Fairy Song

時雨青葉

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第24歩目 特訓の始まり

川辺で小休止

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 朝の件がきっかけで、その後はスムーズに事が運ぶ……わけがなかった。


 やはり、霊子にも種類があるというのは事実なのだろう。


 朝食を取ってガルドの部屋にこもってからチョーカーを外してみると、昨日と同じ勢いで霊子たちに群がられてしまった。


 ただ、昨日とは訴えられる感情が少し変わった。


 ―――寂しかった
 ―――悲しかった


 今日のメインとなる訴えは、そんなところ。


 昨日で〝好き〟を伝えて、第一段階は満足ということか。
 今度は、これまで無視されたことに対するご不満を聞けと。


 自分が普通に溶け込んで生きるためには、ああするしかなかったんだ。
 ずっと自分を見ていたなら、そのくらい分かってくれよ。


 言い訳のようにそう思う一方で、昨夜見た夢が罪悪感を煽ってくるもんだから気まずい。


 昨日とはまた違う困難にさらされること、半日。


「はああぁぁー…」


 気まずさに負けてガルドの家から逃げ出したシュルクは、集落の近くに流れている川縁かわべりで溜め息をついていた。


「覚悟はしてたけど、ままならないもんだな……」


 寝転んだことで視野いっぱいに広がる木々と青空の景色を眺めながら、ポツリと呟く。


 自分は、霊子と語らうにあたって邪魔になる経験が多すぎる。


 昨日ガルドに告げられた苦言を、身にみるほどに痛感する。


 すでに無意識でも霊子を弾けるようになっている自分は、その無意識を抑えるために途方もない労力を使う。


 それでも気を抜くと拒絶癖が出てしまい、途端に怒られるように霊子に群がられては頭痛と眩暈めまいで泣きを見る。


 しかも、今朝からの罪悪感のせいで霊子の声を聞くことが気まずくなってしまったのもあって、チョーカーを外す時点で葛藤かっとうが激しい。


 これでは、進展しているのやら後退しているのやら……


 余計な意地も後ろめたさもなく、すぐに謝って仲直りができた単純な幼少時代。
 そんな時に、戻れるものなら戻りたいものである。


「俺だって、好きでこんなにこじらせたんじゃねぇっての……」


 現実逃避のようにぼやいて、目を閉じる。


 川に浸かった足から、冷たくも心地よい感覚がする。
 頬に触れる穏やかな風と木々がさざめく音が、強張った体から力を抜いていくよう。


 どんなに霊子が寄ってきても、周りの誰もが笑うだけ。
 最初からこんな環境にいられたら、今までの苦労なんてなかったのだろう。


 どうせ霊子が導いてくれるなら、この集落の一員として産み落としてくれてもよかったのに。


 同じ境遇の仲間がいない遠い地に生まれてしまったのは、運命が最後の意地悪をしたのか。


 それとも……他でもない自分自身が、フィオリアの近くに生まれたがったからなのか。


(もしもそうなら、俺は生まれつき頭がやられてたってことだな…。いっそ笑えてくるわ。)


 小さく笑いながら、シュルクは深呼吸と共に脱力。


 ふとその時―――ずしり、と。
 胸の上に何かが乗ってきた。


「ん…?」


 何事かと思って目を開く。
 視線をそちらに向けると、こちらを見据みすえる金色の瞳と目が合った。


「なんだ、このふてくされた猫は。」


 正直な感想を一言。
 それが不服だったのか、目つきを厳しくした猫が一度跳び跳ねて腹の上に着地する。


「うっ…」


 重量感たっぷりの一撃に、シュルクはたまらずうめくはめに。


「お前、自分のずんぐりむっくり感を分かってんのか!? しかも、わざわざ腹に落ちてきやがって!」


 これ以上の攻撃はたまらないので、シュルクはすぐに猫を抱えて体を起こす。
 そして、次にとんでもなく驚くことになってしまった。


 いつの間にか、周囲を動物たちに囲まれている。
 犬だったり鳥だったり、その種類は様々だ。


「何…? お前ら、どこから湧いてきたんだ…?」


 体をよじ登ってくるリスや肩に留まってくる小鳥に、戸惑いを隠せないシュルク。
 そんな彼の後ろに、音もなく影が立った。

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