いのちのきのみの育て方

雪 鈴花 ❄

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第3話 餓えた狼

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第3話
   餓えた狼





















「『異界世界樹全書』」
















 それは前世の最後の記憶で見ていた本だ。それとそっくりそのままだが少し新しいように感じる。



「それなにー」

「あっ」


 手に取った妹が開こうとすると開かなかった。


「ぜんぜんひらけなーい」





「貸して」ペラ

「あれ?普通に開けたぞ」

「えー」





 中には前世の記憶とは違い空白のページが大多数を占めていた。



 しかし、最初のページと最後の言葉『私の宝物を頼む』だけが書かれている。

「なんにもかいてないじゃん」

 妹には本の内容が見えないらしい。







「おーい、ご飯だぞー!」

バタン

 僕たちは宝箱を勢いよく閉めてリビングに向かった。







「ごはんだー」

「二人とも何をしていたんだ?」

「ひみつー」


「昔話の旅人が僕たちの先祖だったんだよね」

「おお、よく知ってるな」

「昨日、村長さんに聞いたんだ」



「だから、その旅人さんが残したものがあるかなって」

「そうだったのか」







「その旅人さんの名前はカリン」


「昔、爺さんから聞いたことがある」

「へー」



「それでなにか見つけたのか?」


「物置に置いてあった大きい箱があったでしょ」


「ああ」


「その箱を開けたら本を見つけたんだ」



「え!?あの箱は封印されていたはずなんだが………」








「まぁ、いいだろう」


「物置にある先祖由来のものは一律に封印されていてな」


「昔、俺も挑戦したが何一つ開かなかった」


「そうなんだー」





「まぁ、本なら危険なこともないだろ」


「特になにか書いてあるわけでもないし」


 やはり父にも見えないようだ。






「それじゃ僕がもらっていい?」


「まぁ開けた本人が持っていたほうがいいだろ」


「わーい」


「いいなー」




 僕は協力してくれた妹に夕食を少し分けた。

「やったー」







 その夜、ベットに横になりながら見つけた本を調べてみた。

 よくよく読んでみると前世のときの内容とは違っていて、こう書かれていた。





『祭の最中、狼は水を求め、下賤に降りてくる』

『水を砕け、さすれば成長せん』

『それが、第一の成長である』




 この文章とともに、苗の絵と狼の絵が描かれていた。

 それと同じく、村の被害や祭りの様子などが事細かに書かれている。



 よく見ると、この村に似ている…



 時分の村の地図なんて見たことがないからわからなかった。



 祭りに…苗………



 あたってほしくはない予想が脳内を過ぎる。


 この被害が出た家、見たことがある




 森に近い木こり小屋だ……









翌日

 僕は本に書いてあった木こり小屋を見てみることにした。


「外で遊んでくる!」

「最近、不穏なことがあるから気をつけて」

「はーい」







「ついた…」

 小屋は幸い、まだ何も起こっていないようだ。本を見て、被害状況を見てみる。

「人は怪我をしないようだ…」

「小屋が壊れるだけか」

 小屋の壊れるところは隣の畑側、大きく爪で壊される。








 今日ははこのあたりで帰った。

 帰る途中、村長が村人と怪訝な空気で話していた。


「あれを壊したのは誰なんだ」

「そう決めつけるな、近々祭りもある」

「見回りも頼んであるから」

「大丈夫だ」


 話しているのは、昨日言っていた不穏な噂話のようだ。









「ただいまー」

「おかえり」

「父さん、村長さんが怖い顔をしてたけど何かあったの?」

「ああ、何日か前の夜、俺も起こされたんだが」

「広場の共有水場が壊されていたんだ」

「え!大丈夫なの?」

「まぁ、そうゆうことはたまにあるだ」

「あるんだ…」

「でも、今回は魔物のような跡があってな」

「今、見回りをやっているんだ」

「へー」









翌日

 朝早く父さんが呼び出されていた。

「どうしたの?」

「木こり小屋が壊されていたんですって」

「え!?」

「おかしいね、木こり小屋なんて夜誰も行かないのに…」

 僕は朝食後すぐに小屋に向かった。


 小屋に着いたらあっとした。昨日言ってた通りのことが起こっている。





「これはまずいな…」




 本によると苗が成長しない限り続くとある。












 僕は対策を練ることにした。























 お読みいただきありがとうございます
 第3話どうだったでしょうか。本当は苗の成長まで書きたかったのですが、最初の成長をしっかり書きたいと思い、第3話はここまでにしました。1回目の公になった被害がみんなが集まる広場、2回目が人のあまり行かない小屋という対比をしてみました。この法則がわからないことで成長前の厚みを出せたと思います✨遊びに行くとき、妹がついて来なかったですが、これは家で母さんと祭りの準備を手伝っているという裏話があります。この前は本を読むからと置いて行かれ、今回も妹の目を盗むように出かけています。

 気に入っていただけましたら「お気に入り」にしていただけると幸いです
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