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55.5サイフォスの命がけ修練
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「師匠、私を鍛え直して下さい」
復興が始まってから数日、私は師匠であるソア様にお願いをした。
「ん? なんじゃ? お主が自ら修行をお願いするなんて」
ソファーで足をぶらぶらとさせて本を読んでいた師匠は、驚いたような顔をした。
そう、実を言うと、どうしても師匠の修行は受けたくなかった。しかし、私はこの前の戦いで、自分の無力さを感じ取った。
「力が欲しいんです。もっと、もっと強大な力が」
全てを守り抜けるような力が。
「ふむ、お主も変わったの」
にやっ、とソア様が笑った。
「いいじゃろ、わしが本気でお主を鍛えてやろうぞ」
そう言って、師匠は立ち上がった。
「ただし、死ぬではないぞ」
「まずは、魔法使いの基礎中の基礎、魔力の底上げから行こうかの」
ここは村から離れた沼地。
「あの、魔力の底上げなら私の家でもできたのでは?」
私がそう問いかけると、師匠は悪い笑みを浮かべた。
「いや、村でやると迷惑がかかるのでな」
え? 迷惑がかかるような修行をするんですか!?
「なに、大量の水を錬成するんじゃ。せっかく復興し始めている村を水浸しにするのもアレじゃしな」
「はあ……」
師匠が他の人達の心配をするなんて珍しい。唯我独尊を体現しているようなお方なのに。
「何を考えとるかはわかるが、何も言わないでおいてやろう」
ちょっとこめかみのあたりがぴくぴくと震えた。
「一つ質問させてもらうぞ」
「はい、何でしょうか?」
「お主の最大魔力量、錬成限界、魔力補充速度を教えてくれ」
あーっと、今の最大魔力量はどれぐらいかな?
「んーっと、多分三万と、少しです。で、錬成限界は二十リットルです。そして、魔力補充速度は一秒あたり三ってところじゃないですか?」
正確なのはわからないけど、コレぐらいじゃないかな?
「ふむ、魔力補充速度はまあまあじゃな。しかし! 最大魔力量が少なすぎる! その量じゃ、『禁断魔法』は放てんぞ!」
き、禁断魔法って……。あ、そもそも禁断魔法とは、最初の魔導師である、アルカライナ様が編み出した魔法である。属性は虚無。あまりの魔力消費量のため、今では使う魔導師はほとんどいない。だけど、その魔力消費量に値する威力を持っている。
「サイフォス、お主の水魔法だけでは力不足じゃ。ここらで禁断魔法あたりを覚えておいて損はないぞ」
「損はないと言われましても……」
禁断魔法は、習得も難しいのに。私の魔力量じゃ、最初の詠唱だけで魔力が尽きてしまうだろう。
「おっと、話が逸れてしまったの。とりあえず、今ある全魔力で水を錬成してみよ」
「いまここでですか?」
「そうじゃ」
「わ、わかりました」
私が手を掲げる。
どぷどぷと、音をたてて水の塊が空に錬成されていく。
「んくっ、ハァ、ハァ、こ、コレが全魔力です……」
魔力を使い果たしてしまったので、水の塊を空に維持するのもつらい。
「あっ!」
一瞬、集中が途切れ、水の塊が雨のように落ちてくる。そして、師匠を直撃!
「す、すいません師匠!」
「……いや、かまわん」
し、師匠が優しい! しかも、物凄く透けちゃってます!
