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118,アキバ巡り

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    ――ネリアが日本に来て間もないころ――


「うはー! これが秋葉原! オタクの聖地! あまたのアニメに登場した伝説の地!」
 そう、私は今、秋葉原に来ています。ご主人は自衛隊で訓練を受けている最中なので残念ながらソロです、一人です。
「さあ、まずはグッズ物色! そしてメイドカフェ! 最後にカラオケ!」
 ソア様から頂いた選別を今日で使い切るぐらいの勢いで遊ぶぞー!




「あっ! これはあのアニメのフィギュア!? 凄い! 売ってるんだ! あっ! あっちにはマクロスΔのジークフリードの超合金!」
 お宝の山ですね! わっほい!
「お、そのフィギュア買うんなら、おまけでそこのねんどいろ一体をサービスで千円で売ってあげるよ」
「買います!」
 結局爆買してしまった。さ、次はメイド喫茶!




「おかえりなさいませご主人様!」
「うん、ただいまー!」
 ここに来るのは初めてのはずなのに思わずただいまって言っちゃった。それぐらい良い雰囲気の店だよここ。
「では、こちらへどうぞっ」
 ツインテールのお姉さんが私を案内してくれる。うはー、めっちゃ私好み! しかもツインテール! 服もかわいいし、私も働いちゃおうかな?
「ご注文が決まったら私、『あやか』を呼んでね」
「はーい!」
 あやかちゃんって言うのか! 可愛い! 
 まあそれはさておき、私はメニューを開く。
「うわー、すっごい一杯ある!」
 定番のオムライスから、スパゲッティまで。マニアックなところだと、ソーキそばなんてものもある。ソーキそばって何?
「うーん、とりあえず注文! すいませーん! あやかちゃんおねがいしまーす!」
「はいはーい! ご注文は?」
「この萌えコーヒーと、萌え萌えぐらたんを一つ」
「かしこまー! オプションの文字はどうしますか?」
「アキバLOVEって描いて下さい!」
「かしこまりましたっ」
 しゅたっと敬礼して去っていくあやかちゃん。
「ふふふ可愛い……」
 あ、百合娘ではないですよ? 愛でるのは好きですけど。
「お先に萌えコーヒーでっす!」
 あやかちゃんが慣れた手つきで黒い液体を持ってきてくれた。
「おいしくなーれ、萌え萌えびーむ!」
 あやかちゃんが笑顔でミルクをどっぱどっぱ淹れてくれる。
「追加で砂糖も行きまーす!」
 そして元気に砂糖を二杯、コーヒーカップに入れた。
「どーぞ、ご主人様!」
「ありがとう!」
 私はコーヒーを近くに手繰り寄せ、香りを楽しむ。
「んー、やっぱりいい香り。なんでインバワルズには無いんだろ?」
 あ、インバワルズってのはご主人の世界のことね!
 私はコーヒーカップを持ち上げ、優雅にすする。
「ちょっと甘いけど、おいしー!」
 なにより久しぶりのコーヒーということもあり、あっという間に飲み干してしまった。
「おまたせしました~、萌え萌えぐらたんでーす!」
 ちょうどいタイミングであやかちゃんが萌え萌えぐらたんを持ってきてくれた。
「じゃあ、マヨネーズで描いていきまーす」
 出る口が細くなっているマヨネーズの入ったチューブを取り出し、器用にグラタンの上に文字を描いていく。
「はい、じゃあ最後に一緒に完成させましょう! 私が萌え萌えって言ったら、ご主人様は『きゅんきゅん!』ってお願いします! 行きますよ? せーの萌え萌え」
「きゅんきゅん!」
「ありがとうございます! では、お召し上がりください!」
「ありがとー!」
 私は早速スプーンを持つ。上のチーズの層をスプーンでつついて崩す。すると中から白い湯気が大量に出て来る。
「じゃあ、いただきまーす!」
 ホワイトソースに包まれた、やや大振りな鶏肉をチーズと共に口に運ぶ。
「はふはふっ! おいしっ!」
 ジューシでかつ柔らかい鶏肉がほろほろと崩れる。ホワイトソースとの相性も抜群だ。さらに、少し焦げ目のついたチーズがアクセントとなり、絶妙な一体感を醸し出している。
「ご主人様と呼ばれる生活も悪くない……」
 いつもご主人ご主人呼んでいるけれど、たまにはこういうのもありだよね!
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