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それぞれの恋の行方
それぞれの恋の行方5
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「……笑った、お前の顔が好きだ」
目を伏せながら、ぽつりと呟くように発せられたマシェルの言葉にびくりと体が跳ねた。
「精霊達が大好きで、みっともないくらいにやに下がって笑う、お前の間抜けな笑い顔が好きだ。……自分の家を心から誇りに思っていて、それにふさわしくあろうと陰では必死に努力を重ねている、その姿勢が好きだ。……何だかんだでお人好しで、好意を向けられるとどんな嫌いな相手でもほだされてしまう、そんな所も好きだ……」
とつとつと語られる、マシェルの好意に胸が、詰まる。
「……完璧な演技をしているようで、その癖にところどころ抜けている所も好きだ。……常に自信に満ち溢れているようで、それは虚勢に過ぎなくて、本当は自分に自信がないことも知っている。……都合が悪いことには見てみぬふりをしようとする癖に、すぐにそのことに自己嫌悪して落ち込んでいることも……そんな人間らしいお前の愚かさがいとおしいと思う」
マシェルはそう言いながら、伏せていた瞳を私に向けて、泣きそうな顔で笑った。
「もっと理由が必要ならば、いくらでも理由を言ってやる。――いくらでも、私はお前が好きな理由を言える。……だけど、もう十分だろう?」
そう告げられた途端、目からぽろりと涙が溢れた。
……なんで、私が泣くんだ。
泣きたいのは、マシェルの方だと言うのに。
だけど、一度溢れた涙はただひたすら流れて止まらない。
「ごめん……ごめん……マシェル……」
脳裏に浮かぶ、傷付けたことに怯えて泣いた6歳の自分。
あれから、10年以上もの歳月が経つと言うのに、私は何も変わっちゃいない。なんにも成長していない。
「……私は今、自分の罪悪感を軽減する為に、マシェルの想いを否定しようとした……!」
どうしようもないほど愚かで、身勝手なままだ。
何が乙女ゲームの強制力だ。刷り込みだ。
マシェルそんなもの関係なしに真剣に私を想っていてくれることなんか、ちょっと考えれば分かることなのに……。
現実世界で現実の人間が抱く想いに、本物も偽物もあるはずが無いのに。
私は、なんて
なんてー……
「……酷い女だな」
続く私の自分自身への糾弾を、まさにマシェルが言葉にした。
だけど、責めるはずのその言葉の響きは、どうしようもなく優しい。
「……だけど、そんな酷いお前も、好きだと思ってしまうのだから、仕方ない。……多分きっと私は趣味が悪いんだろう」
そう言って、マシェルはそっと私の涙を手で拭った。
「……趣味が、悪い?」
「ああ、趣味が悪いんだ。だから、仕方がない」
どこかおどけるように肩を竦めて、マシェルは目を細めて笑う。
「……お前が否定するお前を、私が好きになってしまっても仕方ないんだ」
……どこまで、マシェルは優しいのだろう。
何で、こんなに優しい人に、私は恋を出来なかったのだろう。
なんで、こんなに優しい人の、私には勿体無い程素敵な人の恋が、叶わないのだろう。
どうしようもない問いが、痛いまでに切実な響きを持って脳裏をよぎる。
「そうだね――悪趣味だね」
……だけど、仕方ない。悪趣味だとしても仕方ないもの、なんだ。
恋とはきっと、自分ではどうしようもないものなのだから。
そう思ったら、気が付けば口元に笑みが浮かんでいた。
「――ありがとう、マシェル」
自然と口から零れたその言葉は、偽りのない、心からの言葉だった。
「悪趣味でいてくれて、ありがとう。マシェル。……こんな私を好きになってくれて、ありがとう」
こんな人に、好きになって貰えたことが嬉しいと思った。
こんな人に、好きだと言って貰えた自分が、以前より好きだと思うことが出来た。
その事実に、ただひたすら感謝したいと、ただ、そう思った。
「……ああ」
笑う私に、マシェルは浮かべていた笑みを一層深めた。
くしゃくしゃに顔を歪めて笑うマシェルの瞳からも、また、ぽろりと涙が零れ落ちた。
「そう言ってくれるお前を、好きになれて良かったと思う。……ありがとう。ルクレア。好きにならせてくれて、ありがとう。――私にこんな気持ちを教えてくれて、ありがとう」
泣きながら笑うマシェルの姿に、つられるように私も涙の量も増えた。
涙の量が増えながらも、それでも私もまた、笑った。
笑いながら、何度も何度も感謝の言葉を繰り返した。
