美麗エルフは鬼畜極道に堕つ

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第2章 人間社会

第4話①

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 午前中、鷹臣の部屋での家事を終え、少しずつ着方にも慣れてきた巫女装束へと袖を通す。迎えに来てくれた慎吾の運転する車へと乗り込んだ。心なしか、道中の商店街などが昨日よりも賑わっている気がする。慎吾に聞いても理由が分からず、二人で首を傾げた。
 神社の裏手にある駐車場へと送ってもらい、礼を言ってから社務所へと向かうと、興奮状態の悠真が鼻息荒くセイルを出迎えた。

「待ってたよぉぉぉぉ! セイルちゃぁぁぁぁん!!!!」
「あわわわわわ」

 両肩を掴まれ、左右に揺さぶられる。ガクガクと体を振られて頭がクラクラする。目を回しかけたところでセイルの異変に気付き、悠真が手を離してくれた。

「あー、ごめん! 大丈夫!?」
「ら、らいひょうふ……れすぅ……」

 未だにクラクラしながらも何とか笑みを作った。本当はまだ少し眩暈のようなものを感じるが、我慢できない程ではない。

「ど、どうしたんですか? そんなに興奮して」
「見てよ! この! 賑わいをぉ!!」

 授与所の窓から境内を見れば、確かに大勢の人が参拝に訪れていた。閑古鳥の鳴いていた昨日までと同じ場所とは思えない。

「あっ、エルフちゃんだ!」
「わーっ! 本当だ、超綺麗!」
「えっ、本物!?」

 窓越しにセイルを見かけた人が大きな声を上げたことでドッと参拝客が授与所へと押し掛けた。窓が割れてしまいそうで怖くなる。

「やばい、セイルちゃん、外! とりあえず一回外出よう!」
「はいっ!」

 急いで境内へと出れば、セイルを中心に人だかりができた。スマホを向けられ、カシャカシャと写真を撮られる。どうして良いか分からず困惑していると、その光景を輪の外から見ていた悠真がキラリと瓶底眼鏡を輝かせた。

「はい、皆さーん、ストップ、ストップー! お写真を撮りたい気持ちはよ~く分かりますが、このままだと、セイルちゃんがちゃんとお仕事できません! という訳で、このお守りを購入された方には、お写真を撮れる特典を! お付けします!!」

 悠真が襟元からお守りを取り出し、高々と掲げた。一瞬、参拝客らはポカンとしたが、次々とお守りを買い求める声が相次ぐ。社務所へと戻り、授与所の窓を開けば、そこに長蛇の列ができた。
 お守りを渡しながら次々と写真撮影へと応じる。列はなかなか途切れることなく、夕方まで続いた。
 授与所の閉所時間を迎え、窓口のカーテンを閉めて片付け作業をしていると、窓を叩く音がする。受付が終了したことを伝えようとカーテンを開くと、そこには見知った顔が二人いた。

「梨々花さん、結月さん! 今日もいらしてくださったんですね」
「セイぽよおっつ~! バズり効果出た~?」
「はい、今日は本当にたくさんの参拝客の方がいらしてくださいました」
「それは良かったです。本当は学校が終わった後、私たちもすぐに神社に来たんですが、行列が見えたんで、ちょっと時間置いてから会いに行こうって話になって、近くの商店街でお茶することにしたんですけど、どこもいっぱいでビックリしました」
「セイルちゃん、どした~? ……って、梨々花様! 結月様じゃありませんかぁぁぁあ! そんな所で立ち話もなんですので、どうぞ中へお入りくださいませぇ!!」

 梨々花と結月の姿を確認するやいなや、悠真は社務所の外に二人を迎えに行き、ペコペコとお辞儀をしながら中へと案内する。そして、高級そうな包み紙の箱から菓子を出すと、玉露の茶と共に二人の前へと出した。

「粗茶でございますが、どうぞお召し上がりください」

 二人は得意顔になりながら茶と菓子を口にする。セイルもついでにと貰った菓子は上品な甘さで絶品だった。玉露とも合い、一日の疲れが癒されるようだ。

「で? 効果、あったっしょ」
「効果なんてもんじゃないですよ! あんなに人が来たの、いつぶりだか……」

 涙を流しながら喜ぶ悠真を見て、梨々花たちは得意げだ。
 聞けば、昨日の投稿は梨々花たち曰くバズったらしい。梨々花たちにとっても爆発的に格さんされたそうで、とても嬉しそうに話してくれた。

