84 / 86
おまけの小話~シアノ編~
Song.5 可愛い子供の出来心
しおりを挟む
あれからアルシードは、ぼくのことを〝シアノ君〟じゃなくて〝シアノ〟って呼ぶようになった。
当然だよね。
だって父さんは、子供をそんな風に他人行儀に呼ばないもん。
気持ちは晴れやか。
足取りも軽い。
これで満足―――するわけないじゃん。
「シアノ君。今日もお疲れ様でした!」
大手アパレルの新作発表にモデルとして参加した後の会見。
このカメラのうざいフラッシュやマイクの量にも、かなり慣れたもんだな。
「シアノ君の新曲、聴きましたよ! 今回はロックにしたんですね!!」
「うん、そう。テンションが高い時に作ったから、自然とそういう曲調になったんだよね。でも、ぼくらしさは損なわずにまとめたつもりだよ。」
「ええ! シアノ君らしく、スタイリッシュで綺麗な仕上がりだったと思います!」
「やはり、メジャーデビューはしないんですか?」
「うん、そのつもりはないかな。やっぱりぼくの原点はネットだし、その時から応援してくれたみんなには、いつまでも感謝していたいからね。これまでどおり、ぼくの歌は好きな時に気軽に聴いてほしいんだ。」
「初志貫徹ですね! すばらしいです。」
「ありがと♪」
ちょっと野性味を帯びた色気を演出してウインクを飛ばすと、そこにいた女の人たちが小さく悶絶するのが見えた。
チョロいねー。
アルシード直伝のモテ仕草は強いや。
「ごめんね。色々と話を聞きたいのは分かるんだけど、今日は手短に済ませてほしいんだ。」
「もしかして、次のお仕事が……」
「あー、違う違う。」
ひらひらと手を振りながら、面倒そうに顔をしかめる。
「ビザの更新。知ってる人は知ってると思うけど、ぼくはルルア国民じゃないからさ。」
半分本当の半分嘘。
ビザの更新は必要なんだけど、手続きはとっくの昔に終わってるんだよねー。
「そういえば……シアノ君の生まれは、セレニアでしたっけ?」
「うん。めんどくさいよねー。もう三年近くルルアに住んでるし、活動拠点を変えるつもりもないし、あの人みたいに国籍でも移動させようかなぁ。」
「あの人っていうと……」
「今超話題の天才科学者、アルシード・レインさんですよね!!」
うん、ありがとう。
とても都合よく、簡単にあの人の名前を出してくれて。
「同じセレニア生まれとして、あの電撃移籍はどう思われます?」
「仕方ないんじゃない? あんなことがあれば、ぼくだって移籍すると思うもん。いくら同じセレニア生まれだっていっても、あの事件を許せとは言えないよ。」
「そうですよね。アルシードさんが以前、あの事件について語ってくださったことがあったんですが……聞いていて、胸が潰れるようでしたよ。」
「下手な同情はやめときなー。あの人、同情されるの嫌いだから。」
「それでもあんなに優しい笑顔で、我々の質問に丁寧に答えてくださって……無理をされてないといいのですが……」
「いやいや、杞憂だって。あの人今、全力で楽しんで笑ってるから。悲劇の主人公らしく涙をこらえてーなんて、あの人はそんな可愛い性格をしてないよ。」
「……あれ?」
何かがおかしいことに気付いたのだろう。
記者にカメラマン、音響の人々が怪訝そうに眉を寄せる。
「シアノ君……もしかして、アルシードさんとお知り合いですか?」
「知り合いも何も、あの人がルルアに来てる時は、ほぼ毎日顔を合わせてるよ? そもそもぼくは、あの人と一緒にルルアに来たようなもんだし。」
「え…?」
ざわざわとどよめき出す会見会場。
マネージャーも目をまんまるにしちゃってる。
そりゃあ驚くよね。
ぼくは今まで、ジョー・レインおよびアルシード・レインとの関係なんて匂わせたことがないもの。
「あれ、意外? 同じセレニア生まれでルルアで活動を始めた時期も近いから、誰かしら関係があるって勘繰る人がいるかなって思ってたのに。」
「いえ…。ルルアに移住するセレニアの方も、友好同盟締結から増えていましたので……」
「あー、そっかぁ…。だから、今まで話を聞かれなかったのかぁー。……残念だな。ぼくはあの人がアルシード・レインに戻ってくれたことを、誰よりも喜んでたのに。」
「誰よりも、ですか…?」
どういう意味か、と。
その場にいる全員の視線がぼくに集中する。
ぼくはそんなお馬鹿さんたちに、満面の笑顔を向けてやった。
「だって、アルシード・レインは―――ぼくの自慢の父さんだからね♪」
これは本当の本当。
あの人は誰よりも自慢で、誰よりも大好きな、世界一の父さんだ。
「えええぇぇぇっ!?」
割れんばかりの絶叫に包まれる会場。
ぼくはそれを満足げに眺めて、トンズラ体勢に入る。
「シアノ君! どういうことですか!?」
「まんまの意味だよ~。あー、秘密解禁って気持ちいい~。これでもう我慢せずに、堂々と父さんって呼べる~♪」
「待ってください! もう少し詳しいお話を―――」
「だーかーらー、ビザの更新があるって言ってるじゃん。早く話を聞きたいなら、父さんにでも聞いて~♪ どうせ、父さんのところに行ってる記者もいるでしょ~♪」
「シアノくーん!!」
「~~~♪」
追及の声を背に、ぼくは颯爽と会場から逃走。
テンションが上がって、つい父さんを巻き込んじゃった。
まあ父さんなら、可愛い子供の出来心だってことで、笑って許してくれるよね。
