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四話 王都へ
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王都はもう目の前だ。
「え? 王都って本当にナレディ王国の? スペル、あなた私をからかおうとしてる?」
「そんなわけないだろ? あれは正真正銘ナレディ王国の王都、フラジアンだよ」
「でも、さっきからあんまり時間経ってないわよ? そんなに早く着くはずが……」
この感覚になれるのには時間がかかりそうかな? 僕の魔法は、普通に生きていればまず体験することのない速さで動く。王国の最南端にある僕の街からでも、ここまで二時間ちょっとで到着することができるのだ。
「中に入ってみれば分かるよ」
王都フラジアンに入るためには、手形が必要なのだけれど、これはナレディ王国国民全員に配られるものだから、僕も当然持っている。チューリピアは持っていないけれど、僕と同伴だから問題ない。
王都の門で馬から降りて、チューリピアの手を取り彼女も下に降ろした。
「都に入りたいのですが」
門にいた守衛に通行手形を見せながら、そう言うと、守衛は黙ったまま通ってよいというジェスチャーをした。
「こんなんでいいの?」
「実際何も問題が起きてないからね」
「へえ、魔都とはずいぶんと違っているのね」
都に来るのは久しぶりだけど、相変わらず活気に満ち溢れているな。さすがはこの国の都だ。国内、国外の様々な人が行きかい、それぞれの生業に精を出している。
初めてこの都を見るチューリピアは目を輝かせていた。
「すごいわ! 人間さんの国って、こんなに豊かなのね、こんなに明るいのね!」
「魔都は違うのかい?」
「豊かなのには違いないんだけどね……ちょっと暗すぎるというか」
「それは僕も思ってたよ。遠目から見ていてももやがかかって暗い」
「それが魔族としては落ち着くんだけどね。でもこういう輝きにずっとあこがれていたわ」
「……なら見て回ろうか?」
都のことは、僕もこの国の人間だから、まあまあ分かっているし、案内できる。僕はチューリピアの手を引いて、大通りに出た。
「ちょ! いきなりねあなたは! せっかちすぎるんじゃない?」
「王都は広いんだ。早く回っていかないと全然先に進まないよ」
困惑気味の彼女を連れていくと、いい匂いが風に乗って流れてきた。これは屋台の匂いだ! 香ばしさと一緒に向こうの方からやってくる。
「ギュル……」
「え? 何か言った?」
「……別に……ギュルル」
振り返ると、チューリピアは頬を赤らめていた。
「なんだ、お腹空いたんだ?」
「そ、そうよ! なんだって何よ! 悪いかしら!?」
「そんなことはないよ。だけど意外だな。お腹が鳴るのが恥ずかしいだなんて。やっぱり魔族でも女の子なんだね」
「ああもう! デリカシーないわよあなた! 消し炭にされたいの!?」
「あはは、ごめんってば。何か買ってあげるからさ」
僕がそう言うと、今度はチューリピアが僕の手を引っ張って屋台の方に連れていく。ちょっと怒ってるみたいだ。
屋台は通りにずらりと並んでいて、バラエティに富んでいる。海鮮やパン、その他の名物もろもろがあって、そのどれもがとても安い。観光するついでに腹を満たすにはもってこいだ。
「ねえねえ、私、あれがいいんだけど」
そう言ってチューリピアが指さしたのは、立ち並んでいる屋台の一番端の店。行ってみると、僕は思わずぎょっとしてしまった。
「トカゲじゃん……」
そう、トカゲの丸焼きを串に刺したものを売っていたのだ。客足はあまり寄り付いていない。当たり前だ。こんなもの、ゲテモノ枠だ。
「ほ、本当にこれが食べたいの?」
「そうよ、トカゲっておいしいじゃない!」
「そうかなぁ……僕は食べたことないけど」
「あら、そうなんだ。じゃあいい機会ね。一緒に食べましょ」
トカゲの丸焼きは一本50シードで売られている。僕の店で売っている麦酒が瓶一本で700シードだから、かなり安いだろう。それでもあまり売れてないようだけど。
店主にトカゲを買いたいと伝えると、彼は客が来ることを全く予想していなかったのか、大慌てで跳び起きてきた。
「へ、へい、じゃあ二本で100シードだね」
財布の中から、100シードを払ってトカゲを受け取り、僕たちは往来が少ない裏通りへと入った。日陰に入ってトカゲを一本チューリピアに渡した。
「人間さんが作ったものを食べるのは初めてね」
「人間の僕が言うのもなんだけどさ、警戒しないの? 異種族が作った食べ物ってのは」
「あまりしないわね。私たち上位魔族は毒を盛られたところで効かないもの」
「なるほど、じゃあお腹を壊したりってのもないんだ?」
「ないわね、まったく」
チューリピアはトカゲに頭からかぶりついた。
「おいひいじゃない!」
食べ物で喜ぶ顔もやっぱり人間の女の子と何も変わらないな。あの魔王の娘も随分と可愛いじゃないか……。
「ほら、スペルも早く食べなさいよ。冷めちゃうわ」
僕からしてみればトカゲがアツアツだろうが冷めきっていようが大した差はないのだけれど、意を決してかぶりついた。
「豪快ね! いいじゃない!」
「ありゃ……なかなかいけるぞ」
「ほらやっぱり! 食べず嫌いだったのよ!」
トカゲ舐めてたな……。
腹が満たされて、落ち着いた。
「ねえ、これからどうしていくの?」
チューリピアが僕の顔を横から覗いて聞いた。
「ああ、その話なんだけどね。ピンチかもしれない」
「へ? 何よ急に」
