乙女ゲームの悪役令嬢に転生したら、ヒロインが鬼畜女装野郎だったので助けてください

空飛ぶひよこ

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アルク・ティムシーというドエム

アルク・ティムシーというドエム20

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「くっ……流石は貴族の子息令嬢が認めたカフェテリアの人気メニュー。……そう、やすやすとは味を盗ませてはくれないか……」

 料理に関することならば、1を聞けば10を知る、わがボレア家が誇る精鋭料理人すら模倣出来ないとは、あっぱれカフェテリアスタッフ。
 味を出来立てのまま留める、特殊魔具のバスケット(王族とボレア家しか持たない国宝級の逸品。値段はつけられない代物だが、普通に使っている)を使用しているから、時間経過による優劣ではない。根本的に色々違うのだ。

 うーん、単純そうに見えて、実に奥が深いな。料理というものは。


「……よくわからねーけど、んなに外でカフェテリアのパフェが食いたいなら、言えばテイクアウトくらいさせてくれんじゃねぇの?」

「……うっ」

 そんなことを考えながら、私の分のパフェをシルフィとディーネにあーんさせて食べさせていた手が(まあまあだのなんだの言っていた癖に、サーラムはズルイズルイと引っ付いてくるし、ノムルはまるで餌を待つ雛鳥のように既に口を開けて待機している……愛い奴らめ)、デイビッドの鋭い突っ込みに止まる。

「……いや、ほら、あれだ。わざわざカフェテリアに出向くの面倒じゃない? えと、その、お金もかかるしさ。だから、家で好きな時に作って貰えたらって。だから、その練習? も兼ねて作って貰ったわけだよ、うん」

「……金持ちの癖に何ケチ臭いこと言ってんだよ。んなにうまいパフェなら、作った奴に敬意を持って、ちゃんと食いに行くべきだろ。卒業してなかなか食いに来れねーからとかなら、ともかく」

 ……ぐ、正論……。

 そうなんだよね。あれだけ、おいしいパフェなんだから、味盗ませようなんて考えずに、製作者に敬意を払って買うべきなんだよね。

 ひっそり反省しながら、指についた生クリームを舐める。……やっぱり、カフェテリアの生クリームとは全然違う。
 思わず溜め息が出た。

 ――だけど、何となく、いやだったんだ。

 マシェルから教えて貰ったパフェを、そのまま受けいりでデイビッドに食べさせるのが何となく嫌で、でもすっごく美味しいから一度食べさせてみたくて、その葛藤の結果が、これである。

 ……いや、別にさ、そんな気にすることじゃないとは思うんだけど……なんとゆーか。うん、何か嫌だった。
 マシェルに対しても、デイビッドに対しても、不誠実な気がして。


 ……まあ、別に私は二人とそんな深い関係でもないし、その結果がこの再現率じゃあ、ざまぁないけど。

 そう思った途端、なんか急激に気持ちが凹んできた。

 ――なんていうか、私自意識過剰? 何一人で変に気にしちゃってんの? そんな些細なことさ。
 うわ、考えたら、急に恥ずかしくなってきた。何やってんの私。完全に一人で空回りしてるじゃないか。恥ずかしい。


「――まあ、でも」

 一人悶々とする私をよそに、デイビッドは食べたパフェのカップを差し出す。
 いつの間にかデイビッドのパフェは綺麗に空になっていた。

「庶民の俺としては、お前の思惑がどうであれ、こうやってタダでうまいもん食えるのはありがたいがな。いちいち高ぇんだ、ここの食い物。また再試作したら食わせろよ」


 ………ん? あれあれ?

 これってもしかして、私が凹んでいるのを見てフォローしてくれてるの?

 ちらりとデイビッドの方を見ても、その顔はどこか気だるげなだけで、真意は読み取れない。

 ……考え過ぎかな? 単に言葉のまんまかも知れない。

 ゲームでエンジェが、食堂が高すぎて、とても毎日なんか通ってられないって自炊してるシーンあったし。自炊中心なら、貰える食べ物はなんだってありがたいだろう。深い意味はないかも知れない。

 だけど。

「……へへっ」

「……なあに間抜けな顔で笑ってやがる」

「何でもないデース」

 だけど、どうしようもないくらい胸の奥が温かくなった。
 サーラムとノムルにも一口あげて自分の分のパフェも空にしてしまうと、にやける顔を引き締めるかのように、すました様子でお茶を口に運ぶ。

 うん、お茶は間違いなく美味しい。この温かさが、今の気温に最高にマッチしている。

 上を見上げれば、まだ明るい青空と、赤や黄色に色を変えている木々が目に入る。枝の上では鳥が、赤く熟した身を美味しそうに啄んでいる。
 夏場よりも冷涼を増した風が、薄い上着を羽織った体に心地よくそよぐ。

 ……秋、だなぁ。

 夏の暑さが去り、本格的に寒気が増す前の、一番良い季節かも知れない。
 そういえば、もうデイビッドに出会って半年近くにもなるのか。……短かったような、長かったような……。

 思わず、しんみりとしてしまう。


「―――で?」

 不意にかけられたデイビッドの声に、トリップしていた思考が引き戻された。

「ん?」

「で? ――今度は何を聞きたくて、ここまで来たんだ?」


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