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アルク・ティムシーというドエム
アルク・ティムシーというドエム28
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10日が、二週間になり、二週間が、一月になった。
嫌なこと言うものは、先伸ばしにすればするほど、なお一層嫌になるものである。
日を追えば追うほど、私は精霊と接するのが嫌で嫌で仕方なくなっていた。
けれども、私の中に、精霊との主従契約を破棄する気なんかは毛頭なかった。
5歳で、4体もの人型精霊を従えたという名声に、私は執着していた。そして、私が精霊達を従えた話は、貴族の間ではすっかり有名になってしまっていた。
今更、精霊達が思い通りに動かないので、契約を破棄しましたなんて、言えやしない。そんなことは、私のプライドが許さない。
それに、精霊達との契約破棄をすることは、前世のゲームの中のルクレアに私が負けたことに他ならない。
私という魂が、無能だったということを証明してしまう。……そんなこと、許せるはずがない。
何としてでも、精霊達を従順に調教しなければならない。……けれど、今の精霊達を思うとそんなことを実現できるとは、到底思えなくて。
精霊達に対して葛藤を、焦躁を抱けば抱くほど、私のデイビッドに対する遊びを加速させた。
そして遊びが盛り上がれば盛り上がるほど、デイビッドの私に対する想いは一層強いものになっていった。
『クレア。……お前と一緒だと一日がすげぇ早いんだ。……お前との別れの日がそれだけ早く来そうで、こわい』
『来月には、もう帰るのか? ……帰るな。帰らないでくれ。……ずっと、ここにいろよ』
『クレア。……俺はお前が……お前のことが……お前のことが、すごい好きだ。……離れたくない』
日に日に真剣味を増していく、デイビッドの言葉にぞくぞくした。
相手はたかが5歳児。いくらませたことを言っても、その台詞に篭った想いだって、私に向ける恋心だって遊びの延長戦上に過ぎないことは分かっている。
所詮子どもの恋。一年も経てば忘れているような、その程度のこと。本気もなにもありがしない。
冷めた胸の内でそう思う一方で、そんなデイビッドの恋心に、不安定な精神が安定する自分がいた。
人を意のままに操れる能力があることを、証明したかった。
誰かに、特別な存在だと、そう想わせることで、自分が特別な存在であると、そう思いたかった。
デイビッドの想いは、そんな私の要求を満たしてくれていたのだ。
当時の私は、ただひたすらに自分のことだけを考えていた。
他者のことなんて、考えられないくらい、ただ自分のことだけでいっぱいいっぱいだった。
『――ルクレア。随分と長居をしてしまったけど、明日の夕方にはこの村を去ろう。いい加減、領地の仕事も溜まっている。……親しくしてくれたお友達に、明日お別れをしておいで』
だから、父からそう告げられた時に私の頭を占めたのは、これで明日からは精霊達とまた向き合わなければならなくなるという、憂鬱感だけだった。
『クレア! ……今日、父さんに聞いたんだけど、お前、夕方には村を出るって本当か!?』
『……ええ。本当よ』
息せき切って駆け付けて来たデイビッドに、私は力ない笑みを返した。
『もう、荷造りも馬車の手配も全てすんでいる。……あとはただ、乗り込むだけ』
私の言葉に、デイビッドは泣きそうに顔を歪めた。
『そんな……だって昨日会った時には、まだ日付けまでは分からないって、お前……』
『私も、昨日の夜になって初めてお父様から聞いたのよ。……こんなに急になるなんて思ってなかったわ』
そう言って首を横に振ると、私もまた泣きそうな表情を意識して作りながら、デイビッドに小さく笑いかけてみせた。
『……さよならよ。デイビッド。貴方のお蔭でこの一月、とても楽しかったわ。本当にありがとう』
――さぁ、最後の遊戯の時間のはじまりだ。
貴族らしく、優雅に、デイビッドの初恋終わりの一幕を演じてあげるとしよう。
嫌なこと言うものは、先伸ばしにすればするほど、なお一層嫌になるものである。
日を追えば追うほど、私は精霊と接するのが嫌で嫌で仕方なくなっていた。
けれども、私の中に、精霊との主従契約を破棄する気なんかは毛頭なかった。
5歳で、4体もの人型精霊を従えたという名声に、私は執着していた。そして、私が精霊達を従えた話は、貴族の間ではすっかり有名になってしまっていた。
今更、精霊達が思い通りに動かないので、契約を破棄しましたなんて、言えやしない。そんなことは、私のプライドが許さない。
それに、精霊達との契約破棄をすることは、前世のゲームの中のルクレアに私が負けたことに他ならない。
私という魂が、無能だったということを証明してしまう。……そんなこと、許せるはずがない。
何としてでも、精霊達を従順に調教しなければならない。……けれど、今の精霊達を思うとそんなことを実現できるとは、到底思えなくて。
精霊達に対して葛藤を、焦躁を抱けば抱くほど、私のデイビッドに対する遊びを加速させた。
そして遊びが盛り上がれば盛り上がるほど、デイビッドの私に対する想いは一層強いものになっていった。
『クレア。……お前と一緒だと一日がすげぇ早いんだ。……お前との別れの日がそれだけ早く来そうで、こわい』
『来月には、もう帰るのか? ……帰るな。帰らないでくれ。……ずっと、ここにいろよ』
『クレア。……俺はお前が……お前のことが……お前のことが、すごい好きだ。……離れたくない』
日に日に真剣味を増していく、デイビッドの言葉にぞくぞくした。
相手はたかが5歳児。いくらませたことを言っても、その台詞に篭った想いだって、私に向ける恋心だって遊びの延長戦上に過ぎないことは分かっている。
所詮子どもの恋。一年も経てば忘れているような、その程度のこと。本気もなにもありがしない。
冷めた胸の内でそう思う一方で、そんなデイビッドの恋心に、不安定な精神が安定する自分がいた。
人を意のままに操れる能力があることを、証明したかった。
誰かに、特別な存在だと、そう想わせることで、自分が特別な存在であると、そう思いたかった。
デイビッドの想いは、そんな私の要求を満たしてくれていたのだ。
当時の私は、ただひたすらに自分のことだけを考えていた。
他者のことなんて、考えられないくらい、ただ自分のことだけでいっぱいいっぱいだった。
『――ルクレア。随分と長居をしてしまったけど、明日の夕方にはこの村を去ろう。いい加減、領地の仕事も溜まっている。……親しくしてくれたお友達に、明日お別れをしておいで』
だから、父からそう告げられた時に私の頭を占めたのは、これで明日からは精霊達とまた向き合わなければならなくなるという、憂鬱感だけだった。
『クレア! ……今日、父さんに聞いたんだけど、お前、夕方には村を出るって本当か!?』
『……ええ。本当よ』
息せき切って駆け付けて来たデイビッドに、私は力ない笑みを返した。
『もう、荷造りも馬車の手配も全てすんでいる。……あとはただ、乗り込むだけ』
私の言葉に、デイビッドは泣きそうに顔を歪めた。
『そんな……だって昨日会った時には、まだ日付けまでは分からないって、お前……』
『私も、昨日の夜になって初めてお父様から聞いたのよ。……こんなに急になるなんて思ってなかったわ』
そう言って首を横に振ると、私もまた泣きそうな表情を意識して作りながら、デイビッドに小さく笑いかけてみせた。
『……さよならよ。デイビッド。貴方のお蔭でこの一月、とても楽しかったわ。本当にありがとう』
――さぁ、最後の遊戯の時間のはじまりだ。
貴族らしく、優雅に、デイビッドの初恋終わりの一幕を演じてあげるとしよう。
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