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そして王国では─
様々な状況が動き出そうとしている時に、王国の上層部だけが、情報規制のため状況を把握できていなかった。
バッン!!!
「父上!どうして私が謹慎なのですか!」
部屋に閉じ込めていたエリック王子が国王に直談判にやってきた。
「部屋から抜け出してきたか?バカ息子よ!」
執務室に宰相と国王、そして宰相補佐数名が仕事をしている時にエリック王子はノックもせずに入ってきた。
「エリック王子、貴方の行った愚行のせいで現在、どれだけの軋轢が出ているのか分かっておいでですか?」
宰相が諭すように言った。
「私はただ、シオンがアリアにしたイジメや嫌がらせを明らかにしただけだ!」
しかし、国王は机の奥にしまってあった書類をエリックに突き出した。
「謹慎中のお前にも見せたはずだ!シオン令嬢はそんな事はやっていない!いい加減に目を覚ませ!」
それでもエリック王子は怯まなかった!
「こんなのは偽物の証拠です!アリアが自作自演なんてありえない!」
恋は盲目とは良く言ったものだ。
「確かにアリア令嬢は嫌がらせを受けてはいた。しかし、婚約者のいる男性ばかりに近付いていれば仕方がないだろう?それに、この報告は王族小飼の情報収集のプロである暗部からもたらされたものだ。嘘はない!」
エリック王子もこの報告が暗部という王族直営の者からとは聞いていなく、初めて狼狽えた。
「そんなバカな!?」
「はぁ…………」
国王と宰相は深いため息を付いた。
「学生の内は羽を伸ばすために、それほど厳しい事は言っておらんかったが、シオン令嬢を放って置いて、アリア令嬢と遊び惚けて成績も落としたな?アリス令嬢は【男遊び】さえなければ能力的に問題なかったのだが………」
宰相がエリック王子に言った。
「エリック王子、貴方は無実の罪であるシオン【公爵令嬢】を断罪し、国王の許しもなく婚約破棄を行った。そればかりか、シオン公爵令嬢を私兵を使い、鉄格子の罪人馬車に乗せ、自宅に帰らせる事なく修道院へ送った!これがどういう事になるか、分かっておいでか!?」
宰相は先ほどとは違い、強い口調で言い放った!
「それは…………」
言い淀んだエリックの言葉を待たずに宰相は続けた。
「まず、アクエリアス公爵は【あなた】の首を持って来なければ許さないと言っています」
!?
「ふ、ふざけるな!私を殺すと言っているのか!?」
宰相は冷たい目でエリック王子を見つめた。
「それはそうでしょう?自分の娘が無実の罪で断罪され、不当に扱われたとなれば当然の主張です。公爵家という準王族をコケにしたのですから」
「だからと言って!」
「無論、アクエリアス公爵には頭を下げて妥協案を模索中だ。だが、現在は貴様の首を持って来なければ許さんと言っている。さて、お前はこの状況をどうしてくれるんだ?」
エリックは身体を震わせて言った。
「私が直談判をしてきます。こんなバカな要求は飲めないと!」
そういったエリックを見て国王は心底情けないと思った。
「お前が行けばその場で殺されるだろうな。それで良いなら行けばいい」
国王の言葉にエリックは止まった。
「王子である私を私怨で殺すと言うのですか!?」
「そうだ!お前はそれだけの事をしたのだ。もっとその事を自覚しろ!アクエリアス家は報復に帝国と手を結んで戦争も辞さない構えなんだぞ!本当にどう責任を取るというのだ!」
国王の言葉にエリックは青ざめた。
「そ、そんな!戦争などとは………」
「お前はまだ考えが足りないな。現に、すでに有力貴族である伯爵以上の家柄が、今回の騒動についてエリックの責任問題だと抗議文が送られてきている。そして、帝国からは無実の罪の令嬢を断罪する国は信用できないと、貿易の関税を数%上げてきた。この意味がわかるか?」
