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アルク・ティムシーというドエム
アルク・ティムシーというドエム45
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「……出来れば校舎に逃げ込みたい。何とかして隙を作らねぇと……」
「校舎?」
同じく緊張を孕んだデイビッドの言葉に、片眉を上げる。
「校舎よりホールの方がいいんじゃない? 近いし、人がいっぱいいるよ」
木を隠すなら、森と言う。人ごみの中に隠れるのが、なんか鬼ごっことかの一番の逃げ道というか、セオリーな気がしてたんだが、何故わざわざ人気がない校舎に?
デイビッドはそんな私の言葉に、呆れたように溜息を吐いた。
「……馬鹿。いくら人ごみの中だからと言って、お前を連れてたら嫌でも目立つだろーが」
……ああ、言われてみれば、確かに。
「それに上手くアルクを撒けたとしても、他の生徒に今の俺の姿見られたら、色々厄介なんだよ。あの優男だけならともかく。ボレア家令嬢が連れていた謎の美少年はだれだ、なんて話題になってみろ。変に勘が鋭いオージン辺りに、正体がばれる可能性だってあるだろ。んなのドエム野郎に付き纏われるより、よっぽど面倒だっつーの」
……自分で美少年って言っちゃうんだ。いや、どうでもいいけど。そして確かにデイビッドは美少女に見紛うばかりの美少年だけど。
デイビッドの言うことが正論過ぎてぐうの音も出ない。……すみませんね。考えが浅くて。私がアホでございました。
「……まあ、取りあえず、どこに逃げるにしても、アルクの気を逸らさなきゃなんないよね」
「ホールはねぇ。校舎だ」
「……はいはい、校舎に逃げるなら、距離がある分余計アルクの気を逸らさなきゃなんないよね」
ジト目でこちらを見てくるデイビッドに不貞腐れつつ、繋いだ手を解いて、空中に「式」を描き始める。
……気を逸らすって言ったら、やっぱり、適任がいるよね。
描いた式を、より早く展開させる為、せっかくだから一緒に言霊も使うか
「――【シルフィ召喚】」
言霊を音に乗せた瞬間、描いた式の中央に現れる影。
……なんかいつも気が付けば勝手に出て来てるから、ちゃんとこうやって召喚するの久しぶりかも。
手を伸ばして空中のそれをキャッチして、胸元に引き寄せる。
「……夜中にごめんね。シルフィ。ちょっと、力を貸して欲し……」
「……ぐう」
……ん、あれ、間違って私ノムル召喚しちゃった?
思わず手の中をまじまじと見やる。……いや、ちゃんと間違いなくシルフィだ。
手の中で穏やかな表情で、寝息を立てている。
うーん。これはまあ、がっつり寝ちゃってますな。
「……おーい、シルフィ。お休みのところ悪いけど、ちょっといいかな?」
「……ムニャ……ン……マスター? ……アレ……モウ、朝?」
ゆさゆさ揺すって、ようやく目を醒ますシルフィ。
しかしそれでもなお、目蓋が半分しか空いていない。……眠そう。とても眠そう。なんか非常に申し訳ない。
「ごめん。まだ朝じゃないけど、ちょっと頼みがあって呼び出した。……てか、シルフィ達ちゃんと夜に寝てるのね……今さらながら生活サイクル知ったよ」
「……昼時、何時呼ビ出サレテモ良イヨウニ、私ハマスターノ生活サイクル二合ワセテ、精霊界デモ生活シテルノ。……他ノ精霊達ハ知ラナイ」
――ずっきゅん
あかん。……目をごしごしこすりながら投下されたシルフィの健気な発言に、鬼ごっこの最中だというのに心臓打ち抜かれてしまった……。
あー、くそ! 許されるものなら、シルフィをぎゅうぎゅうにハグして大声で愛で讃えたい……!
しかし、今そんなことをしてしまえば、アルクに見つかってしまう……! 我慢だ……我慢だ、私……!
「……私の為に、ありがとうね。シルフィ。そこまで考えてくれててすごく嬉しい。でも寝起きに魔法はきついなら、他の精霊に頼むけど……」
今の状況的に、シルフィが一番適役なんだけど、無理そうだったら仕方ない。
……代わりにノムルでも呼ぶか。ノムルはいつだって眠そうだから、夜中寝ている最中だったとしても今さらだろう。
しかし、そんな私の言葉に、シルフィはいやいやと首を振った。
「ヤダ……私ガスル」
「シルフィ?」
「セッカクマスターガ私ダケヲ呼ンデクレタノニ、何モシナイデ帰ルナンテ、嫌ダ。私二、ヤラセテ。他ノ精霊呼バナイデ」
――何、この可愛すぎる生き物……!
