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204,仮にもアイドル歌手です!

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204,仮にもアイドル歌手です!

「……ううん……」 
 ぼんやりと、眼に光が入ってくる。
「おはようございます、ご主人様」
 リーヴァの顔が見える。
「ああ、ごめん。寝落ちしちまって」
 意外と疲れてたっぽい。
「いえいえ、お気になさらず。私はご主人様の寝顔を堪能させていただきましたので」
「そ、そうなの?」
「はい! それはもう。大満足です」
「あはは……」
 そ、そりゃあ良かったですね……。
「もしもーし、ご主人いらっしゃいますかー?」
 コンコン、とナナカが扉を叩く。
「ああはいはい、どうぞー」
 俺の返事と共に、ナナカが入ってきた。
「あれ? お休み中でしたか?」
「ああ、さっきまで寝てた」
「それは失礼しましたご主人」
「別に来る前に起きたから気にすんな。それでどうしたんだ?」
「あー、特に大した用事でもないし、急ぎではないんですがこれ……」
 スッと何かチケットのようなものを差し出す。
「そのぉ、私……実はアイドルしてるんです」
「うん、知ってる」
「存じ上げております」
 この前見たよ、うまかったな。
「え⁉ もうご存知だったんですか⁉」
「まあ、うん。てか、皆知ってるよ?」
 梨沙も知ってるし。あと多分だけど篤人さんも知ってそう。
「ひぇー、まさか情弱なご主人まで知っているとは……恐るべしプッシュ力……」
「情弱とはなんだ情弱とは」
 事実ではあるが。
「えへへ、冗談です。……それで本題なんですけど、近々リリースイベントがありまして、その……ご主人を招待したいなー、と」
「まじか! いいの?」
「はい! あ、もちろんリーヴァさんの分も用意してありますからね~、はい」
「わあ、ありがとうございます! あのキラキラしたナナカ様を直で見ることができるのですね?」
「そうだな、あのときはキラキラしてたな」
「ん? その言い方だといつもはキラキラしてないみたいですよね」
「うん、そう」
「むきー! 仮にもアイドル歌手になんてことを! いつもキラキラしてますー!」
 ……そういうことにしておいてあげよう、うん。
「まあいいです、とにかく話を戻しますね。詳しいお話はまた後日しますが、なにせ駆け出しの新人ですので一人でも多く来ていただきたくて」
 なるほど、それなら篤人さんとか篤人さんとか篤人さんとか呼ぶか。泣いて喜びそう。
「それなら知り合い数名にも声をかけておくよ。自衛隊の人とかにも」
「本当ですか⁉ ありがとうございます! では、また後でー!」
 嬉しそうに飛び跳ねながら、部屋を出ていった。
「いやしかし、アイドルねぇ……」
 よくよく考えたら、アイドルってナナカにめちゃくちゃ向いている気がする。かわいいし、愛嬌も会って明るい。確実に人気が出るよ。
「さて、そういえばリーヴァ、傷の具合は?」
 元気そうだったのですっかり忘れていたが、リーヴァも大怪我を追った怪我人だった。
「もう大丈夫です。シーナ様にも確認してもらいましたが、完治したとのことで」
「それは良かった。じゃあ、リハビリも兼ねて……組手、お願いできない?」 
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