エリックは青くなった顔が、さらに白くなるほど顔色が悪くなった。
「もし、戦争になれば大勢の有力貴族がアクエリアス家に味方するだろう。そうなれば、我がファーランド王国は滅びる!」
「た、たかだか婚約破棄したぐらいで、そんなバカな…………」
エリックは信じられないと首を振り否定した。
「もし、正式な手順を踏んで内々に婚約破棄をするなら救いがあったが、貴様は最悪の条件でやらかした!シオン令嬢が植物を操る魔法の使い手と言う事は知っているな?」
「ええ、たかだか植物を操るいう珍しいだけの、たいした事のない魔法ですよ。アリアは聖女であり、光属性の治癒魔法と比べればね?」
エリックがそう言うと、宰相がやれやれと首を振った。
「………確かに光属性の治癒魔法は重宝される。しかし、シオン公爵令嬢がいれば飢饉が無くなるのですよ。このまま国母となられれば王国から飢饉が無くなり、毎年豊作が約束されたのに、貴方は王国の未来を切り捨てたのです。シオン公爵令嬢は近隣の貴族の領地も、飢饉から救っていたため、民は元より貴族達からも絶大な人気がありました。だから無理を言って貴方の婚約者にしたのですがね。それも水の泡です」
「ちなみに、民衆からも貴様に抗議の声が上がっている。豊穣の女神を追放した王子を許すなとな?このままでは、アクエリアス家と戦争か、民衆から反乱が起きるかのどちらかだ」
ここまで聞くとエリックはうつむき、何も言えなくなった。
「エリックよ。今一度、己のしでかした事の大きさを理解し、謹慎しているがいい!出来る限りは守ってやるが、いよいよと言う時は覚悟しておけ!」
「私を見捨てるのですか!?」
「国王として第一は国を守ることだ。貴様1人の命で戦争が回避できて、反乱が収まるのであればやむ終えまい」
国王の非情な言葉にエリックはヨロヨロと部屋に戻るのであった。
【続く】
バッン!!!
「父上!どうして私が謹慎なのですか!」
部屋に閉じ込めていたエリック王子が国王に直談判にやってきた。
「部屋から抜け出してきたか?バカ息子よ!」
執務室に宰相と国王、そして宰相補佐数名が仕事をしている時にエリック王子はノックもせずに入ってきた。
「エリック王子、貴方の行った愚行のせいで現在、どれだけの軋轢が出ているのか分かっておいでですか?」
宰相が諭すように言った。
「私はただ、シオンがアリアにしたイジメや嫌がらせを明らかにしただけだ!」
しかし、国王は机の奥にしまってあった書類をエリックに突き出した。
「謹慎中のお前にも見せたはずだ!シオン令嬢はそんな事はやっていない!いい加減に目を覚ませ!」
それでもエリック王子は怯まなかった!
「こんなのは偽物の証拠です!アリアが自作自演なんてありえない!」
恋は盲目とは良く言ったものだ。
「確かにアリア令嬢は嫌がらせを受けてはいた。しかし、婚約者のいる男性ばかりに近付いていれば仕方がないだろう?それに、この報告は王族小飼の情報収集のプロである暗部からもたらされたものだ。嘘はない!」
エリック王子もこの報告が暗部という王族直営の者からとは聞いていなく、初めて狼狽えた。
「そんなバカな!?」
「はぁ…………」
国王と宰相は深いため息を付いた。
「学生の内は羽を伸ばすために、それほど厳しい事は言っておらんかったが、シオン令嬢を放って置いて、アリア令嬢と遊び惚けて成績も落としたな?アリス令嬢は【男遊び】さえなければ能力的に問題なかったのだが………」
宰相がエリック王子に言った。
「エリック王子、貴方は無実の罪であるシオン【公爵令嬢】を断罪し、国王の許しもなく婚約破棄を行った。そればかりか、シオン公爵令嬢を私兵を使い、鉄格子の罪人馬車に乗せ、自宅に帰らせる事なく修道院へ送った!これがどういう事になるか、分かっておいでか!?」
宰相は先ほどとは違い、強い口調で言い放った!