だって父さんは―――特別な存在には、べらぼうに甘い人だもん♪
当然だよね。
だって父さんは、子供をそんな風に他人行儀に呼ばないもん。
気持ちは晴れやか。
足取りも軽い。
これで満足―――するわけないじゃん。
「シアノ君。今日もお疲れ様でした!」
大手アパレルの新作発表にモデルとして参加した後の会見。
このカメラのうざいフラッシュやマイクの量にも、かなり慣れたもんだな。
「シアノ君の新曲、聴きましたよ! 今回はロックにしたんですね!!」
「うん、そう。テンションが高い時に作ったから、自然とそういう曲調になったんだよね。でも、ぼくらしさは損なわずにまとめたつもりだよ。」
「ええ! シアノ君らしく、スタイリッシュで綺麗な仕上がりだったと思います!」
「やはり、メジャーデビューはしないんですか?」
「うん、そのつもりはないかな。やっぱりぼくの原点はネットだし、その時から応援してくれたみんなには、いつまでも感謝していたいからね。これまでどおり、ぼくの歌は好きな時に気軽に聴いてほしいんだ。」
「初志貫徹ですね! すばらしいです。」
「ありがと♪」
ちょっと野性味を帯びた色気を演出してウインクを飛ばすと、そこにいた女の人たちが小さく悶絶するのが見えた。
チョロいねー。
アルシード直伝のモテ仕草は強いや。
「ごめんね。色々と話を聞きたいのは分かるんだけど、今日は手短に済ませてほしいんだ。」
「もしかして、次のお仕事が……」
「あー、違う違う。」
ひらひらと手を振りながら、面倒そうに顔をしかめる。
「ビザの更新。知ってる人は知ってると思うけど、ぼくはルルア国民じゃないからさ。」
半分本当の半分嘘。
ビザの更新は必要なんだけど、手続きはとっくの昔に終わってるんだよねー。
「そういえば……シアノ君の生まれは、セレニアでしたっけ?」
「うん。めんどくさいよねー。もう三年近くルルアに住んでるし、活動拠点を変えるつもりもないし、あの人みたいに国籍でも移動させようかなぁ。」
「あの人っていうと……」
「今超話題の天才科学者、アルシード・レインさんですよね!!」
うん、ありがとう。
とても都合よく、簡単にあの人の名前を出してくれて。
「同じセレニア生まれとして、あの電撃移籍はどう思われます?」
「仕方ないんじゃない? あんなことがあれば、ぼくだって移籍すると思うもん。いくら同じセレニア生まれだっていっても、あの事件を許せとは言えないよ。」
「そうですよね。アルシードさんが以前、あの事件について語ってくださったことがあったんですが……聞いていて、胸が潰れるようでしたよ。」
「下手な同情はやめときなー。あの人、同情されるの嫌いだから。」
「それでもあんなに優しい笑顔で、我々の質問に丁寧に答えてくださって……無理をされてないといいのですが……」
「いやいや、杞憂だって。あの人今、全力で楽しんで笑ってるから。悲劇の主人公らしく涙をこらえてーなんて、あの人はそんな可愛い性格をしてないよ。」
「……あれ?」
何かがおかしいことに気付いたのだろう。
記者にカメラマン、音響の人々が怪訝そうに眉を寄せる。
「シアノ君……もしかして、アルシードさんとお知り合いですか?」
「知り合いも何も、あの人がルルアに来てる時は、ほぼ毎日顔を合わせてるよ? そもそもぼくは、あの人と一緒にルルアに来たようなもんだし。」
「え…?」
ざわざわとどよめき出す会見会場。
マネージャーも目をまんまるにしちゃってる。
そりゃあ驚くよね。
ぼくは今まで、ジョー・レインおよびアルシード・レインとの関係なんて匂わせたことがないもの。
「あれ、意外? 同じセレニア生まれでルルアで活動を始めた時期も近いから、誰かしら関係があるって勘繰る人がいるかなって思ってたのに。」
「いえ…。ルルアに移住するセレニアの方も、友好同盟締結から増えていましたので……」
「あー、そっかぁ…。だから、今まで話を聞かれなかったのかぁー。……残念だな。ぼくはあの人がアルシード・レインに戻ってくれたことを、誰よりも喜んでたのに。」
「誰よりも、ですか…?」
どういう意味か、と。
その場にいる全員の視線がぼくに集中する。
ぼくはそんなお馬鹿さんたちに、満面の笑顔を向けてやった。
「だって、アルシード・レインは―――ぼくの自慢の父さんだからね♪」
これは本当の本当。
あの人は誰よりも自慢で、誰よりも大好きな、世界一の父さんだ。
「えええぇぇぇっ!?」
割れんばかりの絶叫に包まれる会場。
ぼくはそれを満足げに眺めて、トンズラ体勢に入る。
「シアノ君! どういうことですか!?」
「まんまの意味だよ~。あー、秘密解禁って気持ちいい~。これでもう我慢せずに、堂々と父さんって呼べる~♪」
「待ってください! もう少し詳しいお話を―――」
「だーかーらー、ビザの更新があるって言ってるじゃん。早く話を聞きたいなら、父さんにでも聞いて~♪ どうせ、父さんのところに行ってる記者もいるでしょ~♪」
「シアノくーん!!」
「~~~♪」
追及の声を背に、ぼくは颯爽と会場から逃走。
テンションが上がって、つい父さんを巻き込んじゃった。
まあ父さんなら、可愛い子供の出来心だってことで、笑って許してくれるよね。
だって父さんは―――特別な存在には、べらぼうに甘い人だもん♪
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる