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四章 魔法教師
二十話
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三個目のハコの鳥は、歌い出すまでにしばらく時間を要した。あれ、この子は具合でも悪いのか。そうみんなが思い始めたところで、ようやく歌い出した。
「~~♪♪~~~~~~~」
神社でよく聞くやつじゃないか! いや、能だったっけ? 確か雅楽とか言ったか。いや、どうしてこの世界の鳥が雅楽とかやるんだ。どこから影響受けたんだよ一体。
またまた変わり種が来てしまった。このままの流れでいくと、子守唄っぽい感じで歌う子は一羽もいないのかしら。
結果、やはりというべきであろうか。一羽たりとも子爵の望むような歌を歌う鳥はいなかった。その後の子たちも、ラップ、レゲエ、オルタナと、みんなジャンルが違っていた。八羽目のフォークが一番惜しい気がしたが、若干ポップ感が混じっていて、とても安らかに眠れそうにはなかった。
九羽の鳥たちは、全員歌いたい音楽が違っていたのだ。これは難儀。何より問題なのは、誰一羽として子爵のニーズに答えていないということである。子爵はもはや笑うしか無くなっていた。
「鳥たちがこんなに主張が激しいとは……。」
子爵は呆れたように鳥たちを眺めていたが、もう諦めたという感じで僕の方に目を向けてきた。
「夜にコイツらの歌を聴くのはもうよそう。コイツらなりに思うところがあったんだろうからな。」
調べた結果、全員優しい歌なんて歌いたくない。そんな身も蓋もないことが判明してしまった子爵が少し気の毒だったので、僕は思いつきで提案した。
「眠れる歌を歌う鳥をお作りしましょうか? 」
子爵は目を丸くした。
「本当かね? いや、疑うつもりはないのだけれどね。……そんなことができるのかい? 」
「ええ、でもすぐには。まあそのうちですけどね。出来るかどうかも保証できませんけど、いいですか? 」
子爵分かりやすく元気を取り戻してきた。彼は立ち上がって僕のところまで来ると、両手を少し痛いくらいにガッシリと握った。
「ぜひとも頼むよ! ワイドのやつの件が終わった後でもいい。」
子爵の機嫌はすっかり良くなってしまった。こんなに期待されてしまうとキツくなってしまうが。僕は歌い鳥の遺伝子がいるからと話し、九羽のうちの一羽を預かりうけた。あの、雅楽を歌うやつだ。
とりあえずは丸く収まり、僕は仕事を完了した。子爵は自身の問題自体が解決してはいないというのに、気前よく金プレート二枚を渡してくれた。
もう何もやることはない。僕は子爵に挨拶して部屋から退室しようとした。が、そこでピオーネはまだ出ようとはしなかった。
「子爵、証言の方はよろしくお願いしますね。」
釘を刺したのだ。子爵の注文自体は聞いてやったから約束通りワイド伯の件の証言はしろということなのだろう。
「分かっておるさ、心配しなくても。」
子爵はピオーネにほとほと呆れてしまったようで、ため息混じりに笑った。
翌朝、僕たちはゴースを出立した。行きの反省を踏まえて、ピオーネは薬屋で酔い止めの錠剤を買ってから馬車に乗り込んでいる。
帰路は穏やかだった。いや、何度か魔物に遭ったのは遭ったのだが、酔い止めのおかげで絶好調だったピオーネが全て瞬殺してしまった。
帰りにも二日かかったのだが、行きよりは長く感じなかった。来た道を戻っているだけだからだろうか。馬車が揺れる山道も特段苦ではなかった。
荒れた山を降りると、雪の切れ目が見えた。懐かしい。いや、ほんの一週間程度だったのだけれど。けれど今は向こうに見える湿地一面が安らぎさえ与えてくれる。
「短いようで長かったですね。」
「そうだね、いろいろあった。」
「でも私は楽しかったですよ。旅人になったみたいで。」
ピオーネは振り返って山の遥かな向こうを見つめていた。彼女はまた軍人に戻る。そして、おそらくこれから、彼女たちはますます忙しくなってしまうのだろう。そう遠くないうちに。
ホルンメランの防壁は、すでに夕日に染まっている。守衛は欠伸をしながらぼーっとしていたが、僕たちの馬車を見ると慌てて敬礼した。
この日はもう遅い時間だったので解散した。使節の報告はまた明日ということで、僕は自宅の前に下ろしてもらった。
自宅の路地に入ろうというところで、ちょうど店じまいをしていたフィリムに出くわした。
「あらら、随分と久しいわね。おかえりなさい。」
彼女と会うのも一週間ぶり。でもその間も彼女には世話になっていた。ハプル等我が家の生き物たちの世話をしていてくれたのだ。
「留守の間はありがとうございます。」
「いえいえ、お互い様よ。」
ハプルたちは雑貨屋の奥の方で元気よく泳いでいた。数が半端なく増えていたのだが。まあ最近売っていないから仕方ないのだが。役所の一角で売り出してみるか?
