Fairy Song

時雨青葉

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第20歩目 静観

隣に、温もりはなく―――

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「お客さん」
「………」


「お客さんってば!」
「……んん…?」


 なんだよ。
 こっちは久々の休息なんだから、邪魔しないでくれ。


 反射的にそんなことを思いながら自分の肩を揺さぶる肩をはね除けて、シュルクは薄目を開ける。


(ああ……そういや、寝てたんだっけ…?)


 ぼんやりとそんなことを思い出して―――


(寝てた!?)


 一瞬で目が覚めた。


「うわっ…!?」


 突然飛び起きたシュルクに、シュルクを起こしに来た男性が驚いてたたらを踏んだ。


 ツアーの従業員とは違う制服。
 どうやら、この遊覧船の乗組員のようだ。


「びっくりした…。島に到着しましたよ。皆さん船をお降りになりました。お客さんで最後ですよ。」


「そうですか……すみません。」


 自分が警戒していた相手ではなかったので、ほっと肩を落とすシュルク。
 しかし、ほっとしたのもつかの間の出来事。


…?」


 その単語に違和感をいだいたシュルクは、慌てて周囲を見回した。


 ―――フィオリアが、どこにもいない。


「あの!」


 シュルクは男性に詰め寄る。


「俺の隣に、女の子がいませんでしたか!?」
「ええっ…? い、いませんでしたよ。」
「なっ…」


 頭を鈍器で殴られた気分だった。


「すみません!」


 男性を押し退け、シュルクは足をもつらせながら船の外へと飛び出した。


『大丈夫。シュルクが寝てる間、私がちゃんと傍にいるから。』


 うつらうつらとした意識が闇に落ちる寸前、そんなやり取りをしたことを微かに覚えている。


「ちくしょう。どこ行ったんだ、あの馬鹿…っ」


 完全に油断した。


 いや。
 あのフィオリアが、自身の発言をくつがえして自分の傍を離れるわけがない。


 なら、どうして彼女が隣にいない?
 まさか、ラミアが何かを仕掛けたのか?


 それこそまさか。


 遊覧船に乗った後、船内は全部見て回った。
 色んな人の話も聞いた。


 専門の警備員までいるこの船の中で、ラミアが何かを仕掛けてくるとは考えがたい。


 それに、互いに契約を守るという姿勢を見せ合った以上、ネラみさきに到着するまでは何事も起こらないはずだ。


 だけど、万が一にもフィオリアの身に何かあったら……


「こんな場所で、勝手に離れないでくれよ…っ」


 苛立ちから爪を噛むシュルク。
 その表情は、いつにも増して必死そうだった。

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