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黙っていれば
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「……いい匂いだな」
料理を持っていくなり、ベッドに寝ていたハルクはもぞもぞと上体を起こした。
「はい。熱いから気をつけてね」
お盆をサイドテーブルに置いてやると、ハルクはそろそろと器に手を伸ばした。……おお。弱っているせいか、いつもより素直な感じするな。
おさじですくった雑炊粥を、ふうふうと息を吹きかけて冷まして(ちょっと癪であるが、病弱で寝込んでる美少年って感じで可愛らしい。……黙っていれば普通に美少年なんだよなあ。ハルク。年齢詐欺の合法ショタだけど)口に運び、ハルクは大きく息を吐いて目を細めた。
「…………うまい。ミスミスタケとティーアの葉の味が、よく出てる」
「なら、よかった」
「ただ病人食に使うなら、ナハルニアサタケとか、ターテッリア草とかの方が薬効があったな。何で使わなかった?」
…………本当に、黙っていればなあ。
てかナルニアサタケとか、ターテッリア草ってなんだよ。生まれてはじめて聞いたわ。あの謎の乾燥植物類々の中から探せるかってんだ。
「……なんだか、飯を食べたら喉が乾いたな」
「水も持って来てるけど?」
「甘いものが食べたい。リンプルの実を剥いてくれ。そこの箱の中にあるから」
「……へいへい。おーせのままに」
なんか、すっかり甘えモードに入ってないか? ハルク。まあ、リンプルの実を剥くくらい簡単だから良いんだけど。
病人のハルクはどうやら皮を剥かずにそのままリンプルの実をかじっていたらしく、箱の近くのゴミ箱の中には食べ終わった芯がいくつか入っていた。
見渡してもナイフも皿もなさそうなので、再び台所に戻って皮を剥き、食べやすいよう小さく切ってやる。
「……お土産のドライフルーツ入りのケーキは、消化に悪そうだから今日は無理だな」
甘党のハルクなら無理してでも食べそうだから、とりあえず隠しておこう。
こっそり持って来ていたお土産の袋を客間に置いて、切ったリンプルの実を持っていくと、ハルクはすっかり雑炊粥の器を空にしてた。
……こんだけ食欲あれば、すぐ治りそうだな。
料理を持っていくなり、ベッドに寝ていたハルクはもぞもぞと上体を起こした。
「はい。熱いから気をつけてね」
お盆をサイドテーブルに置いてやると、ハルクはそろそろと器に手を伸ばした。……おお。弱っているせいか、いつもより素直な感じするな。
おさじですくった雑炊粥を、ふうふうと息を吹きかけて冷まして(ちょっと癪であるが、病弱で寝込んでる美少年って感じで可愛らしい。……黙っていれば普通に美少年なんだよなあ。ハルク。年齢詐欺の合法ショタだけど)口に運び、ハルクは大きく息を吐いて目を細めた。
「…………うまい。ミスミスタケとティーアの葉の味が、よく出てる」
「なら、よかった」
「ただ病人食に使うなら、ナハルニアサタケとか、ターテッリア草とかの方が薬効があったな。何で使わなかった?」
…………本当に、黙っていればなあ。
てかナルニアサタケとか、ターテッリア草ってなんだよ。生まれてはじめて聞いたわ。あの謎の乾燥植物類々の中から探せるかってんだ。
「……なんだか、飯を食べたら喉が乾いたな」
「水も持って来てるけど?」
「甘いものが食べたい。リンプルの実を剥いてくれ。そこの箱の中にあるから」
「……へいへい。おーせのままに」
なんか、すっかり甘えモードに入ってないか? ハルク。まあ、リンプルの実を剥くくらい簡単だから良いんだけど。
病人のハルクはどうやら皮を剥かずにそのままリンプルの実をかじっていたらしく、箱の近くのゴミ箱の中には食べ終わった芯がいくつか入っていた。
見渡してもナイフも皿もなさそうなので、再び台所に戻って皮を剥き、食べやすいよう小さく切ってやる。
「……お土産のドライフルーツ入りのケーキは、消化に悪そうだから今日は無理だな」
甘党のハルクなら無理してでも食べそうだから、とりあえず隠しておこう。
こっそり持って来ていたお土産の袋を客間に置いて、切ったリンプルの実を持っていくと、ハルクはすっかり雑炊粥の器を空にしてた。
……こんだけ食欲あれば、すぐ治りそうだな。
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