Fairy Song

時雨青葉

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第26歩目 出るか、残るか―――

これが感覚派の天才か!!

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「シュルクお兄ちゃんに霊族か霊獣をつくってあげるの、手伝って!!」


 シノンが告げたのは、そんなこと。
 まさかの発言に、シュルクは頭痛も吐き気も忘れて驚いてしまう。


「へ…?」


 対するミオンも、目をまんまるにしてまばたきを繰り返している。
 そんなミオンに、シノンはさらにまくし立てる。


「だって、シュルクお兄ちゃんに霊子が寄ってきすぎちゃうんだもん! この黒いやつの代わりになる子がいないと!」


「んー……でも、じじ様にだめって言われてるし……」


 ミオンの言葉でハッとする。


 すでに存在している霊神を召還するならともかく、そういった存在を一から生み出すともなると、その際に込める魂の量は計り知れない。


 そして、それを繰り返した際の影響は、事例がほとんどないせいで分からないのだという。


 しかし、そういう理屈を教える前に自分でやり方を覚えてしまったものだから、ミオンはなんでもないことのように霊獣や霊族を生み出してしまう。


 シノンだけではなく、チーやベリエルを生み出したのもミオンらしい。


 これ以上好きに霊獣たちを生み出させていたら、いつかミオンに悪影響が出るかもしれない。


 そういう危機感があって、ミオンにはそれをしないようにと言い聞かせているのだとガルドが語っていた。


 それをさせてしまうのは……


「待て待て待て待て!!」


 シュルクはさっと顔を青くし、全力でシノンを止めた。


「分かった! 俺が我慢するから! ミオンに霊獣とかをつくらせるのだけはやめてくれ!! 俺がじいちゃんに怒られる!!」


「でも、またすぐに同じになるじゃん。」


「う…っ」


 涙目で訴えられて、とっさに返せる言葉がなかった。


 チョーカーに関する言い争いも何回目だという話。
 さすがに、シノンも信用できなくなっているようだ。
 この場にガルドがいない以上、上手く言いくるめてなだめることも難しい。


 ミオンに霊獣などを生み出させるのはご法度はっと
 かといって、シノンに引く気はない。


 となると、残る手は―――


「分かった。俺がやってみるから、ミオンはやり方だけ教えてくれ。」


 これしかあるまい。


「簡単だよ! 霊子を集めてぎゅーっとお祈りすると、いつもみたいなふわふわした感じじゃなくて、ぐぐーっと熱くなるの。そしたら、もう一回ぎゅーっとお祈り!」


「………」


 キラキラした表情で力説されるも、思考は完全に停止。
 脳内で何度か説明を繰り返してみても、これといった情報が入ってこない。


(これが感覚派の天才か!!)


 途端に眩暈めまいがしたようで、シュルクは額に手をやって渋面になる。


 今までに会った天才といえばルーウェルだが、彼は自分と同じく理論派だったので、コミュニケーションを取るのに苦はなかった。


 それが、ミオン相手ではどうだろう。
 何からどう確認したものか、そしてそれをどう伝えればいいのかさっぱりである。


 さあ、どうする?
 この高難度ミッションをどうやって攻略する?


「……やってみるしかねぇか。」


 色々と考えてみたが、これしか思いつかなかった。


「最初の手順は、霊子を集めること……は、もういいな。十分すぎるほど集まってるし。」


 物は試しだ。


 ミオンの説明に衝撃を受けたおかげか頭痛とかもやわらいだし、このまま作業に集中してしまえ。


「お祈りって、何をお祈りするんだ?」


「えっとね、おしゃべりできた方がいいとか、頭がいい方がいいとか、猫がいいとか、犬がいいとか、そういうの!」


「なるほど。まずは、能力や姿形の定義をしろと。」


 ミオンの説明を自分の解釈に置換しながら、シュルクは集中するために目を閉じた。


 正直、そこまで大層な能力はなくていい。
 自分に群がりすぎる霊子を、適宜なだめたり取り込んだりしてくれれば十分だ。


 初挑戦で高度な知性を持った霊族なんて生み出せるわけもないし、霊獣から挑戦してみるのが妥当だろう。


「どんな子がいい? ドラゴンみたいにかっこいい子? 小人さんみたいに可愛い子?」


 わくわくした雰囲気のミオンたちに訊ねられ、シュルクは真面目に思案。
 結果―――


「いや! 普通でいい! 普通で!!」


 冷や汗をかきながら、全力で首を横に振った。


(頼む! 今後長い付き合いになるんだから、とにかく普通で! せめて、周りが〝珍しいペットだなぁ〟って軽く流せる姿で生まれてきてくれ!!)


 感覚派の天才たるミオンの手にかかれば本当にドラゴンだって出てきてしまいそうで、ミオンの思考力を上回る勢いを意識して拝んだ。


 そうして念じ続け、どのくらいが経った頃だろうか。
 自分の中から何かが抜けていくような感覚と共に、周囲の空気が熱を帯びてきた。


 春の陽気というよりは、夏の日差しに近いような。
 身を刺してくる熱さだ。


「おー、いい感じ!」


 ミオンがパチパチと手を叩く。


「じゃあ、もう一回お祈りだね! どんな子になってほしい? 優しい子? 明るい子?」


 能力や外見の次は、内面的な要素の定義か。
 これはどうしたもんか。


 フィオリアを第一に考えてほしい。
 他人に迷惑をかけるのは勘弁。
 あんまり自由奔放ほんぽうなのもやめてくれ。


 注文をつけ始めたら、きりがなさそうだ。
 その中で一番に願うことを選ぶとすれば……




(どんなに泣くことや怒ることがあったとしても―――最後には全員で笑い合えるような、そんな家族になれるといいな。)




 きっかけは成り行きだとしても、せっかく生まれてくるのなら、目的を達するための道具にはしたくない。


 シノンやチーたちと接するこの里の人々のように、その子を家族の一員として迎え入れてあげたい。


 そして家族になるなら、どんな姿でも大切にできる自分でありたい。


 難儀な体質を持ったせいでひねくれた自分をどこまでも大切にしてくれた、両親やザキたちのように―――


 ぐっと。
 自分の中の何かが、さらに外に引き寄せられていく。




 そして、周囲の熱が瞬く間に一つになっていって―――



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