ということだ。

 しかし、それでおとなしくやめてしまうのも気に食わない。一旦始めたんだ。それに、大剣しか使えないんじゃない。盗賊なのに大剣が使えるんだ。そう思い込むことにした。



 ログインすると、ゲームの中も夕暮れになっていた。西日が頬にじんわりと染み込む感覚もしっかりあるから驚いてしまう。

 広場には昼より多くの人がいた。きっとみんな家に帰ってきたんだろうな。

 人が多くなったおかげで俺はより一層の注目を浴びた。広場には戦士だの魔法使いだの僧侶だの武闘家だの狩人だの、実にバライティーに富んだプレイヤーたちでごった返しているというのに、みんな俺ばかりを見る。
 
 だけどやっぱり誰も俺をパーティーに加えてくれそうではない。当分は一人旅になってしまいそう。

 そうだ、武器屋に行くんだった。一回行ってるから迷うことはない。ただ人混みが厄介だ。ただでさえプレイヤーが多いうえに、その全員が武器を背負っているからそれも邪魔だ。まあ、一番デカい武器持ってる俺に言う権利はないだろうか。

 ようやくたどり着いた武器屋も、今度は賑わっている。中に入ると

「おう、いらっしゃい。」

と、またおじさんが迎えてくれた。

 店の従業員は店主のおじさん一人だ。対して客は、あたりまえだがたくさんいる。

 そんな仕様だから仕方ないのかも知れないけど、プレイヤー一人一人に合わせておじさんが分身するのは気味が悪いので絶対どうにかした方がいい。

 俺担当のおじさんは前来たときと同じ通り武器のリストを提示した。俺はもう観念しているので大剣のリストを開いた。

 運営からお詫びで貰った10,000ゴールドを使えばこの店で買えない武器はない。この店にある大剣でもっとも上等な鉄の大剣を選んだ。

 ステータスが更新された。石の大剣よりも数段威力が高いようだ。ただいま攻撃力は124。大剣はもっとも攻撃力が高いので、このあたりが初心者の最大火力だ。

 上がった攻撃力の反面、防御力の低さが目についた。これは結構な問題だ。このまま進んでいけば、強い魔物の強い攻撃をこの身に受けることになる。そうなったときに防御力が低いと致命的。第一めちゃくちゃ痛い。

 善は急げと、武器屋のすぐ近くの防具屋に入った。中にいたのはおばさん。あっちはおじさんで、こっちはおばさんなのか。もしかして夫婦? 

 「あら、いらっしゃい。」

と迎えられて防具のリストを提示された。

 そのリストを見たときに俺は青ざめてしまった。ああ、そうだった、おれは盗賊だ。硬い鎧なんて装備出来ないんだ!!
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