「それは…………」
言い淀んだエリックの言葉を待たずに宰相は続けた。
「まず、アクエリアス公爵は【あなた】の首を持って来なければ許さないと言っています」
!?
「ふ、ふざけるな!私を殺すと言っているのか!?」
宰相は冷たい目でエリック王子を見つめた。
「それはそうでしょう?自分の娘が無実の罪で断罪され、不当に扱われたとなれば当然の主張です。公爵家という準王族をコケにしたのですから」
「だからと言って!」
「無論、アクエリアス公爵には頭を下げて妥協案を模索中だ。だが、現在は貴様の首を持って来なければ許さんと言っている。さて、お前はこの状況をどうしてくれるんだ?」
エリックは身体を震わせて言った。
「私が直談判をしてきます。こんなバカな要求は飲めないと!」
そういったエリックを見て国王は心底情けないと思った。
「お前が行けばその場で殺されるだろうな。それで良いなら行けばいい」
国王の言葉にエリックは止まった。
「王子である私を私怨で殺すと言うのですか!?」
「そうだ!お前はそれだけの事をしたのだ。もっとその事を自覚しろ!アクエリアス家は報復に帝国と手を結んで戦争も辞さない構えなんだぞ!本当にどう責任を取るというのだ!」
国王の言葉にエリックは青ざめた。
「そ、そんな!戦争などとは………」
「お前はまだ考えが足りないな。現に、すでに有力貴族である伯爵以上の家柄が、今回の騒動についてエリックの責任問題だと抗議文が送られてきている。そして、帝国からは無実の罪の令嬢を断罪する国は信用できないと、貿易の関税を数%上げてきた。この意味がわかるか?」
エリックは青くなった顔が、さらに白くなるほど顔色が悪くなった。
「もし、戦争になれば大勢の有力貴族がアクエリアス家に味方するだろう。そうなれば、我がファーランド王国は滅びる!」
「た、たかだか婚約破棄したぐらいで、そんなバカな…………」
エリックは信じられないと首を振り否定した。
「もし、正式な手順を踏んで内々に婚約破棄をするなら救いがあったが、貴様は最悪の条件でやらかした!シオン令嬢が植物を操る魔法の使い手と言う事は知っているな?」
「ええ、たかだか植物を操るいう珍しいだけの、たいした事のない魔法ですよ。アリアは聖女であり、光属性の治癒魔法と比べればね?」
エリックがそう言うと、宰相がやれやれと首を振った。
「………確かに光属性の治癒魔法は重宝される。しかし、シオン公爵令嬢がいれば飢饉が無くなるのですよ。このまま国母となられれば王国から飢饉が無くなり、毎年豊作が約束されたのに、貴方は王国の未来を切り捨てたのです。シオン公爵令嬢は近隣の貴族の領地も、飢饉から救っていたため、民は元より貴族達からも絶大な人気がありました。だから無理を言って貴方の婚約者にしたのですがね。それも水の泡です」
「ちなみに、民衆からも貴様に抗議の声が上がっている。豊穣の女神を追放した王子を許すなとな?このままでは、アクエリアス家と戦争か、民衆から反乱が起きるかのどちらかだ」
ここまで聞くとエリックはうつむき、何も言えなくなった。
「エリックよ。今一度、己のしでかした事の大きさを理解し、謹慎しているがいい!出来る限りは守ってやるが、いよいよと言う時は覚悟しておけ!」
「私を見捨てるのですか!?」
「国王として第一は国を守ることだ。貴様1人の命で戦争が回避できて、反乱が収まるのであればやむ終えまい」
国王の非情な言葉にエリックはヨロヨロと部屋に戻るのであった。
【続く】
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