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ルカ・ポアネスという不良
ルカ・ポアネスという不良15
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だからこそ、隷属魔法は禁呪となった。
一度契約を交わしてさえしまえば、簡単に人を壊すことが出来る代物だから。
だが、禁呪となっても尚、その利便性から、失われた魔法を求めるものは絶えない。
そんな魔法を、どうしてかは分からないが、デイビッドは使役できるのだ。ならば、【ペナルティ】を利用して「従なるもの」である私を、完全に自分の都合よく作り替えることが、一番効率の良いやり方だ。
前にも言ったように、隷属契約がボレア家に心酔する者に知られれば、それはデイビッドにとって破滅を意味する。そしてそれは私の行動次第では、簡単に訪れる可能性がある未来だった。
そんな事態を防ぐためには、倫理観など無視して【ペナルティ】で私を調教することが客観的に見て最善な行動だろう。
だが、デイビッドは口で脅しはしても、一度も【ペナルティ】を使ったことは無い。
何かあった際の罰は、いつも、自らの手で行う。
いくら私が比較的従順な行動をとっているとはいえ、ここまで使用しないことを鑑みると、それがデイビッドの意志によるものだと考えて間違いないだろう。
デイビットは【ペナルティ】を使用することを、忌諱している。
それは隷属魔法の使い手として、実に愚かで甘い行動だと言うことは、過去の実例が物語っている。
けれども。
「デイビッドは、愚かで、甘いわ――だけど、そんなデイビッドだからこそ、私は従うの」
けれども、それは、私を、「ルクレア・ボレア」を支配するには、最善の方法だ。
「【ペナルティ】で私を壊してまで従えると言うのなら。私が『ルクレア・ボレア』として生きられなくなるというのなら、私は何をしてでもデイビッドに逆らうわ――例えその代償が私の命だとしても」
【ペナルティ】は生殺与奪に関する命令は、出すことが出来ない。
つまり、「従なるもの」に死を禁じることもまた、出来ないのだ。
「主なるもの」が隷属魔法を自発的に解除するか、第三者の手で命を落とさない限り、「従なるもの」は、ただ自身の死によってのみ、契約を解消することが出来るのだ。
『もし、デイビッドが私にボレア家の名を汚す行為を命じたら』
以前も想定した、その問いの答えは変わらない。例え何があろうと、私はその命令に抗う。
そして【ペナルティ】によって、私が私なくなるという行為もまた、ボレア家の名に泥を塗ることだ。
私は、私だ。
前世も今世もひっくるめて、私は「ルクレア・ボレア」という人間だ。
「ルクレア・ボレア」であり続けることが、私の矜持だ。穢すことは絶対に許さない。
死ぬことは、怖い。
今世で輪廻転生などというものがあることを知ったが、だからといって、来世でも必ずそれがあるとは限らない。
死を恐れないなんて、そんなこと、簡単には出来ない。
恵まれた今の自分の境遇を、惜しみもする。
けれども、私は、私が私として生きられないことの方が、もっと怖い。
誇りを穢されることの方が、死よりも、よほど辛い。
そんな価値観を、今世の17年間の人生の中で私は培った。
もし過剰な【ペナルティ】によって、隷属させられるなら、私は死を選ぶ。
そして私が死ねば、「主なるもの」は、ボレア家の手にかかって、破滅させられるだろう。私を愛してくれる両親は、娘を死に追いやったものを、誰であろうとけして許しはしないだろうから。
だからこそ、私を完全に掌握するならば【ペナルティ】を使わないことこそが、最終的には一番賢明なのだ。
そしてデイビッドは、「正しい」道を選択した。
そんなデイビッドだからこそ、私は私の主であることを、認めているのだ。
「――そやな。あんたはそんな女や」
キエラは私の言葉に、暫らくの間黙り込んだ後、大きくため息を吐いて微笑んだ。
「だからこそ、デイビッドは、面白いんや。……驚く程危険な賭けの中で、知らぬ間に最善の道を選んでいるような、そんな男やから」
一度契約を交わしてさえしまえば、簡単に人を壊すことが出来る代物だから。
だが、禁呪となっても尚、その利便性から、失われた魔法を求めるものは絶えない。
そんな魔法を、どうしてかは分からないが、デイビッドは使役できるのだ。ならば、【ペナルティ】を利用して「従なるもの」である私を、完全に自分の都合よく作り替えることが、一番効率の良いやり方だ。
前にも言ったように、隷属契約がボレア家に心酔する者に知られれば、それはデイビッドにとって破滅を意味する。そしてそれは私の行動次第では、簡単に訪れる可能性がある未来だった。
そんな事態を防ぐためには、倫理観など無視して【ペナルティ】で私を調教することが客観的に見て最善な行動だろう。
だが、デイビッドは口で脅しはしても、一度も【ペナルティ】を使ったことは無い。
何かあった際の罰は、いつも、自らの手で行う。
いくら私が比較的従順な行動をとっているとはいえ、ここまで使用しないことを鑑みると、それがデイビッドの意志によるものだと考えて間違いないだろう。
デイビットは【ペナルティ】を使用することを、忌諱している。
それは隷属魔法の使い手として、実に愚かで甘い行動だと言うことは、過去の実例が物語っている。
けれども。
「デイビッドは、愚かで、甘いわ――だけど、そんなデイビッドだからこそ、私は従うの」
けれども、それは、私を、「ルクレア・ボレア」を支配するには、最善の方法だ。
「【ペナルティ】で私を壊してまで従えると言うのなら。私が『ルクレア・ボレア』として生きられなくなるというのなら、私は何をしてでもデイビッドに逆らうわ――例えその代償が私の命だとしても」
【ペナルティ】は生殺与奪に関する命令は、出すことが出来ない。
つまり、「従なるもの」に死を禁じることもまた、出来ないのだ。
「主なるもの」が隷属魔法を自発的に解除するか、第三者の手で命を落とさない限り、「従なるもの」は、ただ自身の死によってのみ、契約を解消することが出来るのだ。
『もし、デイビッドが私にボレア家の名を汚す行為を命じたら』
以前も想定した、その問いの答えは変わらない。例え何があろうと、私はその命令に抗う。
そして【ペナルティ】によって、私が私なくなるという行為もまた、ボレア家の名に泥を塗ることだ。
私は、私だ。
前世も今世もひっくるめて、私は「ルクレア・ボレア」という人間だ。
「ルクレア・ボレア」であり続けることが、私の矜持だ。穢すことは絶対に許さない。
死ぬことは、怖い。
今世で輪廻転生などというものがあることを知ったが、だからといって、来世でも必ずそれがあるとは限らない。
死を恐れないなんて、そんなこと、簡単には出来ない。
恵まれた今の自分の境遇を、惜しみもする。
けれども、私は、私が私として生きられないことの方が、もっと怖い。
誇りを穢されることの方が、死よりも、よほど辛い。
そんな価値観を、今世の17年間の人生の中で私は培った。
もし過剰な【ペナルティ】によって、隷属させられるなら、私は死を選ぶ。
そして私が死ねば、「主なるもの」は、ボレア家の手にかかって、破滅させられるだろう。私を愛してくれる両親は、娘を死に追いやったものを、誰であろうとけして許しはしないだろうから。
だからこそ、私を完全に掌握するならば【ペナルティ】を使わないことこそが、最終的には一番賢明なのだ。
そしてデイビッドは、「正しい」道を選択した。
そんなデイビッドだからこそ、私は私の主であることを、認めているのだ。
「――そやな。あんたはそんな女や」
キエラは私の言葉に、暫らくの間黙り込んだ後、大きくため息を吐いて微笑んだ。
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