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6章:スタンピード!
夜明けと共に悪夢がやって来る!
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城塞都市で暖かな空気が流れる中、時間にして1時間弱の間は魔物の襲撃は無かった。城壁の周り少数の魔物がウロウロする程度で、城門まで近づく者は居なかった。
「不気味ですね。レイン殿の話では、魔物を指揮しているのはナーガの最上位進化系のナーガラージャ(蛇の王)と言うではありませんか!光の精霊王様と協力しても倒せなかったと聞きましたが……何を企んでいるのやら」
イルベルトはシャーマンと共に城壁の上から魔の森を見つめる。
「そうだな。ジーク様を次期皇帝に着けるより、まずはスタンピードを止めなければな!」
しかし、実際にナーガのタクシャカに付いてこれまでの戦闘を考えるとかなり狡猾な戦術家だとわかる。本人は分身体を用意し、まだ1度も表に出て来ていないのだ。やりにくい相手である。
「自分の姿を現さず、配下の者に戦闘をさせるやり方はネクロマンサーに似ているな。この後、何を企んでいるのか予測が付かない」
この静寂が支配する時間が、嵐の前の静けさだと薄々感じていた。
「我々に休息を与える時間を取らせるなんて、何を考えているのずかね?丘の上では穴を掘り、安全なはずの陣地に奇襲を掛けて休む暇を与えなかったのでしょう?」
「そうだ!あれには驚いた。本当にワシも良く落ち着いて対処出来たと自画自賛したいわい!しかしその後、敵の襲撃が少なかった事を考えると、ネクロマンサーの隠れ場所を用意したとも考えられる。1度の作戦で2つの効果を狙うとは……本当に名軍師を相手にしている様だったよ」
「……勝てるでしょうか?」
「本来ならば弱気な発言をした貴様に活を入れる所だが……ワシにもわからん!」
イルベルトが驚いた様子でシャーマンを見る
「そんな目で見るな。ただの魔物の大群なら犠牲を払いつつも何とか出来るだろうが……今回は、戦略を練り戦術を扱う百戦錬磨の怪物だ!いくら光の精霊王様の助力があったとしても、確実に勝てると言う保証は無い」
イルベルトは城壁に置いた手に力を入れる。
「シャーマン殿は契約者であるシオンお嬢様の涙を見てないのでしょうが、私はあのお嬢様の涙を見たくありません。いくら強大な魔力を持っていてもまだ7歳の少女でした。あんな子供を戦いに連れていくなど騎士としての矜持が許さない。必ず勝ちましょう!」
「さっきまでの弱気なお前はどこに行ったのやら……」
シャーマンは苦笑いをしながら夜明けを待つのだった。山向こうがうっすら明るくなってきたのだ。夜明けは近い。
ズンッ…
ズンッズンッ…
ズンッ…ズンッ…
夜明けが近付くと同じく、地響きが聞こえてきた。まだ遠いみたいだが、城塞都市の帝国軍や冒険者達の多くは城壁を登り、辺りを見回している。
仮眠を取っていたシオン達は飛び起き、その地響きを知っているレインとシオンが顔を合わせ急ぎ、大将シャーマンの所に向かった。
「おお、レイン殿にシオン殿まだお休みしていて構いませんぞ?」
シャーマンはまだ魔物の襲撃が無いので、年齢的に子供であるレイン達をもう少し眠らせて置きたかった。
「心遣いありがとうございます。しかし!そんな場合ではありません!この地響きは土龍の向かって来ている足音ですよ!」
!?
「なんですと!!!?」
レインとシオンはフィリアス領の城塞都市エルドラドの龍襲撃の状況を話した。
「なんという事だ!まさかナーガの切り札が、龍を連れて来ることだとは!?」
「急いで、偵察隊を出し状況の把握をしましょう!まだまだ魔物がウロウロしていますので、我らフィリアス騎士団と、遠目や索敵スキルを持つ者を何人か付けて欲しい」
「了解した!急ぎ準備させよう」
シャーマンはイルベルトにフィリアス騎士団に同行させる者を急ぎ集め、城門前に集合させた。
「今回は情報を持ち帰る事が第1だ。無駄な戦闘はするなよ?」
「「了解しました!」」
今回は馬に乗り、スピード重視で出発するのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
【後書き】
シオン
「まさか、龍がやって来るなんて……」
愚者の声
「これはヤバいかも知れないね!?」
シオン
「ふ、ふふ……」
愚者の声
「し、シオンさん?」
シオン
「殺す!殺して殺りますわ!!!!」
(わたくしの活躍の為に!)
愚者の声
ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ!!!
「不気味ですね。レイン殿の話では、魔物を指揮しているのはナーガの最上位進化系のナーガラージャ(蛇の王)と言うではありませんか!光の精霊王様と協力しても倒せなかったと聞きましたが……何を企んでいるのやら」
イルベルトはシャーマンと共に城壁の上から魔の森を見つめる。
「そうだな。ジーク様を次期皇帝に着けるより、まずはスタンピードを止めなければな!」
しかし、実際にナーガのタクシャカに付いてこれまでの戦闘を考えるとかなり狡猾な戦術家だとわかる。本人は分身体を用意し、まだ1度も表に出て来ていないのだ。やりにくい相手である。
「自分の姿を現さず、配下の者に戦闘をさせるやり方はネクロマンサーに似ているな。この後、何を企んでいるのか予測が付かない」
この静寂が支配する時間が、嵐の前の静けさだと薄々感じていた。
「我々に休息を与える時間を取らせるなんて、何を考えているのずかね?丘の上では穴を掘り、安全なはずの陣地に奇襲を掛けて休む暇を与えなかったのでしょう?」
「そうだ!あれには驚いた。本当にワシも良く落ち着いて対処出来たと自画自賛したいわい!しかしその後、敵の襲撃が少なかった事を考えると、ネクロマンサーの隠れ場所を用意したとも考えられる。1度の作戦で2つの効果を狙うとは……本当に名軍師を相手にしている様だったよ」
「……勝てるでしょうか?」
「本来ならば弱気な発言をした貴様に活を入れる所だが……ワシにもわからん!」
イルベルトが驚いた様子でシャーマンを見る
「そんな目で見るな。ただの魔物の大群なら犠牲を払いつつも何とか出来るだろうが……今回は、戦略を練り戦術を扱う百戦錬磨の怪物だ!いくら光の精霊王様の助力があったとしても、確実に勝てると言う保証は無い」
イルベルトは城壁に置いた手に力を入れる。
「シャーマン殿は契約者であるシオンお嬢様の涙を見てないのでしょうが、私はあのお嬢様の涙を見たくありません。いくら強大な魔力を持っていてもまだ7歳の少女でした。あんな子供を戦いに連れていくなど騎士としての矜持が許さない。必ず勝ちましょう!」
「さっきまでの弱気なお前はどこに行ったのやら……」
シャーマンは苦笑いをしながら夜明けを待つのだった。山向こうがうっすら明るくなってきたのだ。夜明けは近い。
ズンッ…
ズンッズンッ…
ズンッ…ズンッ…
夜明けが近付くと同じく、地響きが聞こえてきた。まだ遠いみたいだが、城塞都市の帝国軍や冒険者達の多くは城壁を登り、辺りを見回している。
仮眠を取っていたシオン達は飛び起き、その地響きを知っているレインとシオンが顔を合わせ急ぎ、大将シャーマンの所に向かった。
「おお、レイン殿にシオン殿まだお休みしていて構いませんぞ?」
シャーマンはまだ魔物の襲撃が無いので、年齢的に子供であるレイン達をもう少し眠らせて置きたかった。
「心遣いありがとうございます。しかし!そんな場合ではありません!この地響きは土龍の向かって来ている足音ですよ!」
!?
「なんですと!!!?」
レインとシオンはフィリアス領の城塞都市エルドラドの龍襲撃の状況を話した。
「なんという事だ!まさかナーガの切り札が、龍を連れて来ることだとは!?」
「急いで、偵察隊を出し状況の把握をしましょう!まだまだ魔物がウロウロしていますので、我らフィリアス騎士団と、遠目や索敵スキルを持つ者を何人か付けて欲しい」
「了解した!急ぎ準備させよう」
シャーマンはイルベルトにフィリアス騎士団に同行させる者を急ぎ集め、城門前に集合させた。
「今回は情報を持ち帰る事が第1だ。無駄な戦闘はするなよ?」
「「了解しました!」」
今回は馬に乗り、スピード重視で出発するのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
【後書き】
シオン
「まさか、龍がやって来るなんて……」
愚者の声
「これはヤバいかも知れないね!?」
シオン
「ふ、ふふ……」
愚者の声
「し、シオンさん?」
シオン
「殺す!殺して殺りますわ!!!!」
(わたくしの活躍の為に!)
愚者の声
ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ!!!
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