私は両手で口を押えて身悶えながら、胸の奥から怒涛のように湧き上がってくるパッションにひたすら耐えた。
ここでうっかり大声で叫ばなかった、私の理性超すごいと思います。自分で自分を褒めてあげたいです。
「校舎?」
同じく緊張を孕んだデイビッドの言葉に、片眉を上げる。
「校舎よりホールの方がいいんじゃない? 近いし、人がいっぱいいるよ」
木を隠すなら、森と言う。人ごみの中に隠れるのが、なんか鬼ごっことかの一番の逃げ道というか、セオリーな気がしてたんだが、何故わざわざ人気がない校舎に?
デイビッドはそんな私の言葉に、呆れたように溜息を吐いた。
「……馬鹿。いくら人ごみの中だからと言って、お前を連れてたら嫌でも目立つだろーが」
……ああ、言われてみれば、確かに。
「それに上手くアルクを撒けたとしても、他の生徒に今の俺の姿見られたら、色々厄介なんだよ。あの優男だけならともかく。ボレア家令嬢が連れていた謎の美少年はだれだ、なんて話題になってみろ。変に勘が鋭いオージン辺りに、正体がばれる可能性だってあるだろ。んなのドエム野郎に付き纏われるより、よっぽど面倒だっつーの」
……自分で美少年って言っちゃうんだ。いや、どうでもいいけど。そして確かにデイビッドは美少女に見紛うばかりの美少年だけど。
デイビッドの言うことが正論過ぎてぐうの音も出ない。……すみませんね。考えが浅くて。私がアホでございました。
「……まあ、取りあえず、どこに逃げるにしても、アルクの気を逸らさなきゃなんないよね」
「ホールはねぇ。校舎だ」
「……はいはい、校舎に逃げるなら、距離がある分余計アルクの気を逸らさなきゃなんないよね」
ジト目でこちらを見てくるデイビッドに不貞腐れつつ、繋いだ手を解いて、空中に「式」を描き始める。
……気を逸らすって言ったら、やっぱり、適任がいるよね。
描いた式を、より早く展開させる為、せっかくだから一緒に言霊も使うか
「――【シルフィ召喚】」
言霊を音に乗せた瞬間、描いた式の中央に現れる影。
……なんかいつも気が付けば勝手に出て来てるから、ちゃんとこうやって召喚するの久しぶりかも。
手を伸ばして空中のそれをキャッチして、胸元に引き寄せる。
「……夜中にごめんね。シルフィ。ちょっと、力を貸して欲し……」
「……ぐう」
……ん、あれ、間違って私ノムル召喚しちゃった?
思わず手の中をまじまじと見やる。……いや、ちゃんと間違いなくシルフィだ。
手の中で穏やかな表情で、寝息を立てている。
うーん。これはまあ、がっつり寝ちゃってますな。
「……おーい、シルフィ。お休みのところ悪いけど、ちょっといいかな?」
「……ムニャ……ン……マスター? ……アレ……モウ、朝?」
ゆさゆさ揺すって、ようやく目を醒ますシルフィ。
しかしそれでもなお、目蓋が半分しか空いていない。……眠そう。とても眠そう。なんか非常に申し訳ない。
「ごめん。まだ朝じゃないけど、ちょっと頼みがあって呼び出した。……てか、シルフィ達ちゃんと夜に寝てるのね……今さらながら生活サイクル知ったよ」
「……昼時、何時呼ビ出サレテモ良イヨウニ、私ハマスターノ生活サイクル二合ワセテ、精霊界デモ生活シテルノ。……他ノ精霊達ハ知ラナイ」
――ずっきゅん
あかん。……目をごしごしこすりながら投下されたシルフィの健気な発言に、鬼ごっこの最中だというのに心臓打ち抜かれてしまった……。
あー、くそ! 許されるものなら、シルフィをぎゅうぎゅうにハグして大声で愛で讃えたい……!
しかし、今そんなことをしてしまえば、アルクに見つかってしまう……! 我慢だ……我慢だ、私……!
「……私の為に、ありがとうね。シルフィ。そこまで考えてくれててすごく嬉しい。でも寝起きに魔法はきついなら、他の精霊に頼むけど……」
今の状況的に、シルフィが一番適役なんだけど、無理そうだったら仕方ない。
……代わりにノムルでも呼ぶか。ノムルはいつだって眠そうだから、夜中寝ている最中だったとしても今さらだろう。
しかし、そんな私の言葉に、シルフィはいやいやと首を振った。
「ヤダ……私ガスル」
「シルフィ?」
「セッカクマスターガ私ダケヲ呼ンデクレタノニ、何モシナイデ帰ルナンテ、嫌ダ。私二、ヤラセテ。他ノ精霊呼バナイデ」
――何、この可愛すぎる生き物……!
私は両手で口を押えて身悶えながら、胸の奥から怒涛のように湧き上がってくるパッションにひたすら耐えた。
ここでうっかり大声で叫ばなかった、私の理性超すごいと思います。自分で自分を褒めてあげたいです。
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