「いや~、お守り発注しといて良かったよ~! 在庫来た時には絶望したけど、今日で一気にはけたし、この調子なら明日以降も上手い具合に何とか発注した分なくなってくれそうだ。あっ、二人もいる? うちのお守り」

 悠真がいそいそとお守りを梨々花たちへと手渡した。それまで嬉しそうに話していた二人だったが、お守りの柄を見て表情が変わる。

「……可愛くない……」

 眉間に皺を寄せた梨々花がポツリと呟いた。隣に座る結月もウンウンと頷いている。

「お守りに可愛いも可愛くないもないから! それに、うちのこの大願成就のお守りは結構効果があるって言われたり言われなかったりしてるんだからね!? 」
「でも、女子高生にとって可愛いは正義ですから」
「うぐぅっ!!」

 半眼の結月がぴしゃりと言い放つ。悠真は胸を打たれたように心臓に手を当て、誰が見ても分かりやすく落ち込んでいた。

「あの、このお守りって、良かったら私にも一つ貰えますか?」
「別に良いけど……」

 悠真がお守りをもう一つ取りに行ってくれた。手渡された水色のお守りを眺めながらフフッと笑う。

「セイぽよ、どしたん?」
「これで私も梨々花さんたちとお揃いだなぁと思いまして。嬉しくなっちゃいました」

 フニャリと笑むと、その場にいた三人全員が左胸を押さえてうずくまる。

「セイぽよ、可愛すぎか……」
「無理、可愛いがすぎます……」
「惚れてまうやろぉぉぉ!」

 三人のオーバーリアクションに目を丸くしていたが、しばらく悶えた後、三人はやっと元の通りになってくれてホッとする。梨々花たちは鞄につけていたお揃いの熊の縫いぐるみと一緒にお守りを携帯してくれることになった。パステルピンクの熊の隣で「大願成就」と筆文字で書かれた水色のお守りが揺れている。それを見ただけで何だか嬉しくなってしまった。揃いの物というのは、互いの一体感を高めてくれる。同じ物を持っただけで、二人と更に仲良くなれた気がするから不思議だ。

「まあ、これはセイぽよとのお揃だから良いとして、こんな可愛くないお守りじゃあ、せっかく人気出てもお守り買ってくれる人あんまりいないよ」
「そうですね。せっかくなら、これを機会に恋愛守りとか新しくデザインしてみてはいかがですか?」
「新しくって言っても、僕、そんなデザインセンスとかないし、そういうののデザインとかだって、発注したら相当お金かかるだろうからさぁ……」

 チラリと悠真に助けの目を寄せられるが、ブンブンと手を振って無理だと伝える。ファッションにすらこだわりのないセイルにとって、何かをデザインするなんてしたいと思ったこともない。
 不可能だと分かると、悠真は更に落ち込んだ。慰めてあげたくとも、センスの欠片もないセイルでは何と言ってあげれば良いかも分からない。

「そういう時こそ~、梨々花様の出番ってやつ~ぅ?」

 悠真の前に座っていた梨々花が腕組みをしてドヤ顔をする。その言葉にガバリと頭を上げた悠真の視線は梨々花へとくぎ付けになっていた。

「梨々花はデザイナー志望だから、いろいろと可愛い物をデザインするのも得意なんですよ。このお揃の熊も梨々花のデザインですし」

 鞄につけた熊の縫いぐるみを手にして結月が嬉しそうに揺らした。そして、スマホの画面をセイルたちへと見せる。梨々花のSNSのページには服や小物など、様々なデザインが載せられていた。どれも女性が好みそうな可愛らしい造形だ。

「梨々花様ァ! 是非とも! 新しいお守りのデザインを! 何卒、何卒よろしくお願いいたしますぅぅぅぅ!!!!」

 テーブルに頭がつきそうになるくらい悠真が二人へと礼をする。二人からの返事は快諾だった。
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