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ファーストちゅーは、何味だ

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 当初は予算がどうのこうの言ってた癖に、本当このお風呂には無駄にこだわりを感じる。……セルドアの趣味だろうか。
 まあ、快適だから良いんだけど。

「……ぴぎゅーぴぎゅー」

「はいはい。そこがまだ取れてないのね。きちんと洗うから」

 口の先を一生懸命伸ばして、羊膜が絡まっている部分を指し示すラドの喉を人撫でして、風呂の泡でこしこしと洗う。
 ラドは気持ちよさそうに、うっとりと目を細めていた。



「……はい。終わり、っと」

 湯冷めしないように素早く服を着て、風呂上がりのラドをタオルで隅々まで拭いてやる。

「しかし……こうやって綺麗な状態でみると、めちゃくちゃ格好いいねー。ラド」

 ぬいぐるみサイズの小型でも、ちゃんと竜。風呂のせいかか青い鱗がきらきら輝いていて大変格好良い。
 羊膜が絡まった羽も今ではしっかりと開いている。

 私の言葉にラドは嬉しそうに羽をはためかせた。

「生まれてすぐに、羽を動かせるのかー。飛べるようになるのも、多分あっという間だね」  

 鶏や、コカトリスは飛べないから良く分からないけど、飛べる鳥の場合は雛が飛べるようになるまでどれくらいかかったんだったのかなー、と思った途端、ひゅんと風を感じた。

「……本当、あっという間だ」

 さすが、ドラゴン。よくよく考えれば、卵でもばりばり意思があるくらいだ。私の常識に当てはめてはいけない。

「ぴぎゃあ♪」

 私の鼻先までぱたぱたと飛んで来たラドは、すごいでしょうとでも言うように、胸を張った。

 ……あ、フォルムは格好良いのに、お腹は少しぽっこりしてる。幼児体型なんかな。可愛い。白くてつるつるしてるし、つつきたくなる。

「……て、近い。ラド近い」

 まだ飛ぶのに慣れてないのか、どんどん私の顔に近づいてくるラド。

 ぶつかる、このままじゃぶつかるって。

 ラドの体を掴んで止めようとしたが、遅かった。

「………あ」

 ありゃー……ラドの口先が、私の唇にぶつかってもうた。

 私の(そしてラドの)ファーストちゅーが……。
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