自宅に入ると、旅の疲れが一気に吹き出してしまったようで力がみるみるうちに抜けていく。ベッドに入ると意識があっという間に沈んでいってしまった。
翌朝、僕とピオーネは官庁のアイラのもとにむかい、今回のゴース訪問の報告を行った。中身の濃い旅だっただけに報告も長かったが、何より注目を集めたのは、ピオーネがワイド伯爵の言葉を記録した魔法記録帳だった。
ピオーネが開いたページには、確かにあの日聞いたワイド伯爵の言葉が一言も漏らさず記録されていた。ピオーネが記録帳に書かれた文字をなぞると、それらが音になって聞こえ出した。間違いなくワイド伯爵の声だ。
全て再生し終えるとピオーネは記録帳を閉じた。
「以上がワイド伯本人がゴース官庁で話した内容です。」
これが全ての決め手だった。アイラはもちろん、その場にいた官吏たちも全員がニフラインへの侵攻に賛成した。
「正式には議会での承認と、セルギアン公の了解がいるが、ここまで証拠があれば何も問題ないだろう。ご苦労でしたね、二人とも。」
アイラはそう言って締めると、報告会を終了した。実際にニフラインとホルンメランの戦争が始まるかは分からない。始まるとしても、それはまた少し先の話だろう……
報告会が終わってから、僕は数日前からずっと気になっていたことをピオーネに聞いてみた。
「その魔法記録帳さ、ほんとに魔法使ってるの? 」
「ええ、そうですよ。見たことなかったですか? 」
「そりゃあね。魔法があるの自体初めて知ったからね。」
ピオーネは不思議そうに僕を見ていた。
「魔法を使える者に会ったことないのですか? 」
「ないな、そんな人。」
「人間には使えませんよ。魔族じゃないと。」
人間に使えないというなら、僕が会ったことないというのも頷ける。魔族なんてローブくらいしか会ったことないからな。
「この記録帳もさる魔族の方に作っていただいたんですよ。すごいですよねほんと。」
魔法が使える魔族か……確かに会ってみたいな。
そんな話をしてから五日ほど後のことだった。
『人間による低級魔法の使用を確認』
そんな衝撃的なニュースが公国、いや、世界中を駆け巡った。僕はそれを官庁で聞いた。兵士くんが騒いでいたのだ。
ゴースから帰ってきて、翌日は休日をいただいた。だからまた官庁に復帰したのは二日後だった。ライアンくんも兵士くんも元気にやっていたが、ひどく退屈そう。
彼らに聞いた話によると、一週間の間は目立った仕事が何もなかったようである。それはそうだ。依頼なんてしょっちゅうあるわけがないから。
僕が子爵から預かった歌い鳥や持ち帰った大蛇の卵に彼らは食いついた。動きもしない大蛇の卵をかじりつくように眺める様子をみると、よほどつまらない一週間だったのだろう。
そんな中に舞い込んできたこの魔法のニュースである。兵士くんが興奮してはしゃぐのはもちろんのこと、ライアンくんも大いに興味があるようだ。
「これってヤバいことですよ! 僕にも魔法が使えるかもしれないってことでしょう? 」
「それはどうか分からないけどね。クロードくんは魔法使ってみたいの? 」
「そりゃあそうでしょうよ。火とか出してみたいじゃないですか。ライアンさんは使ってみたくないんですか?」
「まあ少しは興味あるかな。」
そんな会話を朝からしていた。彼らは僕にも話を振った。
「タイセイさんも興味あるでしょう? 」
「いやあ。僕はそもそも魔法使ってる魔族の人なんて見たことないしな。」
「え、いやあるでしょ。見たこと。」
は? あるの? どこでだよ。
「ローブさん使ってたじゃないですか。あのハンカチ作るやつ。」
あ、あれ魔法だったんだ。本当に体の中に糸があるものだと思っていた。
今日も特に大きな仕事はなく、このような雑談をして一日を終えるのだと思っていた。だが……
「プルルルル!! 」
内線が鳴った。ライアンくんがそれに出た。彼は「ええ」とばかり繰り返して、そのうち会話を終えて内線を切った。そして彼は僕のへ振り返った。
「タイセイさん。首長がお呼びだそうです。首長室まで来いとのこと。」
「~~♪♪~~~~~~~」
神社でよく聞くやつじゃないか! いや、能だったっけ? 確か雅楽とか言ったか。いや、どうしてこの世界の鳥が雅楽とかやるんだ。どこから影響受けたんだよ一体。
