Fairy Song

時雨青葉

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第17歩目 奴隷の町

やむを得ない探索

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「金が余るから、ヒントだけくれてやる。お前からすりゃ理解できねぇだろうが、身を守りてぇなら、この町をくまなく見ておけ。」


 最後にそんなことを言われながら、バーティスの酒場を後にした。


 あの地獄絵図のような景色を、くまなく見ろと?


 反感をいだきはしたものの、何せこの町を牛耳るバーティスからの忠告だ。
 下手に無視もできまい。


 自分を捕まえるための時間稼ぎかとも考えたが、ヒンスいわく、彼は金にだけは忠実だという。


 ならば、金が余るからと発言した手前、彼の言葉にはそれ以上の意味など含まれていないのだろう。


 ……と、できる限り自分の思考を前向きに操作し、本音を言えば今すぐにでも立ち去りたい町の中を歩き回った。


 視線はできるだけ前に固定。
 誰とも目を合わせないように意識しながら、時おり周囲をさりげなく観察する。


 視覚はそれでなんとかごまかせた。
 だが、耳に入ってくる音はどうにかなるわけもなく……


 様々な言語で交わされる色んな話。
 理解できなければよかったのだが、自分の特技上そうもいかず。


 歩き始めて約一時間。


 さすがに精神力の限界を感じたシュルクは、人通りが少ない路地裏への避難を余儀なくされていた。


 周りに舐められまいと鍛え上げた言語能力だが、今だけはそれを全力で呪いたい。


 辺りは静かだというのに、頭の中では自分のしゃくさわった言葉の数々が木霊こだましてやまない。


 それに苛立ちを煽られ、大きくなった苛立ちがさらなる苛立ちを呼ぶ。


 おかげで、先ほどから霊子が騒いで仕方ないではないか。
 必死に抑えるのも、いい加減きつい。


 胃のむかつきをこらえながら、薄暗い道で深呼吸を繰り返すことしばらく。


「……ん?」


 ふと、胸にいだいたのは違和感。
 多少なりとも落ち着いたことで、ようやく気付いた。


 霊子たちがざわめく原因が、決して自分だけではないことに。


 霊子の流れに意識を向け、その先にあるものを認識したシュルクは眉を寄せる。


 そこには、大きなガラス窓がついた建物が。


 よく手入れがされているのか、白壁に目立った汚れはなく、木製のドアもつややかな光沢を放っている。


 こんな場末感が漂う裏路地には、到底似合わない外観だ。


 もう少し詳しく見てみようと思ったシュルクは、ゆっくりとその建物に近付いた。


「―――……」


 そこに立ったシュルクは、言葉を失う。


 ガラスの向こうには、大小も彩りも様々な石が並べられていた。


 黒い布の上に、等間隔に設置された石たち。


 それらが照明を反射する輝きは、通りがかった人々を一瞬で釘付けにしてしまうほどに美しい。


 だが、シュルクは決して石の美しさに言葉を奪われたわけではなかった。


 なんとなく伝わってくる。
 この周囲に漂う霊子が語るのは嘆き。


 そして、霊子が嘆く理由はおそらく―――


「何か、お気に召すものはありましたか?」


 その時、柔らかい声が耳朶じだを叩いた。

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