「さっきトカゲを買うときに気づいたんだけど……もうお金が残ってないみたいなんだ」
「え? 王都って本当にナレディ王国の? スペル、あなた私をからかおうとしてる?」
「そんなわけないだろ? あれは正真正銘ナレディ王国の王都、フラジアンだよ」
「でも、さっきからあんまり時間経ってないわよ? そんなに早く着くはずが……」
この感覚になれるのには時間がかかりそうかな? 僕の魔法は、普通に生きていればまず体験することのない速さで動く。王国の最南端にある僕の街からでも、ここまで二時間ちょっとで到着することができるのだ。
「中に入ってみれば分かるよ」
王都フラジアンに入るためには、手形が必要なのだけれど、これはナレディ王国国民全員に配られるものだから、僕も当然持っている。チューリピアは持っていないけれど、僕と同伴だから問題ない。
王都の門で馬から降りて、チューリピアの手を取り彼女も下に降ろした。
「都に入りたいのですが」
門にいた守衛に通行手形を見せながら、そう言うと、守衛は黙ったまま通ってよいというジェスチャーをした。
「こんなんでいいの?」
「実際何も問題が起きてないからね」
「へえ、魔都とはずいぶんと違っているのね」
都に来るのは久しぶりだけど、相変わらず活気に満ち溢れているな。さすがはこの国の都だ。国内、国外の様々な人が行きかい、それぞれの生業に精を出している。
初めてこの都を見るチューリピアは目を輝かせていた。
「すごいわ! 人間さんの国って、こんなに豊かなのね、こんなに明るいのね!」
「魔都は違うのかい?」
「豊かなのには違いないんだけどね……ちょっと暗すぎるというか」
「それは僕も思ってたよ。遠目から見ていてももやがかかって暗い」
「それが魔族としては落ち着くんだけどね。でもこういう輝きにずっとあこがれていたわ」
「……なら見て回ろうか?」
都のことは、僕もこの国の人間だから、まあまあ分かっているし、案内できる。僕はチューリピアの手を引いて、大通りに出た。
「ちょ! いきなりねあなたは! せっかちすぎるんじゃない?」
「王都は広いんだ。早く回っていかないと全然先に進まないよ」
困惑気味の彼女を連れていくと、いい匂いが風に乗って流れてきた。これは屋台の匂いだ! 香ばしさと一緒に向こうの方からやってくる。
「ギュル……」
「え? 何か言った?」
「……別に……ギュルル」
振り返ると、チューリピアは頬を赤らめていた。
「なんだ、お腹空いたんだ?」
「そ、そうよ! なんだって何よ! 悪いかしら!?」
「そんなことはないよ。だけど意外だな。お腹が鳴るのが恥ずかしいだなんて。やっぱり魔族でも女の子なんだね」
「ああもう! デリカシーないわよあなた! 消し炭にされたいの!?」
「あはは、ごめんってば。何か買ってあげるからさ」
僕がそう言うと、今度はチューリピアが僕の手を引っ張って屋台の方に連れていく。ちょっと怒ってるみたいだ。
屋台は通りにずらりと並んでいて、バラエティに富んでいる。海鮮やパン、その他の名物もろもろがあって、そのどれもがとても安い。観光するついでに腹を満たすにはもってこいだ。
「ねえねえ、私、あれがいいんだけど」
そう言ってチューリピアが指さしたのは、立ち並んでいる屋台の一番端の店。行ってみると、僕は思わずぎょっとしてしまった。
「トカゲじゃん……」
そう、トカゲの丸焼きを串に刺したものを売っていたのだ。客足はあまり寄り付いていない。当たり前だ。こんなもの、ゲテモノ枠だ。
「ほ、本当にこれが食べたいの?」
「そうよ、トカゲっておいしいじゃない!」
「そうかなぁ……僕は食べたことないけど」
「あら、そうなんだ。じゃあいい機会ね。一緒に食べましょ」
トカゲの丸焼きは一本50シードで売られている。僕の店で売っている麦酒が瓶一本で700シードだから、かなり安いだろう。それでもあまり売れてないようだけど。
店主にトカゲを買いたいと伝えると、彼は客が来ることを全く予想していなかったのか、大慌てで跳び起きてきた。
「へ、へい、じゃあ二本で100シードだね」
財布の中から、100シードを払ってトカゲを受け取り、僕たちは往来が少ない裏通りへと入った。日陰に入ってトカゲを一本チューリピアに渡した。
「人間さんが作ったものを食べるのは初めてね」
「人間の僕が言うのもなんだけどさ、警戒しないの? 異種族が作った食べ物ってのは」
「あまりしないわね。私たち上位魔族は毒を盛られたところで効かないもの」
「なるほど、じゃあお腹を壊したりってのもないんだ?」
「ないわね、まったく」
チューリピアはトカゲに頭からかぶりついた。
「おいひいじゃない!」
食べ物で喜ぶ顔もやっぱり人間の女の子と何も変わらないな。あの魔王の娘も随分と可愛いじゃないか……。
「ほら、スペルも早く食べなさいよ。冷めちゃうわ」
僕からしてみればトカゲがアツアツだろうが冷めきっていようが大した差はないのだけれど、意を決してかぶりついた。
「豪快ね! いいじゃない!」
「ありゃ……なかなかいけるぞ」
「ほらやっぱり! 食べず嫌いだったのよ!」
トカゲ舐めてたな……。
腹が満たされて、落ち着いた。
「ねえ、これからどうしていくの?」
チューリピアが僕の顔を横から覗いて聞いた。
「ああ、その話なんだけどね。ピンチかもしれない」
「へ? 何よ急に」
「さっきトカゲを買うときに気づいたんだけど……もうお金が残ってないみたいなんだ」
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