またまた変わり種が来てしまった。このままの流れでいくと、子守唄っぽい感じで歌う子は一羽もいないのかしら。
結果、やはりというべきであろうか。一羽たりとも子爵の望むような歌を歌う鳥はいなかった。その後の子たちも、ラップ、レゲエ、オルタナと、みんなジャンルが違っていた。八羽目のフォークが一番惜しい気がしたが、若干ポップ感が混じっていて、とても安らかに眠れそうにはなかった。
九羽の鳥たちは、全員歌いたい音楽が違っていたのだ。これは難儀。何より問題なのは、誰一羽として子爵のニーズに答えていないということである。子爵はもはや笑うしか無くなっていた。
「鳥たちがこんなに主張が激しいとは……。」
子爵は呆れたように鳥たちを眺めていたが、もう諦めたという感じで僕の方に目を向けてきた。
「夜にコイツらの歌を聴くのはもうよそう。コイツらなりに思うところがあったんだろうからな。」
調べた結果、全員優しい歌なんて歌いたくない。そんな身も蓋もないことが判明してしまった子爵が少し気の毒だったので、僕は思いつきで提案した。
「眠れる歌を歌う鳥をお作りしましょうか? 」
子爵は目を丸くした。
「本当かね? いや、疑うつもりはないのだけれどね。……そんなことができるのかい? 」
「ええ、でもすぐには。まあそのうちですけどね。出来るかどうかも保証できませんけど、いいですか? 」
子爵分かりやすく元気を取り戻してきた。彼は立ち上がって僕のところまで来ると、両手を少し痛いくらいにガッシリと握った。
「ぜひとも頼むよ! ワイドのやつの件が終わった後でもいい。」
子爵の機嫌はすっかり良くなってしまった。こんなに期待されてしまうとキツくなってしまうが。僕は歌い鳥の遺伝子がいるからと話し、九羽のうちの一羽を預かりうけた。あの、雅楽を歌うやつだ。
とりあえずは丸く収まり、僕は仕事を完了した。子爵は自身の問題自体が解決してはいないというのに、気前よく金プレート二枚を渡してくれた。
もう何もやることはない。僕は子爵に挨拶して部屋から退室しようとした。が、そこでピオーネはまだ出ようとはしなかった。
「子爵、証言の方はよろしくお願いしますね。」
釘を刺したのだ。子爵の注文自体は聞いてやったから約束通りワイド伯の件の証言はしろということなのだろう。
「分かっておるさ、心配しなくても。」
子爵はピオーネにほとほと呆れてしまったようで、ため息混じりに笑った。
翌朝、僕たちはゴースを出立した。行きの反省を踏まえて、ピオーネは薬屋で酔い止めの錠剤を買ってから馬車に乗り込んでいる。
帰路は穏やかだった。いや、何度か魔物に遭ったのは遭ったのだが、酔い止めのおかげで絶好調だったピオーネが全て瞬殺してしまった。
帰りにも二日かかったのだが、行きよりは長く感じなかった。来た道を戻っているだけだからだろうか。馬車が揺れる山道も特段苦ではなかった。
荒れた山を降りると、雪の切れ目が見えた。懐かしい。いや、ほんの一週間程度だったのだけれど。けれど今は向こうに見える湿地一面が安らぎさえ与えてくれる。
「短いようで長かったですね。」
「そうだね、いろいろあった。」
「でも私は楽しかったですよ。旅人になったみたいで。」
ピオーネは振り返って山の遥かな向こうを見つめていた。彼女はまた軍人に戻る。そして、おそらくこれから、彼女たちはますます忙しくなってしまうのだろう。そう遠くないうちに。
ホルンメランの防壁は、すでに夕日に染まっている。守衛は欠伸をしながらぼーっとしていたが、僕たちの馬車を見ると慌てて敬礼した。
この日はもう遅い時間だったので解散した。使節の報告はまた明日ということで、僕は自宅の前に下ろしてもらった。
自宅の路地に入ろうというところで、ちょうど店じまいをしていたフィリムに出くわした。
「あらら、随分と久しいわね。おかえりなさい。」
彼女と会うのも一週間ぶり。でもその間も彼女には世話になっていた。ハプル等我が家の生き物たちの世話をしていてくれたのだ。
「留守の間はありがとうございます。」
「いえいえ、お互い様よ。」
ハプルたちは雑貨屋の奥の方で元気よく泳いでいた。数が半端なく増えていたのだが。まあ最近売っていないから仕方ないのだが。役所の一角で売り出してみるか?
