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3話

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◆◇◆◇◆◇◆


馬車が発車し、孤児院が見えなくなってからも、私は来た道を振り返っていた。


──『またね』って、どういう意味なのかな…。





───「そんなに、彼の事が気になるんですか」


男は本を開いたまま、独り言のようにそう呟く。


────「あそこで話しかけてくれたのは……カイだけなんです。私の髪とか、瞳とか、気持ち悪いって…みんな言うから」


男は綺麗な顔を顰め、私の言葉に耳を傾ける


「気持ち悪い?」


「………。こんな色の子、他にいなかったから…。」


傷んだ髪をくるくると弄ぶ。ピンク色の髪にピンク色の瞳。


「まさか…。あなたは美しいですよ」


男の目は、嘘を言っているようには見えない。


────「どうして、私を連れできたんですか?主様のご指名って……。主様って誰なんですか」


「あぁ。魔王様ですよ」


──男は淡々とその名を口にする。だがキキにとってみれば大問題だ。一瞬にして背筋が凍る。魔王……魔王??あの魔王?


「あなたは、四天王に選ばれました。私もその1人なんです。」


ニコリと微笑む男。


「なんで私なんですか?私、強くもないし、魔王様と会ったこともないし……」


「会うまで私も訳が分かりませんでしたが、会った瞬間から分かりましたよ。あなたは間違いなく四天王の卵だ。」


「は、はぁ……。」


まったくもって訳が分からずに混乱していると、馬車が停止した。


「着いたようですね。降りましょうか」


当たり前かのように私を抱き上げると、男は馬車から降りて、真っ直ぐと門をくぐり抜け綺麗な庭を歩く。


かくいう私は……驚きで目を見開き口をぽかーんと開けていた。空いた口が塞がらないと言う言葉を初めて経験した。


デカい。デカすぎる。とにかくデカい。そして綺麗だ。魔王様のお城って黒じゃないんだ……。


ずらりと並んだ兵隊さん達。全員がしっぽやら角やらを生やしている。


「あぁそう言えば、自己紹介がまだでしたね。」


同じく角やらしっぽやらを生やしたメイドさん2人がが城のドアを開けた。


「私はテラー。四天王の1人です。」


煌びやかに装飾されたラウンジをバックに、テラーはニコリと微笑んだ。

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