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170,占い!?

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「占い、ですか?」
「そうそう! ハラベストくんってなんかすっごい運命な予感がするんだよね!」
 ニコニコとした顔で、俺の肩を掴んで離さない。
 楽しそうだな……。
「ちなみに、すっごい運命って、良い方か、悪い方、どっちですかね?」
「………………秘密♡」
「絶対悪い方だー!」
 ぶっちゃけそんな気がしてたー! してましたとも!
「まあ、まあ、梨沙は忙しそうだし、ね?」
 クロエさんは梨沙を指差す。
「ここの修繕は、詳しいことを聞いてこない建築会社に頼んで下さい。そこの観葉植物は撤去。技術班は、犯人の身元特定を。迅速にお願いします」
 梨沙はお仕事モードで、テキパキと処理班の人たちに指示を飛ばす。……っていうかあれ、竜心?
「あっ、おつかれっすネリア!」
 向こうも気づいたようで、手を振りながら近寄ってきた。
「おう、お疲れ」
「聞きましたよ! 銀行強盗を倒したって!」
「え、まあ。倒したは倒したけど、ほとんど魔法のおかげだぜ?」
「それでもっす! 一応、リーダー格の男とは、ナイフでサシだったんすよね? やっぱすげぇっす!」
「そ、そうか?」
「そおっす! もっと自信をもって! あ、呼ばれたんでまたあとで!」
 と矢継ぎ早に話して、仕事に戻っていった。
「自信を持って、か」
 俺は、自信っていうものは、諸刃の剣だと思っている。自信をつけることによって、確かに強くなる。でも、その分慢心が生まれるから、弱くもなる。まあ、そこそこの自信があれば、人間ちょうどいいんだ。特に俺はね。
「占い! するよ!」
「うおっと!?」
 クロエさんに押され、やや強引な形で、銀行のカウンターに座らされる。
「もー、強引ですね」
「てへ、まあ、別に嫌では無いでしょ?」
「まあ、気になるっちゃ気になりますね」
 所詮占いだし、当たるとも限らないし。
「じゃ、目をつぶっててね、五分ぐらい」
「五分もつぶってるんですか?」
「うん、よろしく!」
「はあ、分かりました」
 俺は言われたとおりに目をつむる。すると、何やらゴソゴソと何かを探す音が聞こえてきた。
「合図したら、目を開いてね」
「了解です」
 しばらく目をつぶっていると、なにやら甘い香りが。
「なんだこの香り。いい香りだけど」
「あ、リラックスできるように、お香焚いたの。気にしないで」
 ああ、さっき話していた香壺のやつね。
「では、ハラベストくん、君は私の声を聞いていると、段々意識が曖昧になっていきます」
 ……催眠術!?
 慌てて立ち上がろうとするが、体に力が入らない!
「さあ、もっと楽になって……」
 クソッ…………。
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