自宅に入ると、旅の疲れが一気に吹き出してしまったようで力がみるみるうちに抜けていく。ベッドに入ると意識があっという間に沈んでいってしまった。
翌朝、僕とピオーネは官庁のアイラのもとにむかい、今回のゴース訪問の報告を行った。中身の濃い旅だっただけに報告も長かったが、何より注目を集めたのは、ピオーネがワイド伯爵の言葉を記録した魔法記録帳だった。
ピオーネが開いたページには、確かにあの日聞いたワイド伯爵の言葉が一言も漏らさず記録されていた。ピオーネが記録帳に書かれた文字をなぞると、それらが音になって聞こえ出した。間違いなくワイド伯爵の声だ。
全て再生し終えるとピオーネは記録帳を閉じた。
「以上がワイド伯本人がゴース官庁で話した内容です。」
これが全ての決め手だった。アイラはもちろん、その場にいた官吏たちも全員がニフラインへの侵攻に賛成した。
「正式には議会での承認と、セルギアン公の了解がいるが、ここまで証拠があれば何も問題ないだろう。ご苦労でしたね、二人とも。」
アイラはそう言って締めると、報告会を終了した。実際にニフラインとホルンメランの戦争が始まるかは分からない。始まるとしても、それはまた少し先の話だろう……
報告会が終わってから、僕は数日前からずっと気になっていたことをピオーネに聞いてみた。
「その魔法記録帳さ、ほんとに魔法使ってるの? 」
「ええ、そうですよ。見たことなかったですか? 」
「そりゃあね。魔法があるの自体初めて知ったからね。」
ピオーネは不思議そうに僕を見ていた。
「魔法を使える者に会ったことないのですか? 」
「ないな、そんな人。」
「人間には使えませんよ。魔族じゃないと。」
人間に使えないというなら、僕が会ったことないというのも頷ける。魔族なんてローブくらいしか会ったことないからな。
「この記録帳もさる魔族の方に作っていただいたんですよ。すごいですよねほんと。」
魔法が使える魔族か……確かに会ってみたいな。
そんな話をしてから五日ほど後のことだった。
『人間による低級魔法の使用を確認』
そんな衝撃的なニュースが公国、いや、世界中を駆け巡った。僕はそれを官庁で聞いた。兵士くんが騒いでいたのだ。
ゴースから帰ってきて、翌日は休日をいただいた。だからまた官庁に復帰したのは二日後だった。ライアンくんも兵士くんも元気にやっていたが、ひどく退屈そう。
彼らに聞いた話によると、一週間の間は目立った仕事が何もなかったようである。それはそうだ。依頼なんてしょっちゅうあるわけがないから。
僕が子爵から預かった歌い鳥や持ち帰った大蛇の卵に彼らは食いついた。動きもしない大蛇の卵をかじりつくように眺める様子をみると、よほどつまらない一週間だったのだろう。
そんな中に舞い込んできたこの魔法のニュースである。兵士くんが興奮してはしゃぐのはもちろんのこと、ライアンくんも大いに興味があるようだ。
「これってヤバいことですよ! 僕にも魔法が使えるかもしれないってことでしょう? 」
「それはどうか分からないけどね。クロードくんは魔法使ってみたいの? 」
「そりゃあそうでしょうよ。火とか出してみたいじゃないですか。ライアンさんは使ってみたくないんですか?」
「まあ少しは興味あるかな。」
そんな会話を朝からしていた。彼らは僕にも話を振った。
「タイセイさんも興味あるでしょう? 」
「いやあ。僕はそもそも魔法使ってる魔族の人なんて見たことないしな。」
「え、いやあるでしょ。見たこと。」
は? あるの? どこでだよ。
「ローブさん使ってたじゃないですか。あのハンカチ作るやつ。」
あ、あれ魔法だったんだ。本当に体の中に糸があるものだと思っていた。
今日も特に大きな仕事はなく、このような雑談をして一日を終えるのだと思っていた。だが……
「プルルルル!! 」
内線が鳴った。ライアンくんがそれに出た。彼は「ええ」とばかり繰り返して、そのうち会話を終えて内線を切った。そして彼は僕のへ振り返った。
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