現代転生 _その日世界は変わった_

胚芽米

文字の大きさ
95 / 237

第90話 ワシントン(3)

しおりを挟む
ベヒーモスの皮膚が割れる。そもそも皮膚というものは割れるものなのかと思いたくなるがそういうものだと自己に認識させる。

だがここにきてマンホールも限界がきたのか2つに大きく割れる。

「あそこ攻撃すれば」

俺はベヒーモスの割れた皮膚を指差してそう言う。

「分かって…よし逃げよう」

「はあ!?」

アナリスは何故か逃げることを提案しだす。
ここにきてか?そんなことを悟ったのかアナリスは

「後ろ」

と言う。一斉に一同が振り向くと

そこにいたのは[SWAT]という文字が書かれたゴツそうな服を着ている人達。その姿は俺達を攫った奴らとひどく似ている。

「ひっ…まさか…」

カノンが珍しく怯える。どうやら攫われた時の記憶が蘇ったらしい。その後俺達は一斉に逃げ出した。

幸いにもベヒーモスは今またびっくり返っている状態だったので簡単に道路へと抜け出せた。

「SWATか。勝てるかな」

「ヒカル、SWATって?」

「アメリカ合衆国特殊警察隊、大事時には大抵いる人達って考えればいい」

そんな人達は今現在公園の中に入って素早い動きでベヒーモスを囲む。

そして隊長格の男が手を上から下へと振り下げると

ダダダダダダ!!!

一斉に持っている銃から弾が撃ち出される。それは全てベヒーモスへと命中するがベヒーモスはそれほど効いてないのか普通の動作で立ち上がると

SWAT隊員のもとに突進を繰り出す。

「なっ!のわぁぁ!!」

SWAT隊員はかろうじて避けるがベヒーモスは木をなぎ倒しながら突き進む。とまたしても川の前で止まる。

とここで何故か俺の頭に電流が走るような感覚が、あるアイデアが思いついた。

「ねえ、あいつ川…泳げないとかじゃない?」

「え?……ああ!そういうことか!」

ヒカルは納得の声を上げる。

「あいつをアナリスの空中浮遊と運動変化。の魔法で吹き飛ばせないか?」

「え?空中浮遊なら簡単だけど運動変化はやろうと思えばできるけど重すぎる
からそれなりの時間がいる」

アナリスの言いたいことは分かった。SWAT隊員が今現在奮闘中なのだ。

「距離を保て!」

SWAT隊員の怒号と銃声が響き渡る。ベヒーモスは銃弾をかわすことなく突進する。今度は木に衝突して止まる。どうやら勢いが足りなかったらしい。

「これは彼らじゃあ無理だね。やっぱりスパイダーマンの容量で…いや待て」

ヒカルは何やら思いついたようで勝ち誇った顔をしていた。
_________________
「撤退だ!撤退しろ!撤退!」

隊長の声が響く。銃弾がろくに効かないやつへの対処が思いつかないようだ。それはここにいるSWAT隊員全員に言えることだ。第二次世界大戦以降、最も製作に成功したMP5短機関銃が効かないというのは経験したことのない事態だった。パラベラム弾が欠片を落としながらその巨体で弾かれているのが分かる。


緊急用のマニュアルがクソだというのが身に沁みて分かる。ニューヨークの化け物用に作られたらしいが、大体ニューヨークの化け物には俺達に敵わないことくらい分かるだろう。

SWATはここに来るために乗った輸送車へと向かい、全員足を止める。

やがて一人の隊員が口を開く。

「こ、ここに止めてあったはずだ」
_________________
「おらあああ!」

アナリスの本性がだいぶ明らかになるような声がする。空中浮遊と運動変化の魔法、おそらくその辺りの魔法を使って先程そこに止めてあったSWATの車両を1台、2台と木に突っ掛かったベヒーモスにぶつける。

ベヒーモスは1台目がぶつかって怯み、2台目がぶつかって大きく弾ける。

「まだ足りないか…いや大丈夫!」

アナリスはそう言って俺達が盗み、乗ってきたタクシーを列になって浮かぶSWAT車両に向けて凄まじい速度でぶつける。

ベヒーモスはあの重そうな巨体を浮かしたあと、そのまま物理法則にならって

川へと落ちた。

ドボン!と言う水面が弾ける音、ベヒーモスは水に入ったことに気づいたのか手足をバタバタとさせる。

その体が完全に見えなくなるまでにそう時間はいらなかった。

「…最初からこうすればよかったんじゃあ」

俺は安心しきってそう言った時、上空を警察のヘリコプターが通過した。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!

ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

七億円当たったので異世界買ってみた!

コンビニ
ファンタジー
 三十四歳、独身、家電量販店勤務の平凡な俺。  ある日、スポーツくじで7億円を当てた──と思ったら、突如現れた“自称・神様”に言われた。 「異世界を買ってみないか?」  そんなわけで購入した異世界は、荒れ果てて疫病まみれ、赤字経営まっしぐら。  でも天使の助けを借りて、街づくり・人材スカウト・ダンジョン建設に挑む日々が始まった。  一方、現実世界でもスローライフと東北の田舎に引っ越してみたが、近所の小学生に絡まれたり、ドタバタに巻き込まれていく。  異世界と現実を往復しながら、癒やされて、ときどき婚活。 チートはないけど、地に足つけたスローライフ(たまに労働)を始めます。

処理中です...