「じゃあその、魔力が空っぽな状態で毎分十リットル、水を錬成し続けるのじゃ。それを一時間」
「………え?」
今、十リットルって言ったわよね? 今の私には魔力が残されていないから、魔力補充速度から考えても、七リットルが限界。それなのに――
「ほれ、早く錬成せんか」
師匠が急かしてくる。
「はい……」
補充された魔力を即使用し、水を錬成していく。
「くっ、きっつい……」
カラカラになった魔力の器。そして、溜まることのない魔力。その二つが、私の体力を奪っていく。
「はあっ、はあっ……」
もう一分たっただろうか。一分がこんなに長く感じられるなんて……。
「きついじゃろ? 最悪の場合は魔力欠乏症による、死も考えられる。普通はありえない死に方じゃが、しかしお主は補充された魔力を全て水の錬成に費やしておる。考えるのじゃ。知恵を絞れ。お主がこの難題を突破するためには、知恵と覚悟が必要じゃ。ほれ、もう一分経つぞい」
ち、知恵なんて言われても、こっちは一杯一杯で考えている余裕なんて無いですっ……
「こ、こうなったら……」
奥の手を使うしか無いわ。
私は、体にある水分、つまり血を一旦魔力に還元し、その魔力を水に回すことにした。血は儀式などに使用されるぐらいに魔力濃度が高い。それを少量づつ使用していけばなんとか持ちこたえられるんじゃないかと考えた。
「ほう、命がけじゃな」
師匠が、関心したように、ピュウと口笛を吹いた。
「しかし、いつまで保つかな?」
「はっ、はっ、はっ、はあっ、がっ、はぁっ」
開始してから、もう四十分はたっただろうか。だいたい血は一リットルは消費してしまった。そろそろ危険区域だ。めまいが止まらなくなり、頭は痛い。足には力が入らなくなり、今はへたり込むような姿勢で錬成をし続けている。
「もう限界じゃな。諦めるか?」
師匠が挑発するように呟いた。
「ま、まだいけますっ……」
一昔前の私なら、諦めていた。しかし、私はネリアくんと出会ってから変わった。
「まだ、諦めたくないっ!」
私が絶叫すると、師匠は驚いたように目を見開いた。
「ここまでサイフォスが変わるとは……ほんっとにおもしろき男よの、ネリア・ハラベスト!」
師匠は嬉しそうに笑った。
まだ、まだ行ける。私の体にはまだ三十リットル以上の水分が残っている。血よりは魔力濃縮率は低いが、なんとか持ちこたえられる。これなら――
「もうよい。これ以上はミイラになってしまう」
師匠が後ろから抱きついてきた。師匠の小さな手が私の頬を撫でる。
「ほんとに変わったの。何がお主をそこまで駆り立てる?」
「そんなの、決まっているじゃないですか。ネリアくんのため…で…す……」
くたりとサイフォスの首が落ちた。
「…気絶したか」
ソアは自分の重さの倍以上はあるはずのサイフォスをひょいっと持ち上げ、笑った。
「ほんっとに罪深き男じゃの、ネリア!」
復興が始まってから数日、私は師匠であるソア様にお願いをした。
「ん? なんじゃ? お主が自ら修行をお願いするなんて」
ソファーで足をぶらぶらとさせて本を読んでいた師匠は、驚いたような顔をした。
そう、実を言うと、どうしても師匠の修行は受けたくなかった。しかし、私はこの前の戦いで、自分の無力さを感じ取った。
「力が欲しいんです。もっと、もっと強大な力が」
全てを守り抜けるような力が。
「ふむ、お主も変わったの」
にやっ、とソア様が笑った。
「いいじゃろ、わしが本気でお主を鍛えてやろうぞ」
そう言って、師匠は立ち上がった。
「ただし、死ぬではないぞ」
「まずは、魔法使いの基礎中の基礎、魔力の底上げから行こうかの」
ここは村から離れた沼地。
「あの、魔力の底上げなら私の家でもできたのでは?」
私がそう問いかけると、師匠は悪い笑みを浮かべた。
「いや、村でやると迷惑がかかるのでな」
え? 迷惑がかかるような修行をするんですか!?
「なに、大量の水を錬成するんじゃ。せっかく復興し始めている村を水浸しにするのもアレじゃしな」
「はあ……」
師匠が他の人達の心配をするなんて珍しい。唯我独尊を体現しているようなお方なのに。
「何を考えとるかはわかるが、何も言わないでおいてやろう」
ちょっとこめかみのあたりがぴくぴくと震えた。
「一つ質問させてもらうぞ」
「はい、何でしょうか?」
「お主の最大魔力量、錬成限界、魔力補充速度を教えてくれ」
あーっと、今の最大魔力量はどれぐらいかな?
「んーっと、多分三万と、少しです。で、錬成限界は二十リットルです。そして、魔力補充速度は一秒あたり三ってところじゃないですか?」
正確なのはわからないけど、コレぐらいじゃないかな?
