中途半端な俺が異世界で全部覚えました

黒田さん信者

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25、続、デート

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25,続、デート


「さあさあご主人! ご飯です! ご、は、ん、で、す!」
「わかったから、で? 何を食べる?」
 ここは上品にパスタ……っぽいものか? ほら、そこの店のやつ。
「肉、食べましょ」
 でも、ナナカが指差したのは屋台の骨付き肉だった。たしかに、つややかに輝く肉汁が滴る骨つき肉は、空腹の俺にはたまらないごちそうに見える。
「肉、食べましょ」
「……服、汚れるぞ」
 うまそうなんだけどさ、うん、うまそうなんだけどさ。その……服、まじで汚れるぞ? 見たか感じ、キレイに食べるのは、かなり無理ゲーに近い。
「大丈夫ですよ!」 
 しかし、ナナカは謎の自信に満ちた声で言い張る。
「だって私は――」
「可愛い可愛い、妖精さん、だろ?」
 俺は前回の失敗を踏まえた言葉をドヤ顔で言った。
「……ぷぷっ、あはははっ! その通りです! ですので、大丈夫です!」
 ナナカが笑い出した。
「……くっくっ、あーっはっは!」
 釣られて俺も笑い出した。そうしたら通行人に変な目で見られた。なんかすいません。






「…うぇぇ、肉汁で洋服汚れた……」
 ナナカの 若草色のブラウスに、べったりと肉汁が付着してしまっている。
「あっ、バカ! やっぱりこぼしたか!」
 結局汚した。だめじゃん!




「あー、おいしかったですねー」
「まあな。でも、服がご臨終したな」
 ナナカの服が汚れてしまったので、服屋に行くことにした。
「ねーご主人、一体どんなのが良いですかね?」
「んー、安いやつ?」
 経済的負担が少ないので頼むぜ。
「そんなっ!?」
 てくてくと歩き、目的の店に到着した俺たち。しかし――
「……なあ」
「はい?」
 くるりとこっちを振り向いた。
「ここ、ランジェリーショップじゃねえか! 確かに服屋ではある、あるけど違うだろっ!」
 でかでかと『ランジェリー専門店』って書いてあるじゃん! 布地の少ないスンバラシイものが売ってるとこじゃねえかよ!
「いやー、実はこの大きさになって、セリアさんに服を借りたのは良いんですが、その、し、下着を借りるのを忘れてしまって……」
「………………は?」
「その、つまり、今私はノーパン、ノーブラです」
「………………はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
 おいおい! お前! 何ノーパン、ノーブラでぴょんぴょん飛び跳ねてんだよ!? も、もしかしたら見えちゃってるかもしれないんだぞ!?
「いやー、ご主人と会ったらさっさとランジェリーショップに行くつもりだったんですが、忘れちゃって……てへぺろ」
「アホかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 スパーン! ナナカの頭を叩いたらめっちゃ気持ちいい音が響いた。ていうか、コイツのてへぺろ、いままでだったらイラッとしていたかもしれないが、何故か不思議と可愛いとか思っちゃったりした。……じゃねぇ!
「は、早く買ってきてくれ!」
 視線が、視線が痛いんだよ……。
「わかりましたー、あ、このスケスケのとかどうですかねぇ」
 ショーケースの下着を指差す。
「速く買えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」





「はあ、やっと買い終わった……」
 とてもきつい戦いだったぜ。周りの視線との。申し訳ない、ウチのバカが……。
「お待たせしました~」
 ちなみに服の汚れはランジェリーショップの店員さんが水で叩いて軽く落としてくれたらしい。かなり目立たなくなっている。ありがとうございます店員さん。
「じゃあ、今からぱんつ履きますね」
「…………ん?」
 ナナカは袋をゴソゴソして、桃色の下着を取り出した。
「じゃ、そこの茂みで着替えてきまーす」
 ナナカは笑顔で茂みに向かって歩き出した。
「……あいつの頭のなかはどうなっているんだ……」
 乙女にあるべき恥じらいという四文字が見当たらない。
「おまたせしましたー」 
 笑顔で茂みから出てきたナナカ。大丈夫かアイツ。
「ったく、次は服屋か?」
 目立たなくなったといえども、まだ汚れが残っているので新しい服を買わねば。
「はい、そうですね」
 歩くのも面倒なので、近くのある服屋で済ませようとしたのだが――
「……ここでいいのか本当に……?」
 ゴシックドレス専門店『ドールマギアス』と書いてあった。
「ゴスロリですか! いいですね! 私、着てみたいです! それに、ご主人も私のゴスロリ姿、見たいですよね?」
「まあ、見たいっちゃ見たいな」
 コイツもこんなんではあるけど、美少女なのだ。美少女のゴスロリ姿に興味のない男なんていないだろ普通。
「じゃあ入りまーす!」
 意気揚々とゴスロリ専門店に入るナナカ。
「……いらっしゃい。今日はどんな逸品をお探しで?」
 ぬっ、と横から全身を黒で固めた女性が出てきた。
「ヒッ!」
 俺は思わず飛び退いてしまった。結構怖いよこの人!
「あー、すぐ着れるゴスロリってあります? 一式欲しいんですけど」
「……まあ、可愛い。これは磨かないと。隣の彼はいいの?」
「……俺?」
「そう、アナタよ。ゴスロリ、興味無いかしら?」
「いや、女装はちょっと……」
 丁重にお断りさせていただこう。
「いえ? そのままよそのまま。そうしたら、いい男が、アナタを掘りに来てくれるわ……」
「すいませんお邪魔しました帰ろうぜナナカ」
 逃げよう。逃げないと。俺の肛門括約筋が死んでしまう!
「冗談よ。可愛らしい彼女さんね。どうかしら? 私にコーディネートさせる気は無いかしら? もし、させてくれるというなら、最高の姿を見せてあげるわ。それに、少しだけど服を値引きしてあげる。そうねぇ……これぐらいでどうかしら?」
 彼女は五万サエルと言った。俺の手持ちが十万サエル。普通に買える。
 この世界では、一万サエルで、俺たちの世界の通貨と比較すると、五千銅貨となる。つまり、五万サエルとなると、二万五千銅貨だ。かなり安い。お買い得である。
「乗った。本当に今以上に可愛くなるんだろうな?」
 もちろん、今の姿でも十分可愛い。ただ、この女の自信、間違いなく本物だ。自分の実力を信じて疑ってない。
「ええ、もしお気に召さなかったら、代金は結構よ」
「わかった。お願いしよう」
「じゃあご主人、楽しみにしておいてくださいね!」
 そう言ってナナカは女性と共に、店の奥まで入っていった。








 そして二十分後。
「ふふっ、完成よ彼氏さん?」
「彼氏ではないです。で、どうです自信のほどは」
 俺はあえて挑発的な言葉を女性に投げかけた。
「完璧よ。というよりも、想像以上だわ。じゃあ、おいでなさい?」
「はーい」
 ナナカの声が俺の後ろから聞こえた。
「振り向いてみてくださいご主人!」
 俺はその声に従い、素直に顔を後ろに向けると――


「…………凄い」

 思わず、そんな言葉を口にしてしまった。
 ナナカは、白を基調としたゴスロリにを着ていた。首元には、桃色のチョーカー。優しい色合いのチョーカーは、チョーカーをチョーカーと思わせない。つまり、黒のチョーカーと違い、首を締め付けているという印象を与えないのだ。むしろ、あることこそ自然、といった感じだ。
 胸元には、薔薇型に整えられた真紅のリボン。白が基調のゴスロリゆえ、よく目立つ。唇のルージュも同じ色で引かれている。真っ赤な薔薇は、ワンポイントというよりも、それ自体がメインだ。白一色の中に一つある、赤。その赤は、余計に白を際立たせる。まるで、料理の際に入れる香辛料のようだ。入れすぎると辛くなってしまうが、適量なら、ぴりっとしたアクセントになる。それと同じだ。つまり、なんて言いたいのかというとだな、調和されている、といったところか?
 足元は、革のブラウンのレースアップシューズ。これぞゴスロリの定番ではあるがやはり王道。足元という、あまり目を向けない場所であっても、しっかり手を抜かない。この女性、できる……!
「どうですかご主人?」
「……思わず見惚れちまったぜ」
 俺は本当のことを言った。
「……やった! やりましたねお姉さん!」
「ええ、でもこれは当然の反応よ。むしろ、ここで襲われるぐらいじゃないと」
「俺はそんな野獣じゃないからな? ……で、俺の完敗だ。あんたの実力、しかと見せてもらったぜ」
「原石もよかったのよ。さ、お支払いはあそこのレジで」
「ああ」
 こうしてナナカの服を購入した。しかもそこまで大きな出費にならなかった。嬉しい。















「楽しかったですねー」
「ああ、楽しかった」
 店を出て、夕日の中を歩き出した俺達。この世界でも夕日は変わらないんだな。
「しっかしアレですね、ここまで楽しくなるとは思っていませんでしたよ」
「まあそーだなー。なぜか知らんけど盛り上がったなー」
 強制的にすることになったデートだったが、まあまあ、いや、かなり楽しかった。
「ごあ、主人、ご主人」
 急にナナカがもっと近う寄れ、みたいな感じに手招きしてきた。
「ご主人、耳、貸してください」
「ん? わかった」
 吐息がくすぐったいぐらいの距離に、ナナカは顔を近づけてきた。
「とっても楽しかったですよ、ネリア君、大好きです」
 ナナカに囁かれた後、チュッ、とほっぺたにキスされた。
「え? 今のって……」
「ときめきましたか? ネリアくん?」
 そう言ってナナカは、可憐に笑った。



 
 


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