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148,ジェニー

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「は、初めまして……え、えーっと、ジェニー……さん?」
「ノンノン! ジェニーって呼んで! ね?」
「は、はい……」
 激しい勢いに押され、首を縦に振る私。
「よし、じゃあ、早速トレーニングよ!」
 ジェニーは物凄い勢いでガラス戸を開け、ジムに入っていった。
「……頑張ってください」
「はい……」
 真澄さんがものすごーく微妙な笑顔でエールを送ってくれた。




「はぁ、はぁ……」
「んー、もう少しペースを上げるわね」
「えぇ!? まだっ、上げるんですか!?」
 私はストレッチが終わるとすぐに、ランニングマシーンに乗らされ、こうして今、走っています。
「きっ、つぃ!」
「いいわねー、じゃ、後十分!」
「十分!? む、無理ですぅぅぅぅ!」



「お次は柔軟よー」
「はい!」
「次は腹筋よ!」
「は、はい!」
「次は背筋!」
「は、はいぃぃ……」
「よし、これでいいわぁ」
「つ、疲れた……」



 私はぐったりと地面に座り込んだ。なにせ、二時間も連続で運動していたのだから……。
「んー、七香ちゃんは脚の筋力が弱いわねー。他の部分はあまり問題はないケド」
 ぐったりしている私の横で、冷静にデータを分析するジェニー。
 あー、脚ですかー。
 若干思い当たる節はあります。それは多分、普段空を飛んで移動しているので、あんまり地面に足をつけて歩いていないからでしょう。
「ま、大丈夫でしょう! あとは体幹を鍛えましょう!」
「体幹……ですか?」
「そうよぉ。いい? 体幹というのはね、全てのスポーツ、いいえ、全ての動作の基礎なのよ!」
 ジェニーの大胸筋がピクピクと動く。
 なんかジェニーが言うと、真実味がありますね。
「すべての動作の基礎って、どういうことですか?」
「そのままの意味よん。呼吸、歩行などの生命活動にも関わってくることよ。そうねぇ、例えば横隔膜。横隔膜は呼吸をするのにも必要でなのよん。でもね、みんな知らないからないがしろにされがちなの。あと焼肉屋さんのハラミは牛の横隔膜のことよ」
 さ、さすがスポーツトレーナ。完璧な説明! 
「よくわかりました。それで、いつからトレーニングを開始するんですか?」
「今からよ」
「え……?」
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