「ふむ、魔力補充速度はまあまあじゃな。しかし! 最大魔力量が少なすぎる! その量じゃ、『禁断魔法』は放てんぞ!」
き、禁断魔法って……。あ、そもそも禁断魔法とは、最初の魔導師である、アルカライナ様が編み出した魔法である。属性は虚無。あまりの魔力消費量のため、今では使う魔導師はほとんどいない。だけど、その魔力消費量に値する威力を持っている。
「サイフォス、お主の水魔法だけでは力不足じゃ。ここらで禁断魔法あたりを覚えておいて損はないぞ」
「損はないと言われましても……」
禁断魔法は、習得も難しいのに。私の魔力量じゃ、最初の詠唱だけで魔力が尽きてしまうだろう。
「おっと、話が逸れてしまったの。とりあえず、今ある全魔力で水を錬成してみよ」
「いまここでですか?」
「そうじゃ」
「わ、わかりました」
私が手を掲げる。
どぷどぷと、音をたてて水の塊が空に錬成されていく。
「んくっ、ハァ、ハァ、こ、コレが全魔力です……」
魔力を使い果たしてしまったので、水の塊を空に維持するのもつらい。
「あっ!」
一瞬、集中が途切れ、水の塊が雨のように落ちてくる。そして、師匠を直撃!
「す、すいません師匠!」
「……いや、かまわん」
し、師匠が優しい! しかも、物凄く透けちゃってます!
「じゃあその、魔力が空っぽな状態で毎分十リットル、水を錬成し続けるのじゃ。それを一時間」
「………え?」
今、十リットルって言ったわよね? 今の私には魔力が残されていないから、魔力補充速度から考えても、七リットルが限界。それなのに――
「ほれ、早く錬成せんか」
師匠が急かしてくる。
「はい……」
補充された魔力を即使用し、水を錬成していく。
「くっ、きっつい……」
カラカラになった魔力の器。そして、溜まることのない魔力。その二つが、私の体力を奪っていく。
「はあっ、はあっ……」
もう一分たっただろうか。一分がこんなに長く感じられるなんて……。
「きついじゃろ? 最悪の場合は魔力欠乏症による、死も考えられる。普通はありえない死に方じゃが、しかしお主は補充された魔力を全て水の錬成に費やしておる。考えるのじゃ。知恵を絞れ。お主がこの難題を突破するためには、知恵と覚悟が必要じゃ。ほれ、もう一分経つぞい」
ち、知恵なんて言われても、こっちは一杯一杯で考えている余裕なんて無いですっ……
「こ、こうなったら……」
奥の手を使うしか無いわ。
私は、体にある水分、つまり血を一旦魔力に還元し、その魔力を水に回すことにした。血は儀式などに使用されるぐらいに魔力濃度が高い。それを少量づつ使用していけばなんとか持ちこたえられるんじゃないかと考えた。
「ほう、命がけじゃな」
師匠が、関心したように、ピュウと口笛を吹いた。
「しかし、いつまで保つかな?」
「はっ、はっ、はっ、はあっ、がっ、はぁっ」
開始してから、もう四十分はたっただろうか。だいたい血は一リットルは消費してしまった。そろそろ危険区域だ。めまいが止まらなくなり、頭は痛い。足には力が入らなくなり、今はへたり込むような姿勢で錬成をし続けている。
「もう限界じゃな。諦めるか?」
師匠が挑発するように呟いた。
「ま、まだいけますっ……」
一昔前の私なら、諦めていた。しかし、私はネリアくんと出会ってから変わった。
「まだ、諦めたくないっ!」
私が絶叫すると、師匠は驚いたように目を見開いた。
「ここまでサイフォスが変わるとは……ほんっとにおもしろき男よの、ネリア・ハラベスト!」
師匠は嬉しそうに笑った。
まだ、まだ行ける。私の体にはまだ三十リットル以上の水分が残っている。血よりは魔力濃縮率は低いが、なんとか持ちこたえられる。これなら――
「もうよい。これ以上はミイラになってしまう」
師匠が後ろから抱きついてきた。師匠の小さな手が私の頬を撫でる。
「ほんとに変わったの。何がお主をそこまで駆り立てる?」
「そんなの、決まっているじゃないですか。ネリアくんのため…で…す……」
くたりとサイフォスの首が落ちた。
「…気絶したか」
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