泣き疲れるまで、喉が痛くなるまで、ただひたすら向かい合って顔をくしゃくしゃにして泣き笑いながら、ただひたすら互いに感謝の言葉を口にしていた。
目を伏せながら、ぽつりと呟くように発せられたマシェルの言葉にびくりと体が跳ねた。
「精霊達が大好きで、みっともないくらいにやに下がって笑う、お前の間抜けな笑い顔が好きだ。……自分の家を心から誇りに思っていて、それにふさわしくあろうと陰では必死に努力を重ねている、その姿勢が好きだ。……何だかんだでお人好しで、好意を向けられるとどんな嫌いな相手でもほだされてしまう、そんな所も好きだ……」
とつとつと語られる、マシェルの好意に胸が、詰まる。
「……完璧な演技をしているようで、その癖にところどころ抜けている所も好きだ。……常に自信に満ち溢れているようで、それは虚勢に過ぎなくて、本当は自分に自信がないことも知っている。……都合が悪いことには見てみぬふりをしようとする癖に、すぐにそのことに自己嫌悪して落ち込んでいることも……そんな人間らしいお前の愚かさがいとおしいと思う」
マシェルはそう言いながら、伏せていた瞳を私に向けて、泣きそうな顔で笑った。
「もっと理由が必要ならば、いくらでも理由を言ってやる。――いくらでも、私はお前が好きな理由を言える。……だけど、もう十分だろう?」
そう告げられた途端、目からぽろりと涙が溢れた。
……なんで、私が泣くんだ。
泣きたいのは、マシェルの方だと言うのに。
だけど、一度溢れた涙はただひたすら流れて止まらない。
「ごめん……ごめん……マシェル……」
脳裏に浮かぶ、傷付けたことに怯えて泣いた6歳の自分。
あれから、10年以上もの歳月が経つと言うのに、私は何も変わっちゃいない。なんにも成長していない。
「……私は今、自分の罪悪感を軽減する為に、マシェルの想いを否定しようとした……!」
どうしようもないほど愚かで、身勝手なままだ。
何が乙女ゲームの強制力だ。刷り込みだ。
マシェルそんなもの関係なしに真剣に私を想っていてくれることなんか、ちょっと考えれば分かることなのに……。
現実世界で現実の人間が抱く想いに、本物も偽物もあるはずが無いのに。
私は、なんて
なんてー……
「……酷い女だな」
続く私の自分自身への糾弾を、まさにマシェルが言葉にした。
だけど、責めるはずのその言葉の響きは、どうしようもなく優しい。
「……だけど、そんな酷いお前も、好きだと思ってしまうのだから、仕方ない。……多分きっと私は趣味が悪いんだろう」
そう言って、マシェルはそっと私の涙を手で拭った。
「……趣味が、悪い?」
「ああ、趣味が悪いんだ。だから、仕方がない」
どこかおどけるように肩を竦めて、マシェルは目を細めて笑う。
「……お前が否定するお前を、私が好きになってしまっても仕方ないんだ」
……どこまで、マシェルは優しいのだろう。
何で、こんなに優しい人に、私は恋を出来なかったのだろう。
なんで、こんなに優しい人の、私には勿体無い程素敵な人の恋が、叶わないのだろう。
どうしようもない問いが、痛いまでに切実な響きを持って脳裏をよぎる。
「そうだね――悪趣味だね」
……だけど、仕方ない。悪趣味だとしても仕方ないもの、なんだ。
恋とはきっと、自分ではどうしようもないものなのだから。
そう思ったら、気が付けば口元に笑みが浮かんでいた。
「――ありがとう、マシェル」
自然と口から零れたその言葉は、偽りのない、心からの言葉だった。
「悪趣味でいてくれて、ありがとう。マシェル。……こんな私を好きになってくれて、ありがとう」
こんな人に、好きになって貰えたことが嬉しいと思った。
こんな人に、好きだと言って貰えた自分が、以前より好きだと思うことが出来た。
その事実に、ただひたすら感謝したいと、ただ、そう思った。
「……ああ」
笑う私に、マシェルは浮かべていた笑みを一層深めた。
くしゃくしゃに顔を歪めて笑うマシェルの瞳からも、また、ぽろりと涙が零れ落ちた。
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泣きながら笑うマシェルの姿に、つられるように私も涙の量も増えた。
涙の量が増えながらも、それでも私もまた、笑った。
笑いながら、何度も何度も感謝の言葉を繰り返した。
泣き疲れるまで、喉が痛くなるまで、ただひたすら向かい合って顔をくしゃくしゃにして泣き笑いながら、ただひたすら互いに感謝の言葉を口にしていた。
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