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六章 なぜか別ルートに入りました!
四十五話 遭難です!
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ああ、俺はいつもいつも、最後にやらかしてしまう。また同じ過ちを繰り返してしまった。
表彰式待ちの控室、ミヤビは案の定怒っていた。
「だからごめんって。俺だって必死になっていたんだ。」
「いやいや、ちょっと待ってくれたらよかっただけじゃないですか! まったくもう! 吹き飛ばされるし肉まんはもう無くなってるし!」
「肉まんは俺のせいじゃないだろ!」
それよりも、優勝することができてよかった。なんといっても今回のMVPは……
「トルク! 今回は君のおかげだよ、ありがとう!」
「ええ! 僕ですか!」
彼は、普段は大人しいが戦闘となると急に大胆な作戦を取るようになる。
今回の大会だって、一回戦といい、決勝戦といい、活路を見出したのはトルクだ。今回の優勝は、彼のおかげと言ってもいいくらいだ。
表彰式はあっさりと終わり、俺たちは次のエリアへの進出権と優勝賞金15,000ゴールドを手に入れた。
「やりましたね、これで金欠も解決できましたよ!」
「もうギャンブルはなしだからな。」
「そりゃそうですよ。もう次に行くんですから。」
名残惜しいリゾートだったが、ここに長居する理由はもうない。
何より、先に行くのが楽しみになっている。砂漠、南国ときて、次はどんな場所になるのか?
「そういえば、ミヤビはもう南国に思い残すことはないか?」
「いえ、もう大丈夫ですよ。それに今度、久しぶりに現実の故郷に帰省しようと思っているんです。」
「おお、思い切ったね。」
「でしょ! ですから、申し訳ないですけどその間はログインできないです。」
「いやいや、それは気にせずに行っておいで。」
心変わりがあったのか、それともこれが元々隠していた本心なのか。
俺もそのうち実家に顔を見せに行くか。俺も人のことを言えないくらいに帰っていないし。
次のエリア、W3には、このエリアの北から向かう。なんでも今回は徒歩ではないらしい。
マップが示している場所に着くと、そこは船着場だった。
「船に乗って行くんですか?」
「そうらしいよ。W3とは地続きになっていないようだからね。」
船を操縦する必要はないらしいから、そこは安心だ。
乗ればそれだけでW3に着くのだから、前回みたいに橋が壊れたりするようなこともないだろう。
「ここで待ったらいいらしい。」
指定された桟橋の上で三人待機していると、そのうち小型の帆船がやってきた。
「またまたRPGお決まりの感じの船が来ましたね。」
「トルクさんはどんなのが来ると思ったんです?」
「漁船みたいなやつ?」
「ハハ、それは夢がないよ。」
帆船はちょうどパーティー分の人数が乗れるほどの小さなもの。それでも帆は大きく、風を受ける音を大仰に鳴らしている。
やってきた帆船は俺たちの目の前で停止した。乗り込めということだろう。
「今回は手続きとかいらないんですね。」
「そもそも条件を満たしたパーティーのもとにしか船がやってこないからね。わざわざ確認する必要もないんじゃない?」
船に足を踏み入れると、ぐらっと揺れた。こうリアルだと、ゲームの中だというのに船酔いしないか心配になってしまう。
三人全員が乗り込むと、船は動き始めた。
「おお! 本当に勝手に動き始めた。」
船の舵が一人でに動いて、進路をとっていく。
船旅は、四十分程度だという。その間は船の中で自由にしてよいらしいが、あいにくこれといった娯楽もなく、ただ外を眺めているしかない。
それだから俺たちも、三人ともが一列に並んで、遠い水平線を見つめているという具合。ミヤビは特に退屈そうにしている。
そんな彼女の顔色が変わったのは、船が出てから十五分ほど経ったくらいだった。
「あれ、雲行きが怪しいですよ。」
ミヤビが見ている空は、本当の意味で雲行きが怪しかった。
暗く肥えた雲がずっと重なっている。明らかに雷雲だ。それがこちらへと向かってきている。
「タン、タン。」
木を叩く音がしたのでもしやと思い見ると、やはりそうだ。
「雨が降ってきたぞ!」
しかし、雨を凌ぐことはできない。帆船は小さいので、屋根も何もないのだ。
「ついてないですね。」
雲はもう俺たちの真上まで来ている。
雨につれて、波も荒れてきた。船が大きく揺れ、俺たちもバランスを崩しそうになってしまう。
「掴まったほうがいいですよ。」
「振り落とされるなよ!」
振り落とされたらどうなるかは知らないけど、良くないことは確かだ。
「ピシャ! ゴロゴロ。」
雷も鳴り始めて、いよいよ嵐だ。強風が帆船をあおりはじめた。
「まずいですよ! 船の様子がおかしいです。」
船の進路が急に逸れ始めたのだ。波に揺られるままに流されている感じ。
そのうち俺たちはもう船のへりに掴まることしかできなくなってしまった。顔に波をかぶって前も見えない。
しまいに、船は回転し始めた。
「うわああぁ!」
「もうだめですよ!」
そのまま転覆、俺たちは海に放り出されてしまった。
嵐の海の中、俺は自分がどこにいるのかさえ分からなくなったまま、気を失ってしまった。
次目が覚めると、そこは砂浜。W4かとも思ったが、辺りを見渡せば、そこは南国などではなかった。
表彰式待ちの控室、ミヤビは案の定怒っていた。
「だからごめんって。俺だって必死になっていたんだ。」
「いやいや、ちょっと待ってくれたらよかっただけじゃないですか! まったくもう! 吹き飛ばされるし肉まんはもう無くなってるし!」
「肉まんは俺のせいじゃないだろ!」
それよりも、優勝することができてよかった。なんといっても今回のMVPは……
「トルク! 今回は君のおかげだよ、ありがとう!」
「ええ! 僕ですか!」
彼は、普段は大人しいが戦闘となると急に大胆な作戦を取るようになる。
今回の大会だって、一回戦といい、決勝戦といい、活路を見出したのはトルクだ。今回の優勝は、彼のおかげと言ってもいいくらいだ。
表彰式はあっさりと終わり、俺たちは次のエリアへの進出権と優勝賞金15,000ゴールドを手に入れた。
「やりましたね、これで金欠も解決できましたよ!」
「もうギャンブルはなしだからな。」
「そりゃそうですよ。もう次に行くんですから。」
名残惜しいリゾートだったが、ここに長居する理由はもうない。
何より、先に行くのが楽しみになっている。砂漠、南国ときて、次はどんな場所になるのか?
「そういえば、ミヤビはもう南国に思い残すことはないか?」
「いえ、もう大丈夫ですよ。それに今度、久しぶりに現実の故郷に帰省しようと思っているんです。」
「おお、思い切ったね。」
「でしょ! ですから、申し訳ないですけどその間はログインできないです。」
「いやいや、それは気にせずに行っておいで。」
心変わりがあったのか、それともこれが元々隠していた本心なのか。
俺もそのうち実家に顔を見せに行くか。俺も人のことを言えないくらいに帰っていないし。
次のエリア、W3には、このエリアの北から向かう。なんでも今回は徒歩ではないらしい。
マップが示している場所に着くと、そこは船着場だった。
「船に乗って行くんですか?」
「そうらしいよ。W3とは地続きになっていないようだからね。」
船を操縦する必要はないらしいから、そこは安心だ。
乗ればそれだけでW3に着くのだから、前回みたいに橋が壊れたりするようなこともないだろう。
「ここで待ったらいいらしい。」
指定された桟橋の上で三人待機していると、そのうち小型の帆船がやってきた。
「またまたRPGお決まりの感じの船が来ましたね。」
「トルクさんはどんなのが来ると思ったんです?」
「漁船みたいなやつ?」
「ハハ、それは夢がないよ。」
帆船はちょうどパーティー分の人数が乗れるほどの小さなもの。それでも帆は大きく、風を受ける音を大仰に鳴らしている。
やってきた帆船は俺たちの目の前で停止した。乗り込めということだろう。
「今回は手続きとかいらないんですね。」
「そもそも条件を満たしたパーティーのもとにしか船がやってこないからね。わざわざ確認する必要もないんじゃない?」
船に足を踏み入れると、ぐらっと揺れた。こうリアルだと、ゲームの中だというのに船酔いしないか心配になってしまう。
三人全員が乗り込むと、船は動き始めた。
「おお! 本当に勝手に動き始めた。」
船の舵が一人でに動いて、進路をとっていく。
船旅は、四十分程度だという。その間は船の中で自由にしてよいらしいが、あいにくこれといった娯楽もなく、ただ外を眺めているしかない。
それだから俺たちも、三人ともが一列に並んで、遠い水平線を見つめているという具合。ミヤビは特に退屈そうにしている。
そんな彼女の顔色が変わったのは、船が出てから十五分ほど経ったくらいだった。
「あれ、雲行きが怪しいですよ。」
ミヤビが見ている空は、本当の意味で雲行きが怪しかった。
暗く肥えた雲がずっと重なっている。明らかに雷雲だ。それがこちらへと向かってきている。
「タン、タン。」
木を叩く音がしたのでもしやと思い見ると、やはりそうだ。
「雨が降ってきたぞ!」
しかし、雨を凌ぐことはできない。帆船は小さいので、屋根も何もないのだ。
「ついてないですね。」
雲はもう俺たちの真上まで来ている。
雨につれて、波も荒れてきた。船が大きく揺れ、俺たちもバランスを崩しそうになってしまう。
「掴まったほうがいいですよ。」
「振り落とされるなよ!」
振り落とされたらどうなるかは知らないけど、良くないことは確かだ。
「ピシャ! ゴロゴロ。」
雷も鳴り始めて、いよいよ嵐だ。強風が帆船をあおりはじめた。
「まずいですよ! 船の様子がおかしいです。」
船の進路が急に逸れ始めたのだ。波に揺られるままに流されている感じ。
そのうち俺たちはもう船のへりに掴まることしかできなくなってしまった。顔に波をかぶって前も見えない。
しまいに、船は回転し始めた。
「うわああぁ!」
「もうだめですよ!」
そのまま転覆、俺たちは海に放り出されてしまった。
嵐の海の中、俺は自分がどこにいるのかさえ分からなくなったまま、気を失ってしまった。
次目が覚めると、そこは砂浜。W4かとも思ったが、辺りを見渡せば、そこは南国などではなかった。
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