声優の養成所の先生やってます

ミントブルー

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8.ロッテンマイヤーさん

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 テレビをつけた。あっ、ハイジだ。最近CMでハイジをよく見る。そして、セットで母を思い出す。
 
 小学生の頃、私はいつも学校から家までダッシュで帰っていた。アニメの再放送を見るためである。小学生の頃は、ハイジに一休さん、トムとジェリーなどをよく見てた。その中でも、よく再放送されてたのがハイジ。
 そして隣にはいつも母がいた。母は漫画ばかり読んでる私に「本を読みなさい!」とよく言ってたが、ハイジの再放送とサザエさんと日曜の夜やってた世界名作劇場は、いつも楽しみにしていて一緒に見ていた。そんなある日、母が突然
 「ユキちゃんももうちょっと大きくなったらロッテンマイヤーさんの気持ちが分かるのよ」
 といきなり言い出した。ポカンとしている私に、ロッテンマイヤーさんは悪い人ではない。ただ厳しくするには理由があるのだと言ってきた。ロッテンマイヤーさんはハイジを怒るこわーい人でしかなかった。
 そんな私に母は大きくなったらロッテンマイヤーさんの気持ちが分かるようになるからと、そう言った。
 話は飛ぶが、私は一時期、クロスステッチにはまっていたことがある。お小遣いはたいてクロスステッチセットを買い、木のわっかを持ち、ちひたすらチクチク縫っていた。実はこれロッテンマイヤーさんの影響なのだ。ロッテンマイヤーさんがいつも刺繍をしていたので、私もやってみたいなと思ってたのだ。それにしてもロッテンマイヤーさんって、本当に刺繍が好きなんだなと思っていた。
 ロッテンマイヤーについてはまだある。家族全員でハイジを見ていた時、母が父に(父もハイジは好き)
 「ゼーゼマンさんもロッテンマイヤーさんに頼むしかないのよね。家政婦なんて一生家に閉じこもっていなきゃいけない仕事だからね」
 と言っていた。

 かなり大人になって妹とこの話をした時
 「ロッテンマイヤーさんって、刺繍が好きだからやってたんじゃなくて単にすることがないから刺繍をやってたんだなと思った」
 これに対して妹は
 「そうよね。昔はテレビもないし、ロッテンマイヤーさんの性格じゃ大事なお嬢様(クララ)を置いて芝居なんか見に行かないだろうし、年に一度は帽子や服を作りに行ったり休暇をもらって旅行にはいくだろうけど、それじゃ全然足りないよね。まあ、なかなか出来る仕事じゃないよね。」
 
 CMでハイジを見るたびに、他界した母とロッテンマイヤーさんの話を思い出す。
 
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