転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

胸に刺さる刺

　ハミルさんの言葉は、きっと正しくて。
　だからこそ、受け入れたくなかった。
　私は、間違ってない。私は、誰も傷つけない道を選んだだけだ。

　家族が大好きで、大切だから。
　悲しませたくないと思って何が悪いんだろう。

「っ……リッカちゃん」

　気がつけば、目から涙が伝っていた。
　ハミルさんが慌てて、ラドが心配そうに私の顔を覗き込んでいたけど、涙は止まらなかった。

「……言わない真実なら、無いと一緒でしょう？」

「…………」

「秘密にしてた事実すら知らないんだから、それなら、傷つくことはないでしょう？」

　そうであって欲しい。
　そうで無いと、いけない。

　……だって、もう会えない。
　もう、二度と取り返しはつかない。

「私は……私は、間違ってなんかいません……！」

　ーーリッカ・カートの家族はこの世界にいるけれど、同じくらい大切でかけがえのない加藤梨花の家族は、ここにはいないのだから。

『梨花は、良い子過ぎるんだよ。もっとワガママを言えよ。ワガママを。……俺ができることなら、何でも聞いてやっからよ』

『お前の本音を聞かせろ！　……本当は、養鶏場の仕事なんかしないで、遊んでたいんじゃねぇのか？　なあ？』

『男にはな……いや、女もか？　まあ、大事なもんを守る為には、ぶつからねぇといけねぇ時があんだよ。家族とか、信念とか、そういうもんを守る為にな。……梨花がぶつかれねぇなら、俺がお前の代わりにぶつかってやんよ。俺はお前の兄貴だからな。だから俺に隠し事なんかすんなよ？』

　…………ごめん。ごめんね。兄ちゃん。
　あんなに、本音を話せって何度も何度も言ってくれたのに。
　あんなに、私の意思を尊重しようとしてくれたのに。

『……梨花には、ずっと悪いことをしたな。本当は農業なんかしたくなかっただろうに、俺がこんなんだから、自分が跡継ぎにならなきゃなんて責任を感じてたんだろう?　高校まで農業高校になんて行かせちまって……梨花は成績は良いんだし、今からでも遅くない。高校から先は、本当に自分が行きたい道に進んでくれ。今までの償いに、学費なら俺が何とかするから』

　後悔を滲ませながらも、ようやく私の為に何かできるってどこか誇らしげな兄ちゃんを見たら、やっぱり何